JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

嫌いもまた好き

2006年07月04日 | a-c

夏・・・・季節の四人兄弟のなかで一番の浮気者
夏・・・・詩には麦藁帽子がよく似合う
夏・・・・秋のために思い出をつくる
夏・・・・海の欲情を数えよう
夏・・・・ジャズっ子たちはクジラにのってやって来る
夏・・・・殺人者たちの邂逅(かいこう)
夏・・・・雲は吃りの旅行者
夏・・・・ベットの中の兎さがし
夏・・・・毛深い親指がマダムを追いかけます
     機関銃もなしに
夏・・・・古典の死
                       -寺山修司 思いださないで より-

ここで寺山修司氏を取り上げるのは、3度目でしょうか。
人間、「嫌い嫌いも好きのうち、嫌いは好きの別表現」
私は寺山修司という人が、嫌いであった時期がありました。なんとも難解なその表現と、エロチズムに語られる赤裸々な人間像。インテリぶった物言い。

彼が亡くなった翌年だったと思いますが、「渋谷じゃんじゃん」で全国の小劇団が順次公演を行う、追悼演劇が行われたことがありました。
私も、友人の劇団が公演することもあり、観劇に出かけると、
どうしたことでしょう?おおいに寺山ワールドに浸ってしまった自分がそこにいたのです。
この年、公開された映画「さらば箱船」も、ノーベル文学賞作品、ガルシア・マルケスの「百年の孤独」を、許可なしに原作として使ってしまうあたりは、へんに痛快で、内容も沖縄を舞台としたなんとも寺山らしい作品でありまして、知らぬ間に彼の術中にはまっていくような・・・・・

それからでしょうか、本屋やいたるところで彼の名を目にすると、ついつい触手が伸びてしまいます。
昨日も、昼休みに本屋を覗いていると、「寺山修司名言集 身捨つるほどの祖国はありや」なる本を発見、ついつい買ってきてしまいました。(笑)
「この世でいちばん遠い場所は 自分自身の心である」、『愛さないの愛せないの』の一節から始まるこの名言集、寺山ワールドを解き明かす参考書としては、とても読みやすい一冊ではないかと思いました。

嫌い嫌いと言いつつ、好きになっていく、人間というものは不思議なものです。(あれ?これって、ひょっとして私だけ?????)
ひょっとして、これから私は、チック・コリアも好きになって行くのやもしれない・・!

ということで、今日の一枚は、クロスオーバーの口火、当時話題を独占したコリアとRTFの第一作、言わずとしれた「RETURN TO FOREVER」であります。
じつはね、未だにこのアルバムの良さが理解できないんですよ。「『永遠への回帰』って、いったい何のこっちゃ?」みたいな・・・・・
変化たらんがジャズですから、70年代ジャズのある一方向を示す作品であることは認めるんですよ。でもねぇ、特に発売当初は知りもしないくせに「こんなんジャズじゃねぇ!!」てなこと言ってた記憶もあります。
ある方は「ジャズが地下室から飛び出した瞬間だ!」と称されました。
「地下室であるが故、ジャズ」と思っていた私には、ちと説得力のない評でありましたが、
いずれにしても、この後、クロスオーバー全盛の時代がやってきます。私が新譜をあまり耳にしなくなっていったのは、このあたりからだったでしょう。

いけませんね、偏見は間違いの元だ、最近、「新譜はやはり聴くべきだ」と考え直しております。「嫌い嫌いも好きのうち」、いつか「RETURN TO FOREVER」も好きになる日が来るかもしれません。

CHICK COREA ・ RETURN TO FOREVER
1972年2月2,3日録音
CHICK COREA(el-p) JOE FARRELL(fl,ss) FLORA PURIM(vo,perc) STAN CLARKE(el-b,b) AIRTO MOREIRA(ds,perc)
1.RETURN TO FOREVER
2.CRYSTAL SILENCE
3.WHAT GAME SHALL WE PLAY TODAY
4.SOMETIME AGO-LA FIESTA