昨年の今ごろ、やはり「楽しい現代美術入門」と銘打って、なぜか女性作家ばかり集めたグループ展がおなじ会場と主催者で開かれていた。
今回は「アルタイル(彦星)の庭」という題で、男性作家18人が出品している。
前回が女性だったので、ことしは男性ということなのか。
出品作家を性別に分けることに、どんな意味があるのかわからない。
あと、昨年も書いたことだが、「楽しい現代美術入門」とうたっているものの、いわゆる「現代美術」の範囲には入りそうもない絵画なども出品されている。
そのあたりは、人により解釈が異なるから、まあいいけど。
「入門」というわりには、見る人に現代美術についての理解を深めてもらうための説明板などは一切ない。
作品の横には、作者自身の筆になるとおぼしきテキストが印字されている。
目が悪いので、小さな文字が非常に読みづらい。
どうも、「アルタイル」という語から、銀河や星空、宇宙を意識して出品している人と、そうでない人がいるようであり、統一感に乏しい。
星雲や島宇宙をイメージさせる作品としては、菱野史彦さんの「annulus」が、まさにそうであった。
見ていると、ぐるぐると渦のなかに、のみ込まれていきそうな、力強い動きの感覚とスピード感があると思う。
スピード感といえば、谷口明志さんの「線の回廊」も、いつもながら空間にぐいぐい線を引いている。支持体の幅がいつになく変化している。
光を感じさせるのは、井桁雅臣さんの一連の作品。
下地のないキャンバスにしみこんだ絵の具による、色彩の愉悦がここにはある。
ほかにも、絵画=平面の作者は多い。
これが、「現代美術入門じゃないだろ」とツッコミを入れたくなる原因なのかもしれない。
みなさん上手だが、その達者っぷりが、どれほどわたしたちの生にかかわってくるのだろうという根本的な思いは残存する。
これまで、大小のキャンバスを会場に散らしたり、壁に直接描くなど、絵画に対して自由なアプローチを続けてきた齋藤周さんが、一般的な抽象画のタブロー2枚だけを搬入しているのは意外だった。いかにも「空間の存在を感じさせる要素」をあえて省いた上で、タブローだけで空間を観者に感じさせたかったのかもしれない。
平面からの「発展組」では、石川亨信さんと森迫暁夫さんの作品は、これまで見た中でも最大級。天井の高い会場をフル活用している。
そらのガーデンを見渡せるロビーには、Dam Dang Laiさんの作品。
ここ数年、集中的に発表している、着彩した枝を、中心部に突き刺して、花火のように組み立てる木彫的な立体だが、枝を一方向に集中させると、まるでほうき星のように見える。
その、ガラス窓を隔てた屋外には、澁谷俊彦さんのインスタレーションが、ゆらゆらと風にしなって揺れている。
これは、澁谷さん、いい場所をゲットしたなあ。
風といえば、室内の藤沢レオさんの大きな家のような作品も、壁が薄い不織布のようなものだったので、空調の風でゆらゆら動いていた。
出品作品は、次の通り。
朝地信介 「無の奥の存在」(2012、膠彩、板)
azkepanphan 「portraits」(2012、アクリル絵の具、ミクストメディア)
井桁雅臣 「アルタイルの庭から「第四惑星に咲く」」(2012、アクリル・キャンバス) 「アルタイルの庭から「サーシアの星へ」」(2012、アクリル・キャンバス) 「アルタイルの庭から「三日月色の水」」(2012、アクリル・キャンバス) 「アルタイルの庭から「まばたきの月」」(2012、アクリル・キャンバス)
石川亨信 「ひこ・C」(2012、凹版・他)
笠見康大 「Untitled(支える構造)」(2012、油彩・キャンバス)
金兵直幸 「le petit pont -かけ橋-」(2012、金属・木) 「le jardin sur la table」(2012、金属)
齋藤周 「繋がる道」(2012、アクリル絵の具・木製パネル)
斉藤幹男 「めだまやき」(2012、プロジェクター・メディアプレイヤー)
澁谷俊彦 「Dance of The Wind」(2012、発泡ウレタン、グラスファイバー、石、その他)
谷口明志 「線の回廊」(2012、水性塗料・板)
Dam Dang Lai 「COLOR WAY」(2012、木・アクリル絵の具・ウレタン)
冨田哲司 (題記載なし 2012、ミクストメディア)
菱野史彦 「annulus 2012、溶接など・鉄)
富士翔太朗 「希望」(2012、アクリル・絵の具)
藤沢レオ 「静かな日-陽光」(2012、鉄・不織布・アクリル)
前田健浩 「幹」(2008・2012、膠彩・紙)
毛内やすはる 「sign」(2012、油絵具・ボール紙・釣り糸)
森迫暁夫 「ひとつぶの地図」(2012、シルクスクリーン・布・(木製パネル))
2012年6月30日(土)~7月22日(日)午前10時~午後8時(入場~午後7時半)、期間中無休
プラニスホール(ESTA11階)
高校生以上300円
今回は「アルタイル(彦星)の庭」という題で、男性作家18人が出品している。
前回が女性だったので、ことしは男性ということなのか。
出品作家を性別に分けることに、どんな意味があるのかわからない。
