頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『ワイマールの落日 ヒトラーが登場するまで1918-1934』加瀬俊一

2014-02-03 | books
最近ちょっと気になるのがワイマール共和国。ここでレビューしてない本もちらほら読んでいる。

本外交官でヒトラーに会ったことのある著者が書いたのが本書。文庫なので軽い読み物ぐらいに思っていたら、結構詳しい話が多く、楽しませてもらった。(どうでもいい話なんだけれど、逢坂剛の「さらばスペインの日」で、作者はヒトラーと握手をしたことのある人と握手をしたから、間接的にヒトラーと握手したことになると書いていた。なるほど)

本書は、ドイツ帝国の崩壊からヒトラーが台頭し共和国が終焉するまでを描く。登場人物多数。襲うインフレ、社会的不安の増大。なぜナチスが、なぜヒトラーが台頭するようになったのか、なんだかすごく分かったような気がする。

1933年に作られた洒落があります。知的である、誠実である、ナチス的である、という三つの性質があります。そのうち常に二つだけが一緒になれて、三つとも一緒ということは決してありません。知的で誠実であれば、ナチスじゃない。知的でナチス的であれば、誠実でない。誠実でナチス的であれば、知的でなく脳が弱いというわけです。(カール・ヤスパース)

ふむふむ。

ヒンデンブルクに関しては、単純な人間だという印象を持っていたけれど、会ったことのある著者によると、打算家だと思ったとのこと。そうだったのかなー。結果から言えば、打算に失敗した打算家だろうか。

切れ者の宰相ビスマルクに対して、すっとこどっこいの印象の強い皇帝ウィルヘルム2世のエピソード。幼少の時に風邪にかかり侍医に「小さな病気なので心配ない」と言われたら、「私に関係あることは全て大きいはずである」と叱ったとか。笑ってしまった。

ナチスの本拠となったバイエルンは、伝統的にカトリック勢力が強大だった。にも拘らず、ナチスに支配されてしまったのは、彼らの反共意識が強く、またナチスの愛国主義的宣伝に乗ぜられたためである。根本的原因は、まさに、これだろう。とすると、信仰心の薄い日本はどうかと思って、心の寒さを覚えるのである。

ナチス台頭の直前や、ワイマール共和国時代について読めば読むほど今の日本と似てるなーと思う。アベ首相が、いや幹事長がチョビ髭を生やせば…

今日の一曲

ドイツ… ワイマール… 思いつかない。苦し紛れに、ワグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」で。



マイスタージンガーって、何かマジンガー的なものだとずっと思っていた。マジンガーZのような、魔神とか、伝説の巨人とか。マイスタージンガーはそういう意味で、そこからマジンガーZという言葉を思いついたんだろうと。しかし調べてみると、「職人歌手」とか「親方歌手」というようなよく分からない訳語が出てくる。ワグナーが酒場で、職人が歌っているのを見て思いついたんだとか。むむむ?マイスターって職人て意味だったよな。ジンガーってシンガーのことか。マイスタージンガーは職人シンガーって意味だったのか。うーむ。そんなこと知らないのは私ぐらいなのだろうかなー。

では、また。

「ワイマールの落日」加瀬俊一 絶版らしい。
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