頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『大人ための国語ゼミ』野矢茂樹

2018-05-19 | books
ねえねえ、あの人ってさー、雑談のときはいいけどさー、肝心の話になると、何が言いたいのかよく分からないわよねー、なんて陰で言われているあなた。陰で言われてるなら自分で分かるわけないだろーとツッコマないで。そんなあなたにオススメの本を読んだわよ。

以上、性別変更終了。生活や仕事で必要な国語を、豊富な例題とともに学ぶ。

例えば、高校生に以下のような説明をした場合、何がいけないか?

ふつうの飯盒は4合炊きだから、標準的には4人分が炊けます。まず米をとぎます。もちろん無洗米なら、とぐ必要はありません。それに米と同量の水を加えてしばらくそのままおきます。それからかまどにかけて炊き始めます。だいじなのは火加減で、昔から言われている「はじめチョロチョロ中パッパ」がコツです。25分ほどして炊けてきたら、火からおろしてしばらく蒸らして、できあがりです。

無洗米じゃなくて、どうしてコシヒカリを使わないのだということが問題なのだ、ということではなく。あるいはこんな問題。

日本語はかなりできるが日本のことはあまり知らない外国人について「お祭り」について尋ねられた場合の回答。何が説明不足だろうか?

「お祭り」とひと口に言ってもいろいろなものがありますが、私の町のお祭りは秋に神社で行われるものです。たぶん、秋の収穫に感謝するという意味があるのだと思います。参道や境内には多くの屋台が並び、大勢の人が集まってとてもにぎやかになります。そして一番盛り上がるのはなんといってもお神輿です。お神輿をかついで、勇ましく声を掛け合いながら町中を歩くんです。これは、日本の各地で行われている、ごくふつうのお祭りの形です。

どこがいけないのか、詳しく考えさせて、教えてくれるなかなかない本。(自分のことは棚に上げさせてもらうと)大人でも、怪しい日本語を駆使したり、何が言いたいのか分からないことを言ったり買いたいする人は少なくない。

著者は、国語力=「相手のことを考える」だと言う。なるほど。

卑近な例で恐縮だが、ある知り合いは、話がつまらなく、抽象的だ。他の人にとっては面白いのかも知れないけれど、私にとっては退屈。話の流れに迎合するのは得意だけれど、自分で話を能動的に作り出すことができない。また、さらに質問力にも欠けている。先日、ある質問をされたので答えた。その回答に対して何か尋ねて来るのかと思ったら来ない。ならば納得したのだと思ったら、後でまた同じ質問をされ、結局1日で同じ質問を3回もされて呆れた。表面的に納得しているようでいて実は納得していないのだ。しかしその先の質問ができない。話がつまらないことと質問できないことの関係は特に感じなかったのだけれど、

ただ受け身で読んでいるだけでは質問は思いつかない。文章を読みながら、自分を活性化させること。想像力と論理力をフルに働かせて、いきいきとした頭で文章に向かう。そうすると聞きたいことがあれこれ出てくるはずである。逆に、質問を考えようとすることによって読み方が能動的になり、活性化してくる。ここに、質問の練習をすることの第一のポイントがある。質問の練習をすることで、文章を読むときの(あるいは話を聞くときの)想像力と論理力が鍛えられるのである。

なるほど。なるほど。上記の輩は、自称読書家だそうだけれど、受動的な読書を(自分の事棚上げアゲイン)しているのかも知れない。いや、自分のことを棚に上げるとなんでも言えてしまう。

以上、想定以上に(必要以上に?)辛口になってしまった。失礼。普段、やっつけ仕事のおざなりなレビューばかりなので、たまにはと思い冗長な文を書いてしまった。「国語力」を向上させたい人、論理的な文章を書きたい人、ちゃんと反論したい人などにすごくオススメの本だった。(これ読んで国語力が上がったのなら、なんでこんな駄文を書くのだとは言わないで)

大人のための国語ゼミ

今日の一曲

Estas Tonneで、"The Song of the Golden Dragon"



では、また。
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