北海道美術ネット別館

美術、書道、写真などの展覧会情報や紹介。毎日更新しています。2013年7月末、北見から札幌に帰還。コメントはお気軽に。

近美コレクション 北の美術家群像 (2018年7月7日~11月11日、札幌)

2018年12月07日 13時53分38秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 
 基本的に、とくにアーティストに対する批判や悪口は書かないでおこうというのが、このブログのスタンスです。
 それは「批判がよくない」と思っているからではなく、「これを見に行って」と読者に促す方が先であり、それさえもちゃんとできていない現状では、その手の記事を書いている暇がないからです。
 とはいえ、この展覧会は、作品はともかく、キュレーティングがさすがにどうかと思われたので、書いておきたいと思います。

 この展覧会は
「北海道美術史を彩り、大きな存在感を放ってきた美術家たち20名の代表作を展覧します」
とのことです。
 20人の最初を飾るのは、林竹治郎です。
 この洋画家が、札幌を中心として見た場合に北海道洋画史の最初の一ページを飾る偉大な画家であることは否定できませんが、それはあくまで「札幌中心の北海道洋画史の始まり」であって「北海道美術史の始まり」ではないことについては、これまでも書いてきましたからここでは繰り返しません。
 道立近代美術館がオープンした1977年の頃は
「洋画イコール美術」
というのは、大げさにしても、業界での洋画の存在感は圧倒的でした。
 いま、東京の美術館や、各種国際芸術祭などで、洋画を見ることは、かなり珍しいです。洋画がアートの本流だった時代はとうに過ぎ去っていると思います。

 今回の20人は、日本画4、写真1、陶芸1、彫刻2、グラフィックデザイン1、版画2、洋画9という内訳です。
 さすがに洋画は半数を切っていますが、平面というくくりだと、版画や日本画も含めて14人に上っています。

 まあ、それはいいのですが、この20人を五つのグループに分けているのが、さっぱりわからない。

 そのグループは
「紡ぐ」
「見つめる」
「挑む」
「生きる」
「立つ」
です。

 画像2枚目は「挑む」のグループに入れられている難波田龍起の「湖」「青」「不思議な国 D」です。


 次は、やはり「挑む」の中に入っている小谷博貞「八月の原野」「風景・地から」「北の人」。

 「見つめる」グループに入れられている日本画家だけが、見つめているわけではなく、美術家は誰でも見つめているでしょうし、「立つ」のセクションに展示されている5人以外は、いつも座っているわけではないでしょう。

 こうして見ると「挑む」には抽象画家が入っているようですが(あとの1人は一原有徳)、他のグループにもいないわけではありません。
 こういう動詞を導入することで、見る人の理解を助けることになるのでしょうか。


 いちばんわからないのが「生きる」。
 ここには、砂澤ビッキ、木田金次郎、神田日勝、田辺三重松の4人がカテゴライズされています。
 ほかの16人が生きていないわけではないと思うんですが。

 画像は砂澤ビッキ「樹華」。
 彼が北海道の彫刻を代表する存在であることは異論はないでしょう。
 また、この20人では唯一のアイヌ民族です。

 その右奥に見えているのは田辺三重松の風景画です。

 この4人がひとくくりにされている理由がすごいのですが、それは後で書きます。 


 「立つ」に入っている、中谷有逸「碑・古事記」シリーズ。

 中谷さんは帯広の版画家で、つい先日も札幌のさいとうギャラリーで個展を開催し、80歳とは思えぬ旺盛な創作意欲をみせています。


 おなじく「立つ」に入っている唯一の写真家、露口啓二「地名」シリーズ。
 露口さんの写真は35点もあります。
 「発足ハッタリ」「大誉地オヨチ」など、ぞれぞれの地名で2枚一組(一定の期間をおいて、同じ場所をもう一度撮影する)なので、70枚の写真が並んでいます。

 左奥に見えるのは中江紀洋と下沢敏也の作品。
 「北の美術家群像」の中で、下沢さんの4点中3点だけが、作家蔵の作品。あとの86点はすべて美術館の所蔵品となっています。

 あらためて出品作家を書いておきましょう。

「紡ぐ」
林竹治郎 国松登 花田和治 栗谷川健一

「見つめる」
北川聖牛 本間莞彩 岩橋英遠 片岡球子

「挑む」
一原有徳 小谷博貞 難波田龍起

「生きる」
砂澤ビッキ 木田金次郎 神田日勝 田辺三重松

「立つ」
百瀬寿 中谷有逸 中江紀洋 下沢敏也 露口啓二



 ちなみに、2階は「みんなのアート 1,2,3」という題で所蔵品展が行われていました。
 画像は、椎名澄子「風の子」「木の子」ですが、椎名さんの彫刻作品2点だけは作家蔵でした。
 このほかは、版画、エコール・ド・パリの油彩、浮世絵、日本画など、いろいろな分野にわたる展示になっています。

 「生きる」の話に戻りますが、みなさんはこの4人の共通点が何かわかるでしょうか。
 ビッキは旭川→上川管内音威子府村、木田は後志管内岩内町、神田は十勝管内鹿追町、田辺は函館と、いずれも札幌以外の地方で創作に取り組んだと。これが答えらしいのです。
 別に札幌や東京にいると死人になるということでもないと思うし、「立つ」の中谷さんは帯広、中江さんは釧路、「挑む」の一原さんは小樽が拠点であり、先の4人だけをひとくくりにする意味がまったくわかりません。

 なお、国勢調査で、札幌の人口がはじめて函館を抜いて道内一になったのは、1940年(昭和15年)です。
 田辺三重松が生まれてから40年以上も、函館は道内最大の都会でした。
 いいかえれば、田辺三重松の生まれ育った時代は、札幌のほうが函館や小樽よりも田舎だったわけです。

 こういう歴史を考慮に入れずに、札幌以外の地方をひとまとめにされてもなあ―という感想を抱かざるを得ません。


2018年7月7日(土)~11月11日(日)午前9時半~午後5時(入場は30分前まで)
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17)
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■全道展 第8回新鋭展(2018年11月20~25日、札幌)

2018年11月25日 14時53分11秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 かつて大同ギャラリーがあったころ、道内の三大団体公募展である「道展」「全道展」「新道展」がそれぞれ6日ずつ、似た趣旨の展覧会を開いていたことがあった。
 基本は貸しギャラリーだった同ギャラリーの企画だったらしい。ただ、新道展は、会員によるドローイング展など、ちょっと毛色の変わったことをやっていた。
 また全道展は一時期、その年の協会賞(最高賞のこと)の受賞者の個展を行っていた。これは、良い発想に思えるが、ふたをあけてみると、受賞者の知りあいが十数人のグループ展よりも少ないから来場者が減る。札幌圏以外の受賞者の場合は特に、見に来る知人も少ないため、数年でもとのスタイルに戻った。
 大同ギャラリーがなくなり、新鋭展を、会場を移して続けているのは全道展だけである。
 全道展は、北海道新聞社が主催に名を連ねているのだが、この新鋭展は道新ぎゃらりーを使用せず、紙面での扱いもやや冷淡である。

 前置きが長すぎた。
 今年の新鋭展には、協会賞1人、道新賞2人、八木賞1人、佳作賞5人、会友賞3人、会友選抜7人の計19人が、32点を出品している。絵画、版画、彫刻、工芸の4部門がそろっている。
 もちろん、全道展での新鋭ということだから、若い人とは限らない。

 個人的に気になった作品。
 志摩利希(札幌)「Crow Fountain」「Fall」
 志摩さんは数年前に北海道に戻ってから、銅版画を精力的に制作、発表している。女性がいる、不思議な風景を描く。
 画面に登場する風景や動植物は、ことさらに情緒を強調したわけでもないのに、なぜか懐かしい。

 佐藤真康(帯広)「眠り」
 佐藤さんは八木賞。油彩。S100。
 目をつぶって、左腕を下にして水色の敷布に横たわる裸婦の胸から上の部分を、わりあい写実的に描いている。
 乳首があらわになっており、これじゃ風邪をひくぞ、と思う。
 冗談はさておき、さらに異例なのは、頭を画面の右、胸を左に描いているのに、縦構図ということ。当然、画面の天地に空きができるが、乾く前の絵の具が流れた跡が無数にあるため、スカスカした感じは受けない。

 似たような人物像の追究として、第2席にあたる道新賞を受けた金子圭太(札幌)の絵画「君と僕のこれから」。(50号)
 こちらは、赤いパンツ一丁の半裸の男性がベッドらしき白い台の端に腰かけている様子を描いており、彼は自分の前で組んだ手で花1輪をいとおしそうに持っている。
 男性の周囲の空間には、さまざまな色が筆触も生々しく散らばっていて、ここだけ見ていると抽象画のようですらある。

