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『夜に生きる』デニス・ルヘイン

2013-12-10 | books
1926年アメリカは禁酒法の時代で糖蜜を密輸する者たち、酒を密造する者たち、そしてそれを取り仕切るマフィアたちが跋扈していた。ボストン市警警視正トマス・コグリンの息子は三人。長男で刑事だったエイデンは妻と共に行方不明(前著「運命の日」にたぶん書いてあったはず)、次男コナーは州最年少の地方検事補だったのに、失明してからは用務員をしている。三男のジョーはギャングのティム・ヒッキーの配下にいる。ジョーが惚れた女はエマ。ヒッキーのライバルギャング、アルバート・ホワイトの情婦だ。ディオンとパオロの兄弟とともにアルバートのカジノで強盗し、銀行強盗までする。逃亡の際に警官が死に、警官の死には直接関わってないにもかかわらず、ジョーは刑務所へ。そこで出会ったのはギャングの大ボス、トマソ・ペスカトーレ。ペスカトーレの配下に入り、フロリダのタンパへと。ジョーの流転の人生は…

理由があって、メモを取りながら読んだら、構成の巧さが後でよく分かった。ストーリー展開の意外さをこの手の小説には求めがちな私は、途中から少しダレてしまったのだが、気持ちを、「ハードボイルド」と「歴史的な事実が巧妙に取り込まれている物語」だとみなして読むようにしてみたら、急に面白く感じられるようになった。いかに、私にはしっかりとした軸があるわけではなく、風見鶏のようにふらふらとあっち向きこっち向きしているかが分かる。南無南無

禁酒法の時代と言えば、大物マフィア、ラッキー・ルチアーノ(なんと本書に登場する)や、アル・カポネ(映画「アンタッチャブル」「暗黒街の顔役」「スカーフェイス」のモデル)、バグジー・シーゲル(映画「バグジー」のモデル)など冒険小説やノワール小説&映画のネタになる事件や人物が多い。ジャック・ヒギンズの「ウインザー公掠奪」には、刑務所にいるアル・カポネが出て来たような記憶があるのだけれど、違うかも知れない。「ルチアノの幸運」はナチスドイツ攻略のためシチリア上陸をルチアーノに助けてもらうというストーリーだった。どっちも絶版のようだ。残念)

そんな小説にとっては光り輝く時代の、裏歴史のようなものがこの小説では描かれる。

ハヤカワポケミスはコンパクトで持ち運びにはとてもよいんだけれど、字が小さく上下二段組みなので読んでも読んでも進まない感じがする。気づけば一週間ぐらい読んでいるような。という話を初対面の本好きの人に言ったら、「そこがいいんじゃないですか」と言われた。ま、それもそうか。

今日の一曲

本書の原題はLive "By" Night 夜に生きるではないし、夜まで生きるでもない。byは「~までに」と解釈すると、夜までに生きておけという意味だろうか。あるいは昼間ではなく夜のルールに生きるジョーたちに対して、夜のルールに「よって」生きる者たちという意味で使っているのだろうか。その辺は曖昧にしつつ、KrewellaというグループのLive For The Nightという曲で。



では、また。

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