小さなキャンバスやドローイングを組み合わせる展示方法で、非常に精力的な制作・発表活動にとりくんでいる齋藤周さんと、現代美術的なパフォーマンスと絵画双方のフィールドを自在に行き来し、昨年末には台湾でアーティスト・イン・レジデンスを終えたばかりの久野志乃さん。
札幌在住の若手画家による2人展です。
展覧会タイトルは「かるいからだ」。
2人とも個々の絵に題はついていません。
画風に近いものがあるためか、2人の絵が相互に浸透しあい、まるで個展のような雰囲気すら感じられます。
齋藤さんは、昨年11月に京都で、ことし1月上・中旬に東京で個展をひらいたほか、札幌でも昨年11月には「500m美術館」にも大規模な平面インスタレーションを発表し、春にはライブドローイングを展開するなど、非常に意欲的です。
このあと、2-3月には札幌・ポルトギャラリーで、ベテラン抽象画家の後藤和子さんと会期をあわせて個展をひらくそうです。
もっとも、ご本人はひょうひょうとしていますが…。
今回は、500m美術館のときなどにくらべると、キャンバスの密度が薄めというか、キャンバスとキャンバスの間隔がやや離れています。
その代わりといってはなんですが、これまで、さわやかに少女の姿態を描いてきたドローイングの画風が、変化しています。
ご本人のことばをふまえると、フェティシズム的というか、のぞき見的なところが感じられます。
「最初のころの個展に戻ったというか…。あのころ(1999年ごろ)は裸婦ばっかり描いてたんです」
ひとつひとつの絵が「濃く」なったので、キャンバスを減らして密度を薄くしたとのことでした。
ちなみに、今回は38枚がばらばらに配置されています。紙に描かれたドローイングは、出品されていません。
一方、久野さんも、「記憶」をテーマとしたパフォーマンスに取り組む一方で、昨秋の「絵画の場合」展に大作を何点も並べるなど、活発に活動しています。
レジデンス先の台湾のスタジオがとても広く、絵をかきたくなって現地でロールキャンバスを購入し、それをじかに壁に貼って描いていたとのこと。帰国後に枠に貼るつもりでしたが「このままでもいい」と思い直し、キャンバスをそのまま展覧会場の壁に貼るスタイルの展示になりました。
この上の画像は、ビルの屋上をモティーフにした1枚。
ビルの下側は省略されていますが、それがかえって作品に快い浮遊感をあたえています。
下半身しか登場しない少女。あるいは、木の枝にぶらさがってあそぶ少女。
久野さんによれば「自画像ではない」とのことですが、どこか、過去の作家自身がだぶっているような印象を受けます。
暖色が多くなり、見違えるほど明るくなったことは、まちがいないところです。
モティーフもあいまいさを増しています。久野さんの絵は、大きく変化している途上といえるのかもしれません。
アップが、会期中にまにあわず、どうもすいません。
08年1月19日(土)-27日(日)10:00-18:00、火曜休み
茶廊法邑(東区本町1の2)
□artscapeの、昨年11月に京都でひらいた個展のレビュー http://www.dnp.co.jp/artscape/exhibition/review/071201_04.html
□コミュニティFM「さっぽろ村ラジオ」で齋藤さんを紹介したエントリ http://blog.livedoor.jp/obi813/archives/51188952.html(06年11月)
■PLUS One Groove(07年8月)
■齋藤周「3月の次から」(07年3月)
■06年6月の個展
■06年2月の個展
■絵画の場合2005アーティストトーク
■札幌の美術2004(画像なし)
■個展「横移動の座標軸」(03年)
■個展「細かい情感のイメージ」(03年)
■個展「NEXT STEP」(02年、画像なし)
■個展「多面に存在していくこと」(02年、画像なし)
■01年の個展(画像なし)
■久野志乃個展(05年)
□久野さんの台湾での活動(エスエアブログ) http://sair.exblog.jp/6953338/