 近年の全道展の絵画部門には、佐藤仁敬さんなど、人間を写実的に描いた絵の潮流があるように感じる。

 木村麻衣(札幌)「管理人のいない庭」(M50)
 昨年の協会賞に次ぐ受賞。
 雑誌のグラビアのコピーや英字紙が支持体になり、その上に黒でドローイングした人物などの印象が以前よりも後退している。

 神原利樹(胆振管内洞爺湖町)「早春の洞爺湖」(F15)
 奥に洞爺湖と中島が、手前に段々畑や、つながれた1匹のヤギなどが描かれ、わりあいオーソドックスな風景画。のんびりとした雰囲気だが、ひとことで言うと「輝かしさ」がある。
 下地に明るい黄色を塗るなどしているのだろうか。
 ほかに「群落のひまわり・有珠山」(S100)。

 市橋節こ(札幌)「宙・気」(S100)
 惑星の上空で、うずくまる人。宇宙的な、おおきな構えのある絵。
 ほかに「気・在りて」(F20)。


 ほかの出品作は次の通り。註記のないものは絵画。
三谷佳典(上川管内音威子府村) 内緒の手紙(F50)、内緒の願い星(P6)
滝花保和(函館)        Flash(S50)
射水美栄子(北見)=版画    停泊(縦67×横48)、たんぽぽ(縦40×横30)
木俣猛(日高管内浦河町)=工芸 湖の秋(68×92×3)、イメージ(92×115×7)
太田れいこ(札幌)       蛹の閾値 II(F100)、蛹の閾値I(F30)
加賀見恵美(富良野)      夢色イロ(S100)

高崎勝司(恵庭)=版画     せい(縦50×横70)(縦30×横30)=同題2点
山口順子(旭川)        CHALLENGE(F100)、秋風と戯れ(4号)
西澤弘子(札幌)        海鳴り(夕映え)(F130)
高野裕子(札幌)=版画     白い旋律(54×38)、白い旋律ー蝶(15.5×11)
藤林峰夫(札幌)=版画     アンブルサイドのOld Bridge house(縦78×横55)、樹氷(縦20×横30)
春藤聡子(札幌)=彫刻     Life I(150×21×21)、Life II(120×30×21)
阿部綾子(愛知県)=工芸    待ちわびて(41×41×41)、記憶(40×40×20)


2018年11月20日(火)~25日(日)午前10時~午後6時(最終日~午後4時半)
ギャラリー大通美術館(札幌市中央区大通西5 大五ビル)


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追記有り■極の誘ひ 詩人吉田一穂展 ―あゝ麗はしい距離(デスタンス)、(2018年9月22日~11月18日、札幌)

2018年11月17日 16時59分00秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 かんたんにまとめると、次の3点がポイント。

1) 孤高の詩人について手堅くまとめた展示

2) 美術関係は、本人の揮毫を別にすれば、堀内規次という人の筆になる一穂の肖像画(市立小樽文学館蔵)があるだけ

3) 図録はない

というわけなので、今年の有島武郎と「星座」展などと異なり、美術クラスタは足を運ぶ必要はない。
(追記。絵本、挿し絵があるので、見るべきところはあります)

 筆者は、わりと好きな詩人なので、まずまず面白く見た。
 小学校の卒業写真で、写真屋の言うことを聞くのがいやで、そっぽを向いているのを見たが、根っからの反逆者なのだろう。
 まわりの人間は、つき合いづらかったに違いないと、苦笑してしまう。


 吉田一穂は1898年(明治31年)、北海道釜谷村(現渡島管内木古内町釜谷)生まれ、後志管内古平町育ち。旧制の北海中、早大は中退。
 1973年歿。

 生前出した詩集は数冊。
 勤め人だったのは太平洋戦争中だけ。
 これは怠けていたのではなく、言葉をぎりぎりまで絞り、短い詩行に精神を凝縮した作風であったためだろう。
 これは、北海道の詩人でいえば、しゃべるように詩を書いた小熊秀雄とは正反対の行き方ともいえよう。


 しかし、筆者の昔からの疑問は、こういう詩風ではあまり売れそうになく、かといって、何か仕事を持ったり小説を書いたりといったこともほとんどなく、この人はいったいどうやって生計を立てていたのだろうということだ。
 小熊秀雄よりも原稿生産量の多い小熊秀雄が、赤貧洗うがごとき生活を送っていたのである。
 
 この疑問に対する答えは、今回の展覧会でも全くわからなかった。


 筆者が好きな作品はいろいろある。
 もちろんあの名高い出世作にして代表作「母」もすてきだと思う。
<病みて帰るさの旅の津軽海峡。>
という行で始まる「海郷」も、北海道人にはたまらない。

 長じてお気に入りになったのが「魚歌」。「ふる郷は波に打たるゝ月夜かな」という副題?がついている。
 インターネットでは横書きになってしまうのがどうにも意に染まないが、全行を引いてみる。

鳥 跡 汀
拾 流 木
焼 魚 介
勺 濁 酒
濤 声 騒
波 触 洞

 これを漢詩という人がいるが、筆者はそう思わない。三言というのは、漢詩にはあまり無いだろう。
 返り点とかそういうことを気にしないで、字面を見ていれば、その場の雰囲気が伝わってくる。漢文の素養は全くいらない。
 海岸で魚を焼き、酒を飲む。
 椎名誠氏のエッセーが思い出される。
 ただ、こちらはもう少し静かにやっている感じがする。
 男は黙ってサッポロビールというところか。
 いや、日本酒の方が吉田一穂には似合いそうだ。
 まぁ、そんなことはどうでもいいのだが、わずか漢字18文字から、岩頭に砕ける波の音とその後の沈黙までもが聞こえてくるような、無限の広がりを持った詩だと思うのだ。


2018年9月22日(土)~11月18日(日)午前9時半~午後5時
月曜日休み。ただし、9月24日(月)、10月8日(月)、11月5日(月)は開館し、9月25日(火)、10月9日(火)、11月8日(木)は休館

一般500(400)円、高大生250(200)円、中学生以下、65歳以上無料
( )内は10人以上の団体料金



・地下鉄南北線「中島公園駅」3番出口から約410メートル、徒歩6分
・地下鉄南北線「幌平橋駅」から約480メートル、徒歩7分

・市電「中島公園通」から約550メートル、徒歩7分

・中央バス、ジェイ・アール北海道バス「中島公園入口」から約200メートル、徒歩3分
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■nor-hay展 「林教司を偲ぶ会」(2018年11月5~10日、札幌)

2018年11月09日 20時35分11秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 
 岩見沢拠点の美術家で、札幌のギャラリーたぴおの2代目オーナー(2007~16)でもあった林教司さんが急逝してから1年。
 林さんとかかわりのある若手を中心とした美術家13人が、1周忌にあわせ、グループ展を開いています。

 冒頭画像は、林さんの作品。
 インスタレーションも立体もこなす作家でしたが、今回は平面が7点並んでいます(うち6点がうつっています)。いずれも、精神性を感じさせる重厚な作品です。
 紫乃さんの解説テキストが附されています。

 夕力夕”ヨウさんの、赤い糸と五円玉によるインスタレーション。
 地下之会らしい不気味さが漂います。
 夕力夕”さんは「たぴお」の終わりごろ、よく作品を発表していました。

 左手前は林さんの作品だと思います。


 左端は篠原奈那子さんのモノクロ写真。
 篠原さんは「たぴお」では発表したことはありませんが、中央バスターミナル地下にあった「自由空間」で個展を開いたことがあります。
 林さんは「たぴお」閉廊後、おなじくターミナルの地下にあった喫茶「レ・ノール」のマスターになり、自由空間の申し込みなども行っていました。

 そのとなりには、會田千夏さんが撮った、林さんの写真が貼られています。

 佐々木仁美さんの金工、久藤エリコさんの切り絵「BORELO」もあります。



 林さんの前にギャラリーたぴおのオーナーだった竹田博さんの絵も、何点かありました。

 終わりごろのたぴおで最も活躍した若手のKiriさんによる、青い書物タイプの作品などもあります。


 阿部雄さんも写真を撮る若手。
 古いフィルムで、おまけに裏ぶたを開けて感光してしまったため、不思議な光が刻印されているプリントの作品「Light Dance」を出品しています。
 その左は、Ko-ayaさんの絵画「theory of Forms」。カラフルで、楽しげです。

