今田朋美・久藤エリコ・鼓代弥生・齋藤周・楓月まなみの5氏によるグループ展。
5人の作品がかたまってそれぞれ展示されているのではなくて、混在しながら空間を占めているのが最大の特徴です。
とりわけ、大小・不定形の切り絵をつるして展示する久藤さんの作品が、他のメンバーに影をゆらゆらと落とし、楓月さんの長大な染色がギャラリーの天井附近を横断しています。
楓月さんは差し渡し8メートルや6メートルといった長大な布にアクリル絵の具の飛沫をとばしています。
作家のジャンルも多彩。
今田さんは書家です。
書家が他ジャンルの作家と一緒に展覧会を開くことは非常に珍しく、最近では、ギャラリーエッセでの須田廣充+西辻恵三展があったくらいしか思い当たりません。
こういう他流試合は歓迎したいところです。
今田さんが主に取り組むのは、近代詩文あるいは詩文書と呼ばれる分野で、漢字仮名交じりの文章や詩を書きます。読むことが難しい「かな」や、読めても意味がわからない「漢字」と異なり、現代を生きる日本人のための書といえるかもしれません。渡島管内松前町出身の金子鷗亭が提唱しました。
扁額はべつにして書作品の多くは縦書きですが、近代詩文にはときどき横書きがあります。
一見して分かるとおり、誰もが知る唱歌「もみじ」の歌詞が題材です。
山のかたちに文字を配しているのがミソです。
こんなやさしい歌詞を、力をみなぎらせて書いているのが、そこはかとないユーモアを感じさせます。
また、右手の壁には「手」という漢字の象形文字を紙に書いて、いくつも貼っています。
彼女の書に限った話ではありませんが、古形、とりわけ象形文字は、漢字のなりたちが絵であることを、あらためて認識させるものがあります。
齋藤周さんは、不定形(五角形や台形など)の小さな支持体に色の帯を引いたもの約10点を、壁面に点在させています。
5人の中では比較的「タブロー然」として、壁面に整然と矩形の作品を並べているのが鼓代さんです。
(これらの作品にももちろん、久藤さんの切り絵の影が揺らいでいます。画像で、下の方に小さく、黒いレンコンの段面のようにも見えるのも、久藤さんの作品です)
とはいえ、近づいてよく見ると、鼓代さんの作品は支持体がベニヤ板で、着彩の後で彫刻刀で表面を彫り込むといった所作がなされています。
「絵画か彫刻か」という問題設定も可能かもしれませんが、むしろ、身体性を作品に定着させる試みのように、筆者には感じられました。
そのほうが、舞台や音楽といった分野でも活動する鼓代さんにふさわしいと思われるのです。
カフェ側(左手の翼)にも小品などが展示してあります。
中央のテーブルは販売コーナーですが、楓月さんが
「全部わたしのになっちゃいました」
と苦笑していました。
レジン樹脂によるアクセサリーなどのほか、今回は、染色にも挑戦。
藍染めを大胆に施したストールやTシャツなども並んでいます。
また、壁には、先日のグループ展でも出品していましたが、もともと取り組んでいた前衛書も額におさめて展示していました。
2023年11月25日(土)~12月3日(日)午前10時~午後6時(最終日~4時)
茶廊法邑(札幌市東区本町1の1)
※道順へのリンクは、このページのいちばん下にあります
過去の関連記事へのリンク
■今田朋美・裕樹 二人展「まちかどで」 (2023年3月10~22日、札幌)
■第44回高書研展 (2019、画像なし)
□久藤さんのサイト http://www7.plala.or.jp/LivingROOTS/index/
■第6回 群青 -2週間10部屋の展覧会- 【前期】(2019)
■Nonlocality (2018)
■久藤エリコ切り絵作品展「ゆらぎ」 (2018年4月)
■第5回丸島均(栄通記)企画 群青 後期(2018年2月)
■第4回丸島均(栄通記)企画 群青―ぐんせい― (2017年1月)
■TAPIO LAST 終章 (2016年4月)
■All Japan Under 40 Collections (2009)
■500m美術館 (2008)
■田園都市のコンテンポラリーアート 雪と風の器 (2008)
□Yayoi Kodai official web site https://yayoi-kodai.themedia.jp/
□ https://shusaito.com/
■齋藤周個展「契機のあとに」 (2022年12月3~11日、札幌)
■齋藤周個展「継ぎ」 (2018)
■齋藤周個展「片鱗」 (2017)
■JRタワー・アートプラネッツ2012 楽しい現代美術入門 アルタイルの庭 (2012、画像なし)
■齋藤周「ひろいよみ」 ハルカヤマ藝術要塞 (2011)
【告知】これから下りていこう/齋藤周(2011年、画像なし)
【告知】Pistol 3 (2011年2月26日~3月13日)
