「ごろつき船」大沸次郎 小学館 2010年(1928年大阪毎日新聞で連載)
読みごたえのある昭和の名作を集めた、北上次郎選「昭和エンターテイメント叢書」が今年三月から出版されるようになった。第一弾がこれ、第二弾は獅子文六の「大番」第三弾は角田喜久雄の「半九郎闇日記」第四弾が藤原審爾の「昭和水滸伝」そして今月に西村寿行の「捜神鬼」が出る。
「大番」については苦い思い出が。子供の頃、無理やり父親に読まされそうになってから拒絶していたのだ。(いまだに読んでいない。子供に読書を強制するにはやめよう。)「昭和水滸伝」は何年か前に読んだ。腰が抜けるほど面白かった(もちろん北上次郎さんの推薦文を読んで。)それら以外は未読。本作は、
江戸の中期頃、蝦夷の松前藩の家老蠣崎主殿と商人赤崎屋吾兵衛が結託して別の無実の商人八幡屋を陥れようとする。八幡屋は襲撃され、その過程で殺されそうになった同心三木原伊織は危うく難を逃れる。なぜか関わってしまった泥棒の佐野屋惣吉、江戸から失踪していた土屋主水正、八幡屋の遺児、行方が分からなくなった伊織の妻・・・善と悪の対立は・・・
いやいやいや。凄い。こりゃほんと凄い。縦横無尽に翻弄されてしまった。悪い奴らをやっつける勧善懲悪物語である。しかし蝦夷地、津軽、江戸を遥かに越えた地形的な広がりと、時間的な広がり、実に読ませる。壮大な復讐である。
昭和三年というかなり昔の作品。にも関わらず何の違和感も感じない。正義とか悪とか、義理とか人情という、本作の真ん中をどーんと流れる太い川は今も我らの岸を流れているようだ。
分厚くて読ませる物語にどっぷり浸かりたい時オススメである。
大仏次郎(大沸?)記念館で撮った写真↓

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