 ほかに、YUKOさん、YüRaさん(üは「u」にウムラウト)、宮森くみさん、石川潤さんも出品しています。
 石川さんは函館からの参加です。

 丸島均さんのモノクロ写真もありましたが、ほんとうに自分で焼き付けしたのかしら。丸島さんは「見る」専門で、作品を出すのは初めてかもしれません。

 ギャラリーたぴおのような、なんだかよくわからないけどとんがった作品が展示されていて、行けば誰かがいる、そんな空間がなくなったなあとあらためて実感します。
 そして、そういう空間を維持し、若い人とも分け隔てなく美術論議ができた林さんは、やはり貴重な存在だったと思うのです。



2018年11月5日(月)~11月10日(土)午前10時半~午後5時(最終日は~3時)
ギャラリー粋ふよう(札幌市東区北25東1)

関連記事へのリンク
第四十五回北海道抽象派作家協会展 (2018年4月)
林さんの告別式(2017)
美術家で、ギャラリーたぴお2代目オーナー、林教司さん逝く(2017)
林教司さんに聞く、ギャラリーたぴおのことなど (2016)





・中央バス「北26条東1丁目」から約170メートル、徒歩3分
(札幌ターミナル、北5西1などから「02屯田線 屯田6の12行き」「22 あいの里篠路線 あいの里4の1行き」「34 35 36 篠路駅前団地線 篠路10の4行き」「39 ひまわり団地線 あいの里4の1行き」に乗車)

・中央バス「北24条西2丁目」から約500メートル、徒歩7分
(札幌ターミナル、北5西1などから「09 新琴似線 中央バス自動車学校行き」「14 花川南団地線 石狩庁舎前行き」「16 花畔団地線 石狩庁舎前行き」に乗車。帰路(上り)は「北26条東1丁目」から乗れます)

・中央バス「北24条東1丁目」から約500メートル、徒歩7分
(東営業所―東豊線「元町駅」―北24条駅を結ぶ「元町線」)

・地下鉄南北線「北24条」駅から約800メートル、徒歩10分
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■物語のかけら 塩谷直美・中嶋幸治 (2018年11月3~8日、札幌)

2018年11月07日 21時07分27秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 札幌で、自前のギャラリーを持たずに、独自の企画を意欲的に打ち出している Withart の本間さんが、またもユニークな顔合わせによる展覧会を主催しました。
 

 案内状には、次のようなテキストが添えられていました。

COTEXT-Sに射し込む光をとらえ、刻一刻と時を刻むガラス
人の手を渡って辿り着いた紙から生まれる新たな物語

それぞれが作りだす手仕事の集積から静かな音が響く

作り手から使い手に紡がれていく「物語のかけら」展


 茨城県常陸太田市のガラス作家で、道立近代美術館にも作品が収蔵されている塩谷直美さん。
 札幌と青森県を拠点に、紙を主な素材とした繊細な作品を制作する中嶋幸治さん。

 古い建物のリノベーションによるギャラリーで、この2人が展示しています。
 冒頭画像は、唯一のコラボレーションとなる「かけら」。


 本の形状をした中嶋さんの作品。
 ぜんぶで7点が壁に並んでいます。
 文字が書かれているのではなく、ドローイングが描かれています。
 題は

Cast a cold eye
On life, On death
Horseman, pass by!

 この3行の詩句は、アイルランドの詩人W.B.イエイツ(1865-1939)の代表作 "Under Ben Bulben" の末尾で、彼の墓碑銘に刻まれている有名な言葉なのだそうです。
 札幌の円山に繰り返し登っていた頃に読んだ詩で、生と死を冷たい目で見つめることと円山や北海道神宮を何度も訪ねることとが自分の中でリンクし、頭の中でこの3行がリフレインしていたーというような意味のことを、オープニングのアーティストトークで話していました。
(その頃に撮った写真も、会場にはひっそりと飾られています)



 「となり」。

 塩谷さんは、これまでも札幌で作品を発表したことがありますが、それを含めてほとんどの場合、器の展示販売で、今回のようにオブジェがメインになることはほとんどないそうです。

 「2人展とか基本的に苦手だったんです。北海道まで行くのに『個展じゃないのか~』っていう気持ちでした、正直。でも今は『120%良かった』と思う。それは、なんといっても本間さんのセンス。加えて、札幌のマチとか、11月という季節とかいろいろあるけど、良かったと思う。相手を意識しなかったのが良かったのかもしれない。自分は夫婦でガラスをつくっているので、2人で展示することがよくあるし、友人のこともあるけど、知っている相手だったら作っている段階からきっと意識しちゃってた」

 録音していたわけでないので正確な言い回しではありませんが、こんな話を最後にしていて、塩谷さんっていい人だなと感じました。
 今回は、2人展というのに、搬入の時まで互いに相手がどういう作品を持ってくるか、まったく知らされていなかったそうです(案内状に印刷されていた作品写真だけ)。それがかえって良かったということを塩谷さんも中嶋さんも話していたのでした。


 中央の大きな作品は「in side」。
 そばに転がっているのは「ナッツ」です。

 塩谷さんはフランス・マルセイユに滞在中、一時作品が作れなくなり、詩を書いていたことがあるそうです。
 思い浮かんだ言葉を書いているうち、これを紙にしたらどうなるんだろうと考えて、紙の工作を作りました。作りためた工作をガラスで作ったら表、現できるかもしれないと思いついたとのこと。

 作品集の本を見ると、一つ一つの作品に、短い詩がついています。

 この作品には、次のような詩句が添えられています。

 今日の私は
 一番上のステップに
 腰をおろし
 内側をながめる


 昼に見ると、白い光を内側に宿して、さらに美しいのだと、会場で写真家のSさんに聞きました。



 今回の展覧会は、タイトルにもあるように「言葉」「物語」が重要なカギになっています。
 ただ、蛇足めいたことを記せば、言葉や物語は近代美術にとってはジャンルの純粋性を損なうものであり、むしろ排除すべき要素でした。
 洋画家が「文学的」と他人の作を評するとき、それは悪口だったのです。

 時代は変わり「物語性」は作品世界に豊かな背景をもたらすものとして捉えられるようになってきています。
 美術作品が、物語やテキストの単なる翻訳や挿絵として存在するのではなく、お互いが響き合うように展開し、鑑賞者に何かを投げかけるのが、現代のアートらしい在り方だと、筆者は思います。



2018年11月3日(土)~8日(木)午前11時~午後7時
CONTEXT-S(札幌市中央区南21西8 twitter: @CONTEXT_S )


https://uzawaglass.amebaownd.com/

http://kojinakajima.com/

関連記事へのリンク
中嶋幸治 芸術記録誌「分母」vol.2 特集メタ佐藤 −包み直される風景と呼び水− (2017)

中嶋幸治展 風とは (2014)

中嶋幸治展 0m/s -zero meter per seconds- (2010)

中嶋幸治「エンヴェロープの風の鱗」展 (2009年7月)

ALGILLN'NE展「モーラ」 (2008年)

中嶋幸治展「Dam of wind,for the return」 (2007年)





・市電「東屯田通」から約150メートル、徒歩2分

・じょうてつバス「南22条西11丁目」から約510メートル、徒歩7分
・地下鉄南北線「幌平橋駅」から約1.35キロ、徒歩17分
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■京都国立近代美術館名品展「極と巧 京のかがやき」 (2018年9月29日~10月21日/24日~11月14日、札幌)

2018年10月21日 15時16分52秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 京都国立近代美術館の所蔵品のうち、日本画と工芸を紹介する展覧会。

 ことしは「STV創立60周年記念」と銘打った展覧会が四つも札幌で開かれているが、その中ではこれが一番見どころがあったと思う。図録も出ていた。
 少なくとも、この展覧会の前に開かれていた東京富士美術館の展示よりは、良い作品が来ていると感じる。まあ、富士美術館のときは近世中心、今回は近代なので、単純な比較はできないが。

 京都国立近代博物館はもちろん彫刻や洋画も収集しているし、現代アートの展覧会も古くから行っているが、今回はいっさい来ていない。
 これはこれで、会場の構成がすっきりしたと思う。

 「日本画」は、1860年代から1970年代まで。
 前期でいちばん古いのは幸野楳嶺「春秋蛙合戦図」で、1864年ごろ。

 個人的に圧巻だったのは、富岡鉄斎の「富士遠望・寒霞渓図」。巨大な南画の屏風で、スケール感がすごい。いわゆる南画・水墨画の決まり切った約束事から自由でありつつ、西洋画の模倣からも完全にまぬかれている。
 鉄斎が、日本の近代絵画史で「弧峰」とされるのもうなずける。
 解説文で、鉄斎が賛を重視していたと書いていたが、だったら釈文をつけてほしい。

 竹内栖鳳「枯野の狐」は1897年作。
 キツネの毛の描写が迫真。
 一方で、背景の枯れ草は、茫漠とした簡素な描写にとどめている。
 おそらく近代日本画とは、洋画を見た画家が「輪郭線って、なんだろう」と考えたことが出発点のひとつになっているのではないかと思うのだが、そういう意味ではまさにその出発にある作といえるかもしれない。

