JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

まっとうな日々

2006年07月13日 | j-l

いやはや、なんとも蒸し暑い一日でした。触れるものすべてが何だかベトベトするようで、できることなら冷房の効いた喫茶店か何処かで、冷たいものでも飲みながら本でも読んでいられたら、どんなに幸せだろうと思ってしまう。

こんな日は、「デスクワークのヤツがうらやましい」などと、他人の芝生が青く見えるものです。デスクワークにはそれなりの辛さがあるだろうに、わかっていてもついつい口に出てしまう。車の中からおもてを見れば、工事に勤しむ人たちだっています。「あれこそ、今日みたいな日は大変だろう」と思うくせに、人間とはかくも自分本位な生き物なのです。(それは、あんただけだよ)

「喫茶店で読書」の願望には、暑さからの逃避もさることながら、昨日から読み始めた『日本ジャズ者(もの)伝説』という平岡正明氏の本をはやく読みたいという願望も含まれておりました。
平岡氏の著書は、『山口百恵は、菩薩である』『ジャズ宣言』『チャーリー・パーカーの芸術』『昭和ジャズ喫茶物語』に続き、私が読むのはこれで5作品目ということになります。落語に関する著書も多いので、そちらもぜひとも読んでみたいとは思っているのですけど。

『日本ジャズ者(もの)伝説』は、『昭和ジャズ喫茶物語』を受けての一冊、ということになるのでしょうか、ともかく昨晩はロックグラスを片手に1時過ぎまで読みふけってしまいました。
内容をとやかく言うと、これから読まれる方にご迷惑でしょうから申しませんが、なかなかズバッと言いたい放題なくせに、独特のユーモアと郷愁も感じさせる、平岡氏の文章は、じつに私好みであります。
あとは「ニューオリンズ租界ジャズスポット」「エピローグ」の項を残すのみ、今日中には読み終われるでしょうか?
「あっと!いかん!酒が昨日で無くなったんだ!!!」
ひょっとすると、一杯引っかけに出かけてしまうかもしれません。(笑)

そうだそうだ、先日記事にしようと思っていた、茨木のり子女史の詩を紹介します。
「趣味部屋エアコン」に心奪われてしまった私への、戒めとも思える一文です。

『時代おくれ』

車がない
ワープロがない
ビデオデッキがない
ファックスがない
パソコン インターネット 見たこともない
けれど格別支障もない

  そんなに情報集めてどうするの
  そんなに急いで何するの
  頭はからっぽのまま

すぐに古びるがらくたは
我が山門に入(い)るを許さず
  (山門だって 木戸しかないのに)

はたから見れば嘲笑の時代おくれ
けれど進んで選びとった時代おくれ
         もっともっと遅れたい

まだまだ詩は続きます。

何が起ころうと生き残れるのはあなたたち
まっとうとも思わずに
まっとうに生きているひとびとよ


と締めくくられたこの詩、全部を読みたい方は、詩集「倚りかからず」に載っておりますので、ご覧あれ。

プログに、自分で放火した現場の写真を載せる女性、それほどまでに注目を得たかったのでしょうか? 便利に事欠いて、自殺者を募ったり、殺しを依頼したり、便利さは、人のためになるけれど、便利は常に裏腹な一面をみせるものです。
「有用の用を知れども、無用の用を知ること莫(な)し。」
人は、役に立つものの必要性は知っているけど、役に立たないものが、生をまっとうするのに大きな役割を果たすことを知らない、という意味です。
便利に心奪われ、便利とは裏腹な、考慮を忘れる、私自身反省すべきことでありましょう。
まっとうとも思わず、まっとうに生きる、かくありたいものです。

あらら?珍しくまっとうな話でした?
えっ?せいぜいおまえはまっとうじゃなくて、なっとうだって?糸引くほどしつこい?ごもっとも。

さて、今日の一枚ですが、ちょっと前にブログ仲間67camperさんも紹介されていた。ウイントン・ケリー晩年のまっとうなジャズです。
それがね、67camperさんが紹介された頃に、私も今日の一枚で紹介しようとしてたんですよ。「くそう!先を超された」みたいな(笑)
じつに、気持ちの良い、ケリー・ファンならずとも楽しく聴ける一枚だと思います。長からず短からずの演奏時間、おなじみの曲もいっぱい、リラックスした内容は、いかにもケリーらしい。こうやってみると、先日紹介したDVD「セロニアス・モンクの肖像」でも、渋いコメントをしていましたが、オリン・キープニュースという人は、わかったプロデューサーですよね。じつに上手いことケリーの世界を作り上げています。
とても聴きやすく、楽しい一枚としてお勧めします。

FULL VIEW / WYNTON KELLY
1967年録音
WYNTON KELLY(p) RON McCLURE(b) JIMMY COBB(ds)
1.I WANT A LITTLE GIRL
2.I THOUGHT
3.WHAT A DIFF'RENCE A DAY MADE
4.AUTUMN LEAVES
5.DONT'CHA HEAR ME CALLIN' TO YA
6.ON A CLEAR DAY (YOU CAN SEE FOREVER)
7.SCUFFLIN'
8.BORN TO BE BLUE
9.WALK ON BY