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書評・特攻の真意・大西瀧治郎和平へのメッセージ・神立尚紀・文藝春秋

2012-06-10 13:17:00 | 大東亜戦争

 特攻の凄惨な実相を最もよく書いた本の1冊であろう。だから何度か読むのを諦めかけた。大西の最後についても最も詳しく書かれている。読むのに辛い多くの事が書かれているので、個別の内容には触れない。大西の真意についても触れない。

 ただ1箇所興味あるデータがある。ある調査では、特攻機の命中率はフィリピン戦で26.08%、沖縄戦で14.7%であったということである。通常の爆撃でも米艦船の防空網を突破しても実際に爆弾が命中する確率は低い、ということに比べれば驚異的である。

 もし通常の攻撃で日本が米艦船を効果的に攻撃しようとするならば、空母に防空用の戦闘機だけを搭載し、防空網を強化した上で戦艦の砲撃によって攻撃を実施すべきであったろう。戦艦の砲弾の命中率は5%にも満たないが、多数の砲弾を浴びせることができる。それでも米艦隊の防空網は大戦末期には鉄壁と言っていい状態だったのに比べ、日本艦隊のそれは脆弱だったから、極めて困難だっただろう。果たして何割の戦艦が効果的な射撃ができる2万メートル以内に接近できただろうか。

珊瑚海海戦の時点ですら米艦船の防空網は効果的であった。経験から攻撃隊の搭乗員はそれを知りぬいていたにも関わらず、指揮官たちはその戦訓を学ぼうとしなかった。まして効果が低く、被害時の人的損失が膨大な陸攻による艦船雷爆撃を漫然と続けていた指揮官たちは論外である。

 


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