 「美人画」というセクションがあったのが興味深い。
 ここの目玉であろう、上村松園の2点「舞支度」(1914)「花のにぎわい」(1907~12)は、日本画ではめずらしく前期・後期通しての展示になっている。
 輪郭線についていえば「花のにぎわい」は、それぞれの女性の和服の色にあわせた輪郭線が用いられており、浮世絵や日本画でありがちな黒が排されている。
 「舞支度」は、対角線上に重要な要素を配した構図がすばらしい。

 このセクションでは、谷角日沙春「洛北の佳人」(1933)も興味を引いた。
 火をともしたろうそくと、わずかな影の描写が、この場面が夜であることを示す「記号」になっているのだが、そういう「約束事」を知らないと読み解けないというのも、なかなか大変なことだと思う。

 戦後は、前期・後期5点ずつ。
 やはり福田平八郎はいいな~と思う。西洋画と日本画の止揚である。
 京都の美術館らしく、戦後の前衛美術運動をになった「パンリアル」の三上誠と星野眞吾が展示されている。


 さて、工芸は、いわゆる「超絶技巧」といわれて近年注目を集めている安藤緑山や高瀬好山の置物が16点。
 「金工」セクションは16点あるが、その大半は有線七宝で、並河靖之や濤川惣助の花瓶の高度な技術に息をのんだ。

 個人的な感想になるが、「そっくり」セクションの安藤緑山などにそれほど驚かなかったのは、道立函館美術館の「ニッポンの写実 そっくりの魔力」展で昨年見ていたためだということに気がついた。
 展覧会の仕立てとしては、函館のほうが、批評的な視線があって良かったと思う。
 一方で、七宝に感服したのは、先に江別市セラミックアートセンターで開かれた「多彩なる近現代工芸の煌めき 東京国立近代美術館工芸館名品展」にこのジャンルが欠落していたことが大きい。

 「陶芸」は七大錦光山宗兵衛、板谷波山、富本憲吉、河井寛次郎、十五代樂吉左衞門など31点。
 さすがに京都の陶芸家の作が充実している。
 ただし、こちらは江別での東京国立近代美術館工芸館名品展とかなり傾向が重複している。
 また、樂焼などは2010年の作まで展示されている。

 「漆芸・木工」はすべて別の作家によるもので16点。
 「源氏物語蒔絵飾棚」は、贅を尽くした豪奢な棚だが、この展示方法では天板が見えない。鏡を活用するなど、なんとか方法がなかったのか。

 工芸では「染織」のみ、前期・後期で作品が入れ替わる。
 このセクションでハッとさせられたのは、たとえば山鹿清華の「手織錦壁掛清晏舫図ておりにしきかべかけせいあんほうず」や作者不詳の「桜に孔雀図刺繍壁掛」などは
「こういうものも美術だ」
と誰かが気づかないと、収集の網に引っかからないのだ。

 ちなみに、山鹿清華のタペストリーの両側に書かれた文字は次の通り(正字は新字に改めた)。

実作無疆万年錦茅禄
天顔有喜四海花蕃甃

 全体を通して、作品タイトルや解説文に、正字と新字が混在しているところが散見されるのが気になったが、作者の意向でもあるのだろうか。


 長くなってきたので、いちばん書きたかったことは、次の項に回します。


2018年9月29日(土)~10月21日(日):前期
   10月24日(水)~11月14日(水):後期
午前9時半~午後5時、会期中無休
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17)

□公式サイト https://www.stv.jp/event/kyokimbi/index.html
□京都国立近代美術館 http://www.momak.go.jp/

一般1100円、高大生600円、中学生400円 ※小学生以下無料(要保護者同伴)




・中央バス、ジェイアール北海道バス「道立近代美術館前」で降車すぐ
(小樽、手稲方面行きは、都市間高速バスを含め全便が停車します)
・地下鉄東西線「西18丁目」4番出口から400メートル、徒歩6分

・市電「西15丁目」から700メートル、徒歩10分
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■秋の風色6人展 (2018年10月11~16日、札幌)

2018年10月15日 15時41分31秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 「どうしてこういう顔ぶれがそろったの?」
と聞きたくなるぐらいにジャンルも年齢もさまざまな6人による展覧会。
 札幌で「白うさぎ 陶工房」を主宰する飯田順子さん(陶器・陶雑貨)が、残る5人全員と知り合いで、声をかけたということのようです。裏を返せば、互いに顔見知りではない出品者もいるということ。
 会場の「石の蔵ぎゃらりぃ はやし」は、古い石倉を改装したギャラリーで、2階はみしみしと音を立てる急な階段を上っていかなくてはなりません。あまり広くないので絵画展などのために借りる人は少なく、クラフト系の作り手から愛好されています。このスペースに、よくぞこれほど詰め込んだ! と驚くほど、たくさんの小品が所狭しと置かれています。

 冒頭画像は、白うさぎ陶工房のコーナー。
 小皿、箸置き、茶碗、陶板、カップなどが並びます。
 モティーフになっているのは、カエルや象、ウサギなど。かわいらしくて、小さなものが得意なようです。

 ちなみに中央上部に、黒いふちに囲まれた白っぽい陶板が見えますが、これはシンガー・ソングライター山下達郎へのオマージュとして作ったコラージュふうの作品で、ご本人の顔が描かれているわけではないですが(なので、著作権や肖像権、歴代のアルバム名などがちりばめられ、ファンにはたまらない1点になっています。

 ところで、白うさぎ陶工房さんの、各種イベントなどへの出品ペースにはすごいものがあり、この展覧会の最中の週末も、白石区のアクセスさっぽろの催しに参加していました。




 ゴトウマキエさん。
 「ウッドバーニング」という技法で制作したイラストが目を引きます。
 変な言い方かもしれませんが、「木を焼いた」という感じはあまりしなくて、シャープで生き生きした線が光っています。さすが「北海道イラストレーターズクラブアルファ」の会員。

 ポストカードやトートバッグなどもあります。
 一方で「あんまりがんばりません。」などと書かれた、ゆる~い感じのポストカードなどもあって、別の一面を見せています。




 小西木材(木彫作品)。
 小西さんは恵庭の方で、千歳のクラフトイベントを主催しているそうです。
 くるみボタンやバッジ、カテラリーなどが並んでいます。





 駒澤千波さん。
 道展会員の日本画家で、精緻に描かれた動物の絵の大作などを描く一方で、野外アート展や、モノヴィレッジなどの「ものづくり系」イベントにも参加するなど、一般的な画家の枠にとどまらない活発な活動を展開しています。
 今回は、金魚をモティーフにした小品がたくさん展示されています。小さなアクセサリーなども並んでいます。




 いさちさんも、「NewPoint」などのグループ展から「ものづくり系」イベントまで幅広く出品しています。
 イラストや絵画、立体などを手がけていますが、青空が描かれていることが多く、見るとすぐ「いさち」さんだと分かります。




 みよしあやなさん。
 なんと、札幌大谷大の学生さんです。
 ちょっと少女漫画っぽいテイストの木版リトグラフなどが展示してありました。
 トートバッグやポストカードもあります。
 ちょっと面白かったのは「スイマニヤラレタ!」という文字が書かれた入れ物。テレビゲーム・ネイティブ世代の感性だなあと思いました。


 ことし5月に書いた「サッポロ モノ ヴィレッジの衝撃」という記事でも触れたとおり
「現代アート」
でもなく
「団体公募展系の絵画・彫刻など」
でもない、第三のジャンルとして
「ものづくり系」
が、この10年ほど、着々と存在感を強めつつあるようです。
 そして、「ものづくり系」が勢力を単純に広げるというよりも、「絵画など」と相互に越境、浸透しあっているのが現状ではないかと思います。



2018年10月11日(木)~16日(火)午前11時~午後6時半(最終日~5時)
石の蔵ぎゃらりぃはやし (札幌市北区北8西1)


□ブログ「白うさばらし」 https://blog.goo.ne.jp/shirousa4494

陶工房 白うさぎ「初夏の陶展」 (2009)
陶工房白うさぎ 三人展「うさぎの玉手箱」(2007年)