あと、昨年も書いたことだが、「楽しい現代美術入門」とうたっているものの、いわゆる「現代美術」の範囲には入りそうもない絵画なども出品されている。
そのあたりは、人により解釈が異なるから、まあいいけど。
「入門」というわりには、見る人に現代美術についての理解を深めてもらうための説明板などは一切ない。
作品の横には、作者自身の筆になるとおぼしきテキストが印字されている。
目が悪いので、小さな文字が非常に読みづらい。
どうも、「アルタイル」という語から、銀河や星空、宇宙を意識して出品している人と、そうでない人がいるようであり、統一感に乏しい。
星雲や島宇宙をイメージさせる作品としては、菱野史彦さんの「annulus」が、まさにそうであった。
見ていると、ぐるぐると渦のなかに、のみ込まれていきそうな、力強い動きの感覚とスピード感があると思う。
スピード感といえば、谷口明志さんの「線の回廊」も、いつもながら空間にぐいぐい線を引いている。支持体の幅がいつになく変化している。
光を感じさせるのは、井桁雅臣さんの一連の作品。
下地のないキャンバスにしみこんだ絵の具による、色彩の愉悦がここにはある。
ほかにも、絵画=平面の作者は多い。
これが、「現代美術入門じゃないだろ」とツッコミを入れたくなる原因なのかもしれない。
みなさん上手だが、その達者っぷりが、どれほどわたしたちの生にかかわってくるのだろうという根本的な思いは残存する。
これまで、大小のキャンバスを会場に散らしたり、壁に直接描くなど、絵画に対して自由なアプローチを続けてきた齋藤周さんが、一般的な抽象画のタブロー2枚だけを搬入しているのは意外だった。いかにも「空間の存在を感じさせる要素」をあえて省いた上で、タブローだけで空間を観者に感じさせたかったのかもしれない。
平面からの「発展組」では、石川亨信さんと森迫暁夫さんの作品は、これまで見た中でも最大級。天井の高い会場をフル活用している。
そらのガーデンを見渡せるロビーには、Dam Dang Laiさんの作品。
ここ数年、集中的に発表している、着彩した枝を、中心部に突き刺して、花火のように組み立てる木彫的な立体だが、枝を一方向に集中させると、まるでほうき星のように見える。
その、ガラス窓を隔てた屋外には、澁谷俊彦さんのインスタレーションが、ゆらゆらと風にしなって揺れている。
これは、澁谷さん、いい場所をゲットしたなあ。
風といえば、室内の藤沢レオさんの大きな家のような作品も、壁が薄い不織布のようなものだったので、空調の風でゆらゆら動いていた。
出品作品は、次の通り。
朝地信介 「無の奥の存在」(2012、膠彩、板)
azkepanphan 「portraits」(2012、アクリル絵の具、ミクストメディア)
井桁雅臣 「アルタイルの庭から「第四惑星に咲く」」(2012、アクリル・キャンバス) 「アルタイルの庭から「サーシアの星へ」」(2012、アクリル・キャンバス) 「アルタイルの庭から「三日月色の水」」(2012、アクリル・キャンバス) 「アルタイルの庭から「まばたきの月」」(2012、アクリル・キャンバス)
石川亨信 「ひこ・C」(2012、凹版・他)
笠見康大 「Untitled(支える構造)」(2012、油彩・キャンバス)
金兵直幸 「le petit pont -かけ橋-」(2012、金属・木) 「le jardin sur la table」(2012、金属)
齋藤周 「繋がる道」(2012、アクリル絵の具・木製パネル)
斉藤幹男 「めだまやき」(2012、プロジェクター・メディアプレイヤー)
澁谷俊彦 「Dance of The Wind」(2012、発泡ウレタン、グラスファイバー、石、その他)
谷口明志 「線の回廊」(2012、水性塗料・板)
Dam Dang Lai 「COLOR WAY」(2012、木・アクリル絵の具・ウレタン)
冨田哲司 (題記載なし 2012、ミクストメディア)
菱野史彦 「annulus 2012、溶接など・鉄)
富士翔太朗 「希望」(2012、アクリル・絵の具)
藤沢レオ 「静かな日-陽光」(2012、鉄・不織布・アクリル)
前田健浩 「幹」(2008・2012、膠彩・紙)
毛内やすはる 「sign」(2012、油絵具・ボール紙・釣り糸)
森迫暁夫 「ひとつぶの地図」(2012、シルクスクリーン・布・(木製パネル))
2012年6月30日(土)~7月22日(日)午前10時~午後8時(入場~午後7時半)、期間中無休
プラニスホール(ESTA11階)
高校生以上300円
札幌にいらしてたんですね。
私も石川亨信さん、森迫暁夫さんの作品等は、スケールアップして面白かったです。
外は澁谷さんの所までは良いんですが、私が行った時はガーデンまでは工事中で入れなかったような…
ちょっと、あんまりだと思いました。
楽しそう。
しかし、東京ならあの庭はありがたいんでしょうけど、北海道だと、どうなんでしょうか。すぐ自然がありますからね~。
ミトさん、お久しぶりです。
そのテーマで出品に応じる作家がいるのかどうか微妙ですが。
ただ、マジレスすると、ジェンダーの問題をまじめに考える展覧会は、やってもいいんじゃないですかね。