■PLUS ONE THIS PLACE(2010年9月)
■第7回北海道高等学校文化連盟石狩支部顧問展 (2010年1月)
■水脈の肖像09-日本と韓国、二つの今日 (2009年12月)
■いすのゆめ (2009年11月)
■PLUS 1 Groove(2009年8月)
■PLUS 1 +柴橋伴夫企画 千代明 秋山一郎 齋藤周 (2009年8月)
■第6回北海道高等学校文化連盟石狩支部美術部顧問展 (2009年1月)=画像なし
■ART BOX 札幌芸術の森・野外ステージ(2008年)
■はしご展(2008年)
■齋藤周展 おおらかなリズム(2008年)
■FROM PIECE TO PIECE ・齋藤周「あたらしくまえにすすむ」(2008年)
■久野志乃と齋藤周展 かるいからだ(08年1月)
■PLUS One Groove(07年8月)
■齋藤 周 個展「いろんなことが想いにたりない」
■齋藤周「3月の次から」(07年3月)
■PISTOL 2-SHU SAITO & HIROSHI TAKEDA a.k.a. Azkenpanphan Exhibition=武田・齋藤2人展
■06年6月の個展
■齋藤周「かかわり」(06年2月)
■絵画の場合2005アーティストトーク
■札幌の美術2004(画像なし)
■個展「横移動の座標軸」(03年)
■個展「細かい情感のイメージ」(03年)
■個展「NEXT STEP」(02年、画像なし)
■個展「多面に存在していくこと」(02年、画像なし)
■01年の個展(画像なし)
まるまるもりもり
■楓月まなみ展「ときめきをときはなして」 (2022年11月2~7日、札幌)
■第64回新道展 (2019)
■第3回 バックボックス展 (2019)
■AXIS NORTH (2019)
茶廊法邑へのアクセス
・地下鉄東豊線「環状通東駅」2番出入り口から約800メートル、徒歩10分
・市立病院前、札幌駅北口などから中央バス「東63」(東営業所行き)、バスセンターから中央バス「東3」(同)に乗り「北8条東17丁目」で降車、約780メートル、徒歩10分
・中央バス「東3」、「56」(札幌駅前―豊畑)に乗り「本町1条4丁目」降車、約670メートル、徒歩9分
・地下鉄南北線「北18条駅」で、中央バス「東62 本町線 東営業所行き」に乗り継ぎ、「本町2条1丁目」降車、約470メートル、徒歩6分
※駐車スペースが店の前と後ろ側にあります
5人の作品がかたまってそれぞれ展示されているのではなくて、混在しながら空間を占めているのが最大の特徴です。
とりわけ、大小・不定形の切り絵をつるして展示する久藤さんの作品が、他のメンバーに影をゆらゆらと落とし、楓月さんの長大な染色がギャラリーの天井附近を横断しています。
楓月さんは差し渡し8メートルや6メートルといった長大な布にアクリル絵の具の飛沫をとばしています。
作家のジャンルも多彩。
今田さんは書家です。
書家が他ジャンルの作家と一緒に展覧会を開くことは非常に珍しく、最近では、ギャラリーエッセでの須田廣充+西辻恵三展があったくらいしか思い当たりません。
こういう他流試合は歓迎したいところです。
今田さんが主に取り組むのは、近代詩文あるいは詩文書と呼ばれる分野で、漢字仮名交じりの文章や詩を書きます。読むことが難しい「かな」や、読めても意味がわからない「漢字」と異なり、現代を生きる日本人のための書といえるかもしれません。渡島管内松前町出身の金子鷗亭が提唱しました。
扁額はべつにして書作品の多くは縦書きですが、近代詩文にはときどき横書きがあります。
一見して分かるとおり、誰もが知る唱歌「もみじ」の歌詞が題材です。
山のかたちに文字を配しているのがミソです。
こんなやさしい歌詞を、力をみなぎらせて書いているのが、そこはかとないユーモアを感じさせます。
また、右手の壁には「手」という漢字の象形文字を紙に書いて、いくつも貼っています。
彼女の書に限った話ではありませんが、古形、とりわけ象形文字は、漢字のなりたちが絵であることを、あらためて認識させるものがあります。
齋藤周さんは、不定形(五角形や台形など)の小さな支持体に色の帯を引いたもの約10点を、壁面に点在させています。
5人の中では比較的「タブロー然」として、壁面に整然と矩形の作品を並べているのが鼓代さんです。
(これらの作品にももちろん、久藤さんの切り絵の影が揺らいでいます。画像で、下の方に小さく、黒いレンコンの段面のようにも見えるのも、久藤さんの作品です)
とはいえ、近づいてよく見ると、鼓代さんの作品は支持体がベニヤ板で、着彩の後で彫刻刀で表面を彫り込むといった所作がなされています。
「絵画か彫刻か」という問題設定も可能かもしれませんが、むしろ、身体性を作品に定着させる試みのように、筆者には感じられました。