□はじめまして、こんにちは。 ゴトウマキエです。 https://goma-ma-goto.jimdo.com/

□小西木材 http://konishimokuzai.com/


□KOMAKOMA http://chinakoma.web.fc2.com/

ハルカヤマ藝術要塞2017 FINAL CUT
駒澤千波「ふたつめの言葉」 (2014、画像なし)
駒澤千波展 (2013)
駒澤千波「いざない」 ハルカヤマ藝術要塞(2011)
【告知】第41回北海道教職員美術展(2011)※画像なし
第4回にかわえ展 (2010) ※画像なし
第40回記念北海道教職員美術展(2010)
にかわえ展(2009)
500m美術館(2008)
2008日本画の「現在」展
第23回北の日本画展(2008)
第2回にかわえ展(2008)
駒澤千波展(2007)
駒澤千波日本画展(2007)
以下、画像なし
にかわえ展(2007)
第21回北の日本画展(2006)
寒昴展(2006)
北海道教育大学札幌校日本画展(2004)
Graduation Exhibition 2003 2003年度北海道教育大学札幌校芸術文化課程美術コース卒業制作展(2004)=2月11日の項
第18回北の日本画展(2003)
にじいろ 北海道教育大学札幌校日本画研究室3年目=2月10日の項


□絵描き屋さん。いさち https://ameblo.jp/eat-star/
□いさち @doumokoumo_o


□みよしあやな @obake_suki



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追記あり■Nonlocality (2018年10月3日~14日、美唄)

2018年10月12日 22時08分26秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 伊藤恵里(釧路)、唐神知江(胆振管内洞爺湖町生まれ、東京在住)、久藤エリコ(札幌)、高田K子(帯広)の4氏が美唄でグループ展を開いている。


 所在地がばらばらということもあって、あえて、単純に「ローカルであること」を否定したようなタイトルを掲げているが、そして、時として安直に北方ロマンティシズムが批評の用語として導入される土地柄にあってそのこと自体は貴重な姿勢だとは筆者は考えるのだが、実際の展示を見てみると、かなりローカルかつパーソナルな色合いを感じてしまう。だからといって、良くない展覧会だと決めつけるつもりもないが。

 伊藤さんは絵画である。
 5枚組みの「drowing og the day」、「飲みかけのフルーツ牛乳」など、日常の記録のような趣でタッチもラフであり、大文字の芸術や社会に断固として抗しようという意図すら感じられる。
 「樹のある風景」は、アノニマス(無名)な風景であり、これも観光地や崇高な風景の対極にあろうとする画家の意思を感じてしまう。

 久藤さんは切り絵作家。
 この2年ほどは、壁から離して、天井からつるして作品を設置することで、影をも作品の一部とするような方法論で、新機軸を打ち出している。
 今回の「ゆらぐものたち」は、これまで花びらや炎のような形を展開することが多かった久藤さんとしては珍しく、丸みを帯びた曲線が主体。具象性が捨象されているのが興味深い。


 高田さんは「長谷政幸さんへの手紙 2002ー2018」と題して、文字が消えかかった黒板を写した写真や、高田さん得意の、鑑賞者をユーチューブの画像に誘導するQRコードなど、立体的かつポリフォニックな方法を駆使した作品世界を展開している。
 ただし、そこに書かれた、薄れた文字のテキストも、タイトルも、帯広や十勝地方で現代アートにかかわってきた人以外には理解できないであろう。もちろん、個人的な、あるいは地域を限ったつぶやきや思いにも、意味はあるだろうが。

 唐神さんは「絵画/彫刻」と題したあんどん型の、四方に肖像を描いた床置きの作品5点と、「彫刻/絵画」という壁掛けの、凹凸のある抽象画5点組を2セット、出品している。
 美術史的には「絵画か彫刻か」という問題設定自体がすでに失効しているのではないかと考えられるが(少なくとも「美術」という制度のなかで特権的なジャンルとして存立する基盤はとうの昔に失われていよう)、モダニスム的志向と団体公募展の存在感が根強く残る北海道で生きてきた作者にとっては、自分の問題として乗り越える必要があったのかもしれない。

 どんな表現も出発点には「個」があり「地域(国)」があるとするならば、たとえ、狭さに安住しないマニフェスト的な意思をうたったタイトルを冠した展覧会であっても、個や故郷が否が応でもにじみ出てくることに対して、否定的である必要はないだろう。
 今回、会場に誰もいなかったので、筆者は感じたままを勝手に書いた。あるいは大きな勘違いをしているかもしれない。ご容赦のほどを。
 

2018年10月3日(水)~14日(日)午前9時~午後5時、火曜休み
安田侃彫刻美術館アルテピアッツァ美唄(美唄市落合町栄町)

 13、14日ワークショップの予定。


関連記事へのリンク
北のユートピア (2017)=4人とも出品

HOKKAIDO EXHIBITION 2016 Loop -spin off-
伊藤恵里展 いのちの生まれる所 -in the marshy land- (2015)


□唐神さんのツイッターアカウント
雪みやげ art exhibition 唐神知江(絵画)唐神里佳(ガラス)による作品展覧会 (2017年1~2月)
唐神知江 おいしい画展 (2016)


□久藤さんのサイト http://www7.plala.or.jp/LivingROOTS/index/
久藤エリコ切り絵作品展「ゆらぎ」 (2018年4月)
第5回丸島均(栄通記)企画 群青 後期(2018年2月)
第4回丸島均(栄通記)企画 群青―ぐんせい― (2017年1月)
TAPIO LAST 終章 (2016年4月)
All Japan Under 40 Collections (2009)
500m美術館 (2008)
田園都市のコンテンポラリーアート 雪と風の器 (2008)


□高田K子さんのツイッター @jp_takadakeiko
http://takadakeiko.tumblr.com/
田園都市のコンテンポラリーアート 雪と風の器 (2008)





・JR美唄駅前から美唄市民バス「アルテピアッツァ行き」、乗車19~27分(1日に22往復)。200円

・JR美唄駅から約4.6キロ、徒歩1時間


(2018年10月14日追記。出品者の一人から、この集まりのテーマにジェンダーは入っていないので削除してほしいという要請がありましたので、女性の2字を削除しました)
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■第60回 学生美術全道展 (2018年10月6~9日、札幌)

2018年10月09日 16時14分57秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 全道規模の団体公募展が主催する学生向けの展覧会といえば、道展の「U21」と、全道展の「学生美術全道展」が知られている。
 後発の「U21」が30号を上限とし、たくさんの作品が市民ギャラリーに飾られるのに対し、学生美術全道展は高校生が100号あるいはそれ以上の大作をがんがん描いて出品するという大きな違いがある。
 ちなみに、いずれも高校生が主軸で、短大生や専門学校生、大学生の出品はあまり多くない。それらの学生は、大人と同じ展覧会で競い合えるからだろう。

 「撮影OK」という貼り紙があったので、写真を撮ってきた。

 ことしは、おといねっぷ美術工芸高(上川管内音威子府村)の生徒が6年ぶりに、最高賞の「全道美術協会賞・北海道美術館協力会賞」を受賞した。
 冒頭画像の3点は、いずれも同高校の生徒の作品で、中央が「私を規定しないで」(橋本幸奈さん、2年)。
 乱雑に机が置かれた教室とおぼしき部屋の窓際で、裸にカーテンをまとった少女がこちらに脚を投げ出して視線を向けている。
 こちらが射すくめられたように感じる目の強さ。自画像だろうか。裸婦だが、いやらしさは感じない。
 青春時代にしか描けない一枚だと思う。

 右は、第2席にあたる「北海道新聞社賞」を受けた同校3年吉田萌々子さん「嫉妬」。
 しゃがむ少女が地面の花に水鉄砲で水を噴射している。その近くには、チョウの羽根がばらばらに引き裂かれて散らばっている。
 物語性を感じさせる巧みな構成と題もさることながら、人物や背後の壁を描写する力の確かさが評価されたのだと思う。

 左は、優秀賞の同校3年越智柊太さん「顕」。
 ライオンや老人の顔などが一斉に右を向いているなかで、ひとり左側を向き、まっさらな空間に鉛筆を向けるひとりの少年。
 デッサン力の高さを見せつける鉛筆画だ。独立心の高さのようなものもうかがえる。

 画像はないが、この並びにあった同校3年櫻井風土さん「静穏」は、小川の流れる牧場で草を食む乳牛の群れを描いた風景画で、しっかりと地に足の着いた描写力が印象に残った。



 背後の、縦に長い2点組は「昼の森」(札幌デザイナー学院3年、長谷川真子さん)。奨励賞。
 ことし1月の卒展で見たような気がする…。

 手前は「天仰ぐ」(札幌厚別高3年、横山弥音さん)。
 彫刻では唯一の優秀賞。


 つぎの2点も、おといねっぷ美術工芸高の生徒さんの作品。
 個人的には賞を受けても良い出来だと感じた。

 左は「故郷」(3年村田遼太郎さん)。
 高校生とは思えない迫真の描写で、カワセミとおぼしき野鳥と、森とを描いている。

 右は「鶏群一鶴」(3年高山紀久恵さん)。
 まるで日本画のような構図で、金色に光る満月をバックに、岩の上に堂々と立つ雄鳥を描く。
 あまりに構図が決まっているので、筆者が知らないだけで、どこかに参考にした絵があるのではないかと思ってしまったほどだ。 





