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追記あり■Nonlocality (2018年10月3日~14日、美唄)

2018年10月12日 22時08分26秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 伊藤恵里(釧路)、唐神知江(胆振管内洞爺湖町生まれ、東京在住)、久藤エリコ(札幌)、高田K子(帯広)の4氏が美唄でグループ展を開いている。


 所在地がばらばらということもあって、あえて、単純に「ローカルであること」を否定したようなタイトルを掲げているが、そして、時として安直に北方ロマンティシズムが批評の用語として導入される土地柄にあってそのこと自体は貴重な姿勢だとは筆者は考えるのだが、実際の展示を見てみると、かなりローカルかつパーソナルな色合いを感じてしまう。だからといって、良くない展覧会だと決めつけるつもりもないが。

 伊藤さんは絵画である。
 5枚組みの「drowing og the day」、「飲みかけのフルーツ牛乳」など、日常の記録のような趣でタッチもラフであり、大文字の芸術や社会に断固として抗しようという意図すら感じられる。
 「樹のある風景」は、アノニマス(無名)な風景であり、これも観光地や崇高な風景の対極にあろうとする画家の意思を感じてしまう。

 久藤さんは切り絵作家。
 この2年ほどは、壁から離して、天井からつるして作品を設置することで、影をも作品の一部とするような方法論で、新機軸を打ち出している。
 今回の「ゆらぐものたち」は、これまで花びらや炎のような形を展開することが多かった久藤さんとしては珍しく、丸みを帯びた曲線が主体。具象性が捨象されているのが興味深い。


 高田さんは「長谷政幸さんへの手紙 2002ー2018」と題して、文字が消えかかった黒板を写した写真や、高田さん得意の、鑑賞者をユーチューブの画像に誘導するQRコードなど、立体的かつポリフォニックな方法を駆使した作品世界を展開している。
 ただし、そこに書かれた、薄れた文字のテキストも、タイトルも、帯広や十勝地方で現代アートにかかわってきた人以外には理解できないであろう。もちろん、個人的な、あるいは地域を限ったつぶやきや思いにも、意味はあるだろうが。

 唐神さんは「絵画/彫刻」と題したあんどん型の、四方に肖像を描いた床置きの作品5点と、「彫刻/絵画」という壁掛けの、凹凸のある抽象画5点組を2セット、出品している。
 美術史的には「絵画か彫刻か」という問題設定自体がすでに失効しているのではないかと考えられるが(少なくとも「美術」という制度のなかで特権的なジャンルとして存立する基盤はとうの昔に失われていよう)、モダニスム的志向と団体公募展の存在感が根強く残る北海道で生きてきた作者にとっては、自分の問題として乗り越える必要があったのかもしれない。

 どんな表現も出発点には「個」があり「地域(国)」があるとするならば、たとえ、狭さに安住しないマニフェスト的な意思をうたったタイトルを冠した展覧会であっても、個や故郷が否が応でもにじみ出てくることに対して、否定的である必要はないだろう。
 今回、会場に誰もいなかったので、筆者は感じたままを勝手に書いた。あるいは大きな勘違いをしているかもしれない。ご容赦のほどを。
 

2018年10月3日(水)~14日(日)午前9時~午後5時、火曜休み
安田侃彫刻美術館アルテピアッツァ美唄(美唄市落合町栄町)

 13、14日ワークショップの予定。


関連記事へのリンク
北のユートピア (2017)=4人とも出品

HOKKAIDO EXHIBITION 2016 Loop -spin off-
伊藤恵里展 いのちの生まれる所 -in the marshy land- (2015)


□唐神さんのツイッターアカウント
雪みやげ art exhibition 唐神知江(絵画)唐神里佳(ガラス)による作品展覧会 (2017年1~2月)
唐神知江 おいしい画展 (2016)


□久藤さんのサイト http://www7.plala.or.jp/LivingROOTS/index/
久藤エリコ切り絵作品展「ゆらぎ」 (2018年4月)
第5回丸島均(栄通記)企画 群青 後期(2018年2月)
第4回丸島均(栄通記)企画 群青―ぐんせい― (2017年1月)
TAPIO LAST 終章 (2016年4月)
All Japan Under 40 Collections (2009)
500m美術館 (2008)
田園都市のコンテンポラリーアート 雪と風の器 (2008)


□高田K子さんのツイッター @jp_takadakeiko
http://takadakeiko.tumblr.com/
田園都市のコンテンポラリーアート 雪と風の器 (2008)





・JR美唄駅前から美唄市民バス「アルテピアッツァ行き」、乗車19~27分(1日に22往復)。200円

・JR美唄駅から約4.6キロ、徒歩1時間


(2018年10月14日追記。出品者の一人から、この集まりのテーマにジェンダーは入っていないので削除してほしいという要請がありましたので、女性の2字を削除しました)


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