そのほうが、舞台や音楽といった分野でも活動する鼓代さんにふさわしいと思われるのです。
カフェ側(左手の翼)にも小品などが展示してあります。
中央のテーブルは販売コーナーですが、楓月さんが
「全部わたしのになっちゃいました」
と苦笑していました。
レジン樹脂によるアクセサリーなどのほか、今回は、染色にも挑戦。
藍染めを大胆に施したストールやTシャツなども並んでいます。
また、壁には、先日のグループ展でも出品していましたが、もともと取り組んでいた前衛書も額におさめて展示していました。
2023年11月25日(土)~12月3日(日)午前10時~午後6時(最終日~4時)
茶廊法邑(札幌市東区本町1の1)
※道順へのリンクは、このページのいちばん下にあります
過去の関連記事へのリンク
■今田朋美・裕樹 二人展「まちかどで」 (2023年3月10~22日、札幌)
■第44回高書研展 (2019、画像なし)
□久藤さんのサイト http://www7.plala.or.jp/LivingROOTS/index/
■第6回 群青 -2週間10部屋の展覧会- 【前期】(2019)
■Nonlocality (2018)
■久藤エリコ切り絵作品展「ゆらぎ」 (2018年4月)
■第5回丸島均(栄通記)企画 群青 後期(2018年2月)
■第4回丸島均(栄通記)企画 群青―ぐんせい― (2017年1月)
■TAPIO LAST 終章 (2016年4月)
■All Japan Under 40 Collections (2009)
■500m美術館 (2008)
■田園都市のコンテンポラリーアート 雪と風の器 (2008)
□Yayoi Kodai official web site https://yayoi-kodai.themedia.jp/
□ https://shusaito.com/
■齋藤周個展「契機のあとに」 (2022年12月3~11日、札幌)
■齋藤周個展「継ぎ」 (2018)
■齋藤周個展「片鱗」 (2017)
■JRタワー・アートプラネッツ2012 楽しい現代美術入門 アルタイルの庭 (2012、画像なし)
■齋藤周「ひろいよみ」 ハルカヤマ藝術要塞 (2011)
【告知】これから下りていこう/齋藤周(2011年、画像なし)
【告知】Pistol 3 (2011年2月26日~3月13日)
■PLUS ONE THIS PLACE(2010年9月)
■第7回北海道高等学校文化連盟石狩支部顧問展 (2010年1月)
■水脈の肖像09-日本と韓国、二つの今日 (2009年12月)
■いすのゆめ (2009年11月)
■PLUS 1 Groove(2009年8月)
■PLUS 1 +柴橋伴夫企画 千代明 秋山一郎 齋藤周 (2009年8月)
■第6回北海道高等学校文化連盟石狩支部美術部顧問展 (2009年1月)=画像なし
■ART BOX 札幌芸術の森・野外ステージ(2008年)
■はしご展(2008年)
■齋藤周展 おおらかなリズム(2008年)
■FROM PIECE TO PIECE ・齋藤周「あたらしくまえにすすむ」(2008年)
■久野志乃と齋藤周展 かるいからだ(08年1月)
■PLUS One Groove(07年8月)
■齋藤 周 個展「いろんなことが想いにたりない」
■齋藤周「3月の次から」(07年3月)
■PISTOL 2-SHU SAITO & HIROSHI TAKEDA a.k.a. Azkenpanphan Exhibition=武田・齋藤2人展
■06年6月の個展
■齋藤周「かかわり」(06年2月)
■絵画の場合2005アーティストトーク
■札幌の美術2004(画像なし)
■個展「横移動の座標軸」(03年)
■個展「細かい情感のイメージ」(03年)
■個展「NEXT STEP」(02年、画像なし)
■個展「多面に存在していくこと」(02年、画像なし)
■01年の個展(画像なし)
まるまるもりもり
■楓月まなみ展「ときめきをときはなして」 (2022年11月2~7日、札幌)
■第64回新道展 (2019)
■第3回 バックボックス展 (2019)
■AXIS NORTH (2019)
茶廊法邑へのアクセス
・地下鉄東豊線「環状通東駅」2番出入り口から約800メートル、徒歩10分
・市立病院前、札幌駅北口などから中央バス「東63」(東営業所行き)、バスセンターから中央バス「東3」(同)に乗り「北8条東17丁目」で降車、約780メートル、徒歩10分
・中央バス「東3」、「56」(札幌駅前―豊畑)に乗り「本町1条4丁目」降車、約670メートル、徒歩9分
・地下鉄南北線「北18条駅」で、中央バス「東62 本町線 東営業所行き」に乗り継ぎ、「本町2条1丁目」降車、約470メートル、徒歩6分
※駐車スペースが店の前と後ろ側にあります