 右は「ニホン エモイ カワイイ」(北海高3年、結城凜さん)。奨励賞。
 北斎をパロディー化したような波が便器から登場したり、そこをさまざまな魚が泳いだり、巨大なカップヌードルがあったりして、ライトな感覚が楽しい。
 大画面を破綻なくまとめる力もある。


 右は、これまたおといねっぷ美術工芸高で「ニコラ・テスラと濡れた街」(2年松木七夕花)。
 ごわごわしたような独特のマチエールで、雨がふる夜の歓楽街を描いて印象に残る。
 賞に漏れたのは、右側の黒い部分が何なのかよくわからないのと、題の意味が不明なことが原因ではないかと思う。

 左端は「そこにある核心」(札幌デザイナー学院2年、神谷麻友さん)。
 オーカー系を主体とした抽象画。構図といい、色の配分といい、実に巧みな絵だと思う。
 問題はこのうまさが、いまどれほど求められているのだろうかということかもしれない。
 


 ユニークな絵画を出していると思うのに、審査を担当した全道展会員の好みではなかったのか、入賞を果たせなかったのが札幌啓成高。
 おもしろいと思うんだけどなあ。

 画像は3年本多優希さん「思考漏洩」。
 漫画的な人物画と、勢いのある筆遣いの抽象とが、無理なく一つの画面にまとめられている。
 むろん、もっとうまい構図になるだろうとか、いろいろ思うのだけど、こういう絵が出てくることじたい、2018年っぽいなあと感じるのだ。



 版画は昨年まで、北海高や札幌平岸高の銅版画が半数以上を占めていたので、モノクロームの壁面だったが、ことしは札幌旭丘勢が新たに参入し、コーナーが一気に華やかさを増した。

 左は北海道新聞社賞を受けた「水辺」(2年、中原遥さん)。
 水面に浮かぶカモの姿。

 そのとなりは、北海道芸術デザイン専門学校2年、広瀬菜乃花さん「逃げ出した羊」。
 魔女、がいこつ、羊という面々ながら、いかにも既成のゲームやイラストを模倣したという感じがあまりないのがおもしろい。



 最後の画像、右端は「焼かれた思いで」。
 もしかして、小中学校で受けた教育に大きなルサンチマンを抱いている人だったら困るので、あえて作者名は記さないでおく。
 じっさいにカンバスの右上は、焼け焦げたように穴があいている。なかなかにつらい感情のこもった絵である。


 毎年思うのだが、この会場にみなぎるエネルギーは、静かだがものすごいと思う。
 へたな大人の絵よりも、はるかに力がこもっているのだ。


2018年10月6日(土)~9日(火)午前10時~午後5時(最終日~午後4時半)
札幌市民ギャラリー(札幌市中央区南2東6)


□全道展の公式ページ http://www.zendouten.jp/gakusei/

第55回学生美術全道展 (2013)
第50回学生美術全道展
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■五十嵐威暢の世界 (2018年10月6日~11月25日、札幌)

2018年10月08日 21時32分39秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 10月5日は午後から外出。

 3時から、札幌芸術の森美術館で「五十嵐威暢たけのぶの世界」展オープニングがあった。
 いつものように真駒内駅までバスで行き、駅の近くから、館が用意する送迎バスに乗ったのだが、満席だった。ブリューゲル展のときは10人ぐらいしか乗っていなかったのに。


 開会式・テープカットは珍しいことに、ロビーではなく、美術館前の屋外で行われた。
 五十嵐さんが市に寄贈した「komorebi」が、美術館前の芝生に置かれることになったため、それが見える場所だというのと、人数がいつもよりも多くロビーでは収容しきれなかった―という事情があったと推察される。

 五十嵐さんは滝川生まれ。
 今回の展覧会は、初期のフリーのグラフィックデザイナー時代から近年の彫刻家としての仕事まで、150点余りで振り返っている。
「日本を代表する」「国際的な」というまくらことばはダテではなく、展示されている企業CIやロゴには、明治(MEIJI)、サミット(小売。北海道にはないが、東京にはたくさんある)、PARCO、サントリー、カルピスなどがあり、正直驚いてしまうし、ニューヨーク近代美術館のカレンダーなども手がけている。
 1980年代には米国の永住権を取得し、20年ほどの間ロサンゼルスにアトリエを構えていた。
 その後、東京などを経て、2015年に札幌に転居している。
 ただ、あちこちの国で展覧会を開いているが、日本の公立美術館ではこれが初めてという。

 中ほどのパートは、アルファベットなど文字を素材にしたポスターや立体などが目を引く。書やカリグラフィーとは異なるアプローチだ。
 また、プロダクトデザインの分野でも、電話機や食器などをつくり、シンプルな美を追求している。
 後半は、彫刻の大作を展示。既成のマッスがどう、ボリュームがどうという視点にこだわらなくても楽しく鑑賞できる作品ばかりだ。

 ここで見落としてほしくないのは、ひとつは会場の最後にある略年譜。
 五十嵐さんの業績を、写真をふんだんに使って見やすくまとめたすぐれものなのだが、末尾に、製作者の名前が小さく書いてあった。

 原研哉

 そりゃ見やすいはずだよね。日本を代表するデザイナーのひとりが作っているんだから。

 原さんは11月に五十嵐さんとの対談を美術館で行う予定です。

 もうひとつは、ロビー入り口右手の第2展示室。
 ここは、五十嵐さんが作ってきたパブリックアートの紹介コーナーで、写真のほか、模型もある。
 青森県立美術館の近くに巨大なパブリックアートもあるようで、模型からしてでかい。
 いままで何点を作ってきたか、ご本人も把握していないらしい。

 函館線の特急に乗っていると、滝川のあたりで、高くて細い塔のようなものが車窓から見えるのだが、これも五十嵐さんの作品だということがわかった。



 さて、この展覧会が楽しい理由について考えてみた。

 こんなことを書くと非常に語弊がありそうだが、五十嵐さんの作品はあまり考える必要がないのだ。
 もっと語弊がありそうなことを書くと、デザインというのは、一般の人が日常生活をスムーズに送るためのもので、あれこれ考えさせるようなややこしいものであってはならない。
 書道の作品は読めなくても美しければよいが、ポスターのデザインはいくら美しくても、読むために頭をひねらなくてはならないものでは意味がないのだ。

 「考えなくてもいい」デザイン、いいかえれば、直感的にわかるデザインを考案するためには、デザイナーは考え抜かなくてはいけないし、直感ではなく理屈で配置や色彩を決めていかなくてはならないのだろう。
 ただし、それを最後に決めるのは、センスと直感のような気もする。
 五十嵐さんの「komorebi」などは、楽しそうに、遊びと直感の連続で作られているようにも見える。
 そういうふうに見えた時点で、五十嵐さんの「勝ち」なのかもしれない。


2018年10月6日(土)~11月25日(日)、11月の月曜休み
札幌芸術の森美術館(札幌市南区芸術の森2)

一般 千円(800円)、高校・大学生700円(560円)、小・中学生400円(320円)
かっこ内は団体料金。65歳以上は800円(年齢証明するものが必要)
使用済みのチケット半券持参で、当日料金の半額で入館できる(招待券をのぞく、一回限り有効)。




・地下鉄南北線「真駒内駅」で、同駅バスターミナル2番乗り場始発の中央バス(どの路線でも可)に乗り継ぎ、「芸術の森入口」降車。約360メートル、徒歩5分

・芸術の森第1駐車場から約320メートル、徒歩4分。駐車料金は1日500円(回数券あり)
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■さっぽろアートビーンズ・サテライト「希望のかけら」美術展 (2018年9月21~27日、札幌)

2018年09月26日 16時35分13秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 札幌の美術展情報を発信し、年1度グループ展の企画も行っている「さっぽろアートビーンズ」が「希望のかけら」美術展を開いている。
 「サテライト」という語を冠しているので、夏のスカイホールとは違うシリーズということなのかもしれない。

 展示作家は五十音順で、井形弓子、いさち、小川豊、勝木郁子、小泉章子、日浅尚子、細川亜矢、間野桂子、村木昭彦の9氏。

 このうち村木さんは「カ・ケ・ラ」と題した壁掛け型の小品を、#1から#5まで5点展示した。
 シンプルなデザインで、神代ケヤキ、イチイ、セン、クルミといった木片を組み合わせて、壁掛けに仕立てている。伝統工芸の木の箱では道内を代表する作家だが、こういう現代的でライト感覚のものも手がけるのかーと、新鮮な印象を抱いた。
 細川亜矢さんの切り絵6点は、5月に、アリアンス・フランセーズ・ギャラリーで展示していたものだと思うが、ものすごい細密さにあらためて舌を巻く。ハープを奏でる天使と聞き惚れる白鳥を題材にした「Love」など、下の方に飾った白い羽根が本物の白鳥の羽根にしか見えない。


