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『地層捜査』佐々木譲

2012-04-01 | books

「地層捜査」佐々木譲 文芸春秋社 2012年 (初出オール讀物2010年10月号~2011年4月号)

15年前に起こった四谷のアパート経営者の老女殺害事件。事件に関わったと噂されたという政治家が警察に真犯人を挙げろと圧力をかける。そして始まったたった二人の再捜査。バブルも終わろうかという時代、地上げ、暴力団、四谷の芸者…

うーむ。読んでいる途中では、2サスの原作っぽい感じの「秀作」(=傑作というほどでないけれど、駄作というほどでもない作品)だとしかレビューには書けないなと思っていた。

読みやすいことは読みやすいけどなーと思っていたら、3/4を過ぎた頃からちょっと面白くなってくる。所謂「読者に対して、作者によるフェアーな闘い」を挑んでいるのではないので、(注意深く読んだ読者が)途中で真犯人が分かるようになっているわけじゃない。本格ミステリじゃなけど、それでOK。意外な展開が巧い。これは流石。

四谷というかなり狭い土地で繰り広げられる超ローカルミステリと呼んでおこう。秀作と傑作の間くらいに位置するんだろうと思う。(佐々木譲の真骨頂は北海道警察シリーズとか警官という生き方を問う作品にあると思っている。本作は他の作家でも書けるように思うという意味で、傑作とは違うと思う。傑作=ただ面白いだけじゃいけないと思うのだけどどうだろう)

真の男は、ただイケメンなだけじゃいけないと思うのだけどどうだろう?

では、また。



地層捜査
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