2018年9月21日(金) ~ 27日(木)午前10時~午後6時(最終日は午後2時まで)
NHKギャラリー(札幌市中央区大通西1)


□さっぽろアートビーンズ http://artbeans.shin-gen.jp/
□さっぽろアートビーンズ Facebook https://www.facebook.com/SapporoArtBeans/
□ツイッター @s_art_beans

第3回さっぽろアートビーンズ展―ブルガリア×花舞小枝 (2017年3月)
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■灰色と月 石神照美×経塚真代 二人展 (2018年9月11~16日、札幌)

2018年09月19日 22時09分17秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 東京・阿佐ケ谷と札幌にギャラリースペース(札幌は「CONTEXT-」S)を開くかたわら家のかたちをした陶のオブジェをつくる石神照美さんと、切なさをたたえた人形が多くの支持を集めている札幌の経塚真代けいづかまさ よ さんの2人展。

 これまで経塚さんは、美術館のグループショーはありますが、2人展は初めてとのこと。
 ギャラリー門馬のオーナー大井さんが提案したそうです。
 いきなりこのユニークな細長い空間を2人でつくるのも大変なので、事前に神戸で2人展を開いたとのこと。

 9月7日スタートのはずでしたが、搬入の6日に胆振東部地震が起き、開催期間が短くなりました。

 それぞれにお話をうかがったところ、石神さんも経塚さんも
「相手の世界を壊すのではないかと、心配でした」
という意味のことを言っていたのが、おもしろかったです。
 ふたを開けてみると、これはもう最初からコラボレーションする運命だったのではないか、と思うくらい、互いの作品が共鳴し合ってひとつの世界をつくっています。

 フォルムがどう、大きさがどう、という以前に、精神的なベースに共通する何ものかがあったのではないかと感じます。


 筆者が訪れたときも、会場は盛況でしたから、なにか矛盾したことを言うようですが、その精神的な基盤は、やはり、孤独を愛する心、なのではないかと思います。

 三角形のなかに座ったり、あるいは、石神さん作の階段や家に腰掛けたり、トンボのような羽をつけて立っていたり…。
 ありようはさまざまですが、経塚さんの人形たちは、どこか遠くを見つめています。

 その視線の先には、古い時代に打ち捨てられてしまった石神さんの三角屋根の家や建物が並ぶ、あの懐かしい街があるのではないでしょうか。 、
(石神さんのつくる小さい家にはLEDランプが仕込んであるものもありました。また、箸置きなどもありました)


 大きな地震があって、わたしたちのくらしは一時的に、日常からかけ離れたものになりました。
 しかし、日常が戻ってくるにつれ、心はやはり、どこか遠いところを夢見て、あてもなく旅しているような気もします。
 石神さんの陶の家も、経塚さんの人形たちも、そんなわたしたちの心がほっつき歩く遠い国の風景なのかもしれません。もしくは、小さな旅人とその旅先なのでしょうか。



2018年9月11日(火)~16日(日)午前11時~午後6時
ギャラリー門馬ANNEX(札幌市中央区旭ケ丘2)


□CONTEXT-S http://www.geocities.jp/context_s/

□サイト http://masayokeizuka.com/
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関連記事へのリンク
石神照美展 刻の景(2017)
閑 土―紙 石神照美(土)・馬渕寛子(紙) (2015)※画像のみ


経塚真代個展 さようならは蜜柑のひとりごと(2018年4月)
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■経塚真代作品展「本の窓から消えていく」

経塚真代個展 □△○そのカタチにはそれぞれのキヲクがある (2016、写真多数)
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■東京富士美術館開館35周年秘蔵展  日本の美・百花繚乱 (2018年7月7日~9月2日、札幌)

2018年09月05日 22時58分51秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 ことし5月8日の朝日新聞夕刊で「プラド美術館展」(国立西洋美術館)の展覧会評を、東大の三浦篤教授は次のように書き出している。

 「プラド美術館展」のように一館から作品を借りる場合、時代、地域、画家、様式を無難にアレンジした「スペイン絵画名作展」のようなつくりから、いかに脱するかが勝負の分かれ目となる。ディエゴ・ベラスケス(1599~1660)を機軸に据え、作品を主題別に構成するという、明確なコンセプトを打ち出した本展は意欲的な試みである。


 読み返すたびに、ため息が出る。
 ことし、道立近代美術館の企画展室で開かれている展覧会は、まさにここでいわれている無難なつくりでしかないからだ。
 しかも「棟方志功展」に続いて、図録もない。

 筆者に限らず、創価学会員でもない限り、東京富士美術館にわざわざ足を運ぶ北海道民はあまりいないだろう。
 その意味では、ありがたい機会といえるのかもしれない。
 ふだんあまり日本美術を鑑賞することのない道民にとっては、それなりに貴重な作品が並んでいるということも可能だと思う。
 粗悪な作品が来ているとまではいうつもりはない。
 駕籠など珍しいものも展示されていた。
 ただし、たとえばことし東京の国立博物館で開かれた特別展『仁和寺と御室派のみほとけ–天平と真言密教の名宝–』に国宝や重要文化財が何点展示されていただろう、などと思うと、はっきりいって、この展覧会は道民にとってありがたいというにすぎず、全国に胸を張って「こういう美術展です」などと言えるしろものとはいえないだろう。
 伊藤若冲にしても、宮内庁三の丸尚蔵館あたりにある作品に比べたら、とても彼の本質がわかるような名品とは言いがたい。
 「東海道五十三次」にしても「富岳三十六景」にしても、これより保管状態の良い刷りを所蔵している美術館は国内にいくつかあるだろうと思う。

 北海道で開かれている企画展の半数以上は、北海道新聞社かSTVのいずれかの主催である。
 その両者が主催に名を連ねて、このありさまというのは、どう言えばいいのか。
 学会関係の入場者が見込めて数字が計算できるから、それでいいのか。
 あまり両方をdisれば、もう美術展をやってくれなくなってしまうかもしれず、それはそれで困るけれど。

 でも、2018年になって、まだこんな昭和な展覧会をやっているのかと、嘆息せざるを得ない。
 外国や本州の美術館やコレクションからまとめて作品を運んで陳列すれば、それで展覧会になると主催者は考えているのだろう。
 はっきり言って、道民は(あるいは北海道の美術ファンは)なめられている。 



2018年7月7日(土)~8月5日(日)=前期、8月9日(木)~9月2日(日)=後期。午前9時半~午後5時。月曜休み(祝日は開館し翌火曜休み)
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17)

一般1300(1100)円、高大生700(600)円、中学生500(400)円、小学生以下無料(要保護者同伴)
前・後期セット前売り券1800円
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■第47回 札幌文化団体協議会フェスティバル(2018年8月17~19日、札幌)

2018年08月19日 09時19分27秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 恥ずかしながらこの展覧会の存在をよく知らなかった。
 地域の趣味の愛好者が出品しているのだと、漠然と思っていた。
 会場に足を運んでみると、絵画、いけばな、書、陶芸、俳句や川柳の色紙、切り絵などの作品が同じ空間に並び、特にテーマなども設定されず、展覧会としての性格づけがはっきりしないものにに感じられるのは確かだ。しかし、その中にけっこうな大御所の作品があり、びっくりしたのだ。

 札幌文化団体連絡協議会の会長を2009年から務め、国際交流にも取り組んできた阿部典英さんの出品は、予想の範囲内だろう。「疾風に勁草を知る」は、壁かけと立体の2点組。竹や紙などの軽い素材を用い、冬の厳しく冷たい風に耐える笹や草などを表現している。
 シンプルながら、ベテランらしい人生観の込められた、味わいある作品だと思った。
 「疾風に勁草けいそうを知る」は後漢書にある成句で、大辞泉によると「激しい風が吹いてはじめて丈夫な草が見分けられる。苦難にあってはじめて、その人の節操の堅さや意志の強さがわかるということ」。

 奥の壁面では、国内を代表する書家のひとりである中野北溟さんの「愛 人間愛」という漢字。
 近年の北溟ほくめいさんは、先月の中野北溟教室展などでも、肩の力の抜けた愛らしい近代詩文を出しているが、久しぶりにパワフルな大作を見た。

 その両脇を固めるのが、かなの阿部和加子さんと、漢字の小原道城さんという、これまた大御所。
 小原さんは「慕情」と書き、阿部さんは「たらちねの母が…」で始まる正岡子規の短歌を書いている。阿部さんは左側に字釈を兼ねた平易な書風で、右側にいつもの力強い運筆で、同じ歌を書いているのがおもしろい。


 「道の会」名義で5人が出品している。

 ひとりは谷口明志さん「空間について」=冒頭画像=。
 針金と、その影も取り込み、「線」とはなにかをあらためて考え直すインスタレーションに取り組んでいるが、新しい局面に挑んでいる。
 ぱっと見ると、どれが影で、どれが実際に書いた線なのかが分からない。


 中島義博さんは「ミンジュさん」(左)と「甲殻機動ロブスター」「甲殻機動蟹」「ミスタースコット」(右の列、上から)の4点。
 甲殻類までキャラクターのようにかわいくしてしまう中島さん。

 具象絵画では全国区の存在になった西田陽二さんは「別れの手紙」。
 M60号ぐらいはありそうな大きな作品で、美女を描いている。壁の前に女性を配した絵が多い西田さんには珍しく、後ろが窓になって遠くの建物が見えている。女性の着ている白いドレスや、背後のレースのカーテンの模様は、白い絵の具が盛り上がって置かれ、画面に立体感をもたらしている。

 松井茂樹さん「森の祭」は、絵の具などを使わず、木片を組み合わせて表現した抽象画のような3点。
 内藤克人さんは、灯台などを躍動的に描いた「風車」など版画を4点。

 それにしても「道の会」という団体は初めて聞いた。なかなか予想外な5人の顔ぶれである。

 このほか、先日までギャラリーレタラで個展を終えたばかりの吉田茂さんが、その際の出品作「蜘蛛の砦」を出品。
 北海道陶芸協会からも下沢敏也さん、大石俊久さんら9人が出している。


 個々の作は見ごたえがある展覧会だった。 


2018年8月17日(金)~19日(日)午前10時~午後6時(最終日~5時)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)

□札幌文化団体協議会 http://sapporobundankyo.web.fc2.com/

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・地下鉄東西線「バスセンター前駅」から約200メートル、徒歩3分

・ジェイアール北海道バス、中央バス「サッポロファクトリー前」から約520メートル、徒歩7分(札幌駅バスターミナル、時計台前などから現金のみ100円)

・中央バス「豊平橋」から約860メートル、徒歩11分
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■いのちのかたち…かもしれない 2018 (8月7~19日、札幌)

2018年08月16日 20時28分14秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 札幌圏に住む中堅・ベテランの女性5人による、2度目のグループ展。企画は詩人・美術評論家の柴橋伴夫さん。

 昨年1月の第1回は、瀬川葉子、高橋佳乃子、高橋靖子、日野間尋子、加藤宏子の5氏という顔ぶれだった。
 今回、高橋さんが抜け、彫刻の伊藤幸子さんが加わって、絵画3・彫刻2という構成になった。 

 会場中央に置かれていたのは、伊藤さんの「波に溺れて」。
 石膏に着彩した子ども、あるいは母子の像を作る伊藤さんらしい作品。
 ただし、実際には、おぼれる人というよりも、波に乗る人に見えますが…。

 会場のギャラリー・エッセのブログに、出品者5人のことばが掲載されているので、以下、引用していきます。

想いのかたちをつくりたいと思う。
みえない想いもかたちにしてみたい。
潜めた願いもやさしい風の囁きに降り注ぐ光の眼差しも
静かな眠りをさそう波の呼吸もかたちにしてみたい。
私のつくったかたちにそれぞれに想いをかさねて観てほしい。


 伊藤さんは他に、ブロンズの首の小品「種」「粒」も出品しています。
 

 高橋さんは抽象画家。
 幾何学的な作品ですが、筆を使わず、支持体を傾けて絵の具を流し、色をつけています。

 右から
「バイオレットグレー・2018」
「ウオーターブルー・2018」
「ローズピンクとローズバイオレット・2018」。
 小品は「ローズバイオレット・2018」。

 高橋さんは岩見沢在住。
 生まれは女満別町(現オホーツク管内大空町)で、上渚滑村(現紋別市上渚滑)で育ちました。
 上渚滑は、道内の他の多くの町村と同様、駅があって、農協や役場や学校が、碁盤の目のような市街地に配されていたそうで、いまも碁盤の目の形状をしたマチのほうが落ち着くのだそうです。
 いずれの作品も、そうした高橋さんの気持ちが反映されているようです。

キャンパスを傾斜させ、絵具を流す。
流れに沿って表情を変える線。
作為的にならないよう、タイミングを計りながら繰り返す。
繰り返すことで、いつしか混沌としていたものが単純化され、
遠い過去の記憶が、線と色彩とフォルムと繋がり可視化される。
人は古代からそれぞれの思いの中で、美術と関わり自分を知ることで他者と出会い豊かさを求めてきたと伝えられる。
私が今ここにいつ不思議と、かけがえのない日々を重ねキャンバスに気持ちを託し深めていきたい。




 右は、第2回本郷新記念札幌彫刻賞を受賞するなど活躍めざましい加藤宏子さんの「improvisation XXV」。
 手漉きの紙を使った新作の彫刻。
 波打つような形状をしており、これが台座なしで自立しているというのがすばらしいと思う。


 左は日野間さんの絵画作品。
 1点ずつではなく、まとめて「Works 2018 diary」という題がついている。

 なお、会場入り口にも日野間さんの小品2点がかけられ、題がなかったことから、おそらく出品作まとめてこの「Works 2018 diary」ということなのだろう。
 乾いたストロークがひそかに全面を走る抽象画は、遠い国の霧がたちこめる風景のような深さをたたえているようだ。 

 日野間さんは昨年は、自身がかかわっている障碍者支援施設の人たちが描いた絵の映像を出品していたが、今年は自分の絵に回帰している。

どことなく軽快なイメージの楮(こうぞ)作品ではあるが、制作過程における私の行為を文字に表すと、
「彫る」「削る」「はつる」「穿つ」「切る」
「分ける」「つぶす」「えぐる」「刻む」「溝を入れる」
「とる」「平す」…という動詞が並ぶ。
どちらかというと荒っぽい。
圧倒的に長い時間をこの行為に費やし、そうしてできた作品を私は彫刻と呼ぶ。
表したいイメージがかたちを成すよう、ああでもない、こうでもないといつまでももがいている。


その時の気持ちをのせるように線を描いている。
伸びる方向や長さ、強い弱いは、あるがままに委ねていたいと思う。
画面に拡がっていく線の重なりに、自身の息を聴き、
他者とのつながりや自然とのかかわりを味わっている。

気持ちと表現が、離れていないように…。

初夏。
庭で、映える植物の存在に、行き交う光と風の透明感を表現したい。




 瀬川さんの「始まり」は、青の正方形が12点、壁面にランダムに配置されている。

 ちぎった紙の厚みや触感が、どこか生々しさをもって、時の流れを象徴しているかのようだ。

 瀬川さんは「青のかけら」という小品も出品している。

ボール紙を破いていく。
ちぎれた紙を重ねて貼り合わせた上に彩色する。
その時にできる切れ端の線や、厚みの中にある断層、傷、
ボール紙の黒いコーティングと絵の具が反応するかのように、
あたらしく浮かび上がるかたちや線や明かりのようなもの、
黒色の中からうごめくように、
何かが生まれる始まりの時。
その中に微かな希望を見出したい。
手にとれるサイズになった。
タイトルは「始まり」。


 5人とも、とりたてて奇抜な手法を用いているわけではないのですが、余韻を感じさせ、見る側の思いを引き寄せる作品が多いように思いました。


2018年8月7日(火)~19日(日)午前11時~午後6時(最終日~4時)、月曜休み
GALLERY ESSE(札幌市北区北9西3 ル・ノール北9条)

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加藤宏子展(2008)

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加藤宏子彫刻展(2004)

北海道立体表現展(2003)
加藤宏子彫刻展(2003)
02→03展
リレーション夕張2002




□GALLERY HIROKO - From Works of HIROKO HINOMA - http://www.hinoma.com/hiroko/

【告知】札幌ライラック病院 びょういんあーとぷろじぇくと「明日は晴れ」展 (2012)

「映しあう/照らしあう」 (2008年)
日野間尋子展(2008年)

日野間尋子展(07年)

Pacific Rim Art Now 2003 プロローグ展(画像なし)






・地下鉄南北線「北12条駅」から約400メートル、徒歩5分
・同「さっぽろ駅」から約610メートル、徒歩8分

・JR札幌駅北口の出口から約340メートル、徒歩5分

※モスバーガーの北側の並びです
※「石の蔵ぎゃらりぃはやし」から約370メートル、徒歩5分
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