頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『海賊とよばれた男』百田尚樹

2012-08-15 | books
「海賊とよばれた男」(上下)百田尚樹 講談社 2012年

戦前業界で恐れられた、石油を扱う国岡商店。戦争が終わり、他の石油会社、官僚の妨害にあって商売がうまくいかない。しかし店主国岡鐵造の不屈の意志によって一つ一つ障害を取り除いてゆく。明治から戦後、石油にこだわり続けた男の一代記。

うーむ。基本的にこういう本は読まない。立志伝中の人を褒めちぎったような本は。モデルは1885年生まれの出光興産の創始者出光佐三だそうだ。成功した人の伝記は過去にさんざ読んで食傷気味だし、他人の成功を肥やしに出来るほどもう若くない。同様にビジネス書も自己啓発書も読まない。

さて、本書は「ボックス!」「永遠の0」の作者だからつい魔がさしてしまった。最初は戦後すぐの引き揚げから始まるのだが、その戦後すぐの臭いがちょっといやだなと思った。しかししかしいつに間にか引き込まれてしまっていた。熱い。こんなにスゴイ男たちがいたのか。国岡たち+心ある支援者 VS 官僚+石油会社 という正義VS悪の使い古された構図が、無理なくハマる。どこまでが事実でどこからかがフィクションだか分からない。(分かる必要はなかろう。)誇張と拡大解釈はあるにしても、百田のストーリーテリングの腕は高いところにある。

一旦、戦後何年かの描写が終わった後、上巻の後半は、鐵造の若いころの話になる。昔話が長いのかー、読むのめんどーだなと思っていたら、また引き込まれてしまった。百田恐るべし。

ネタバレが問題になるような本ではないけれど、全体を説明せずに一部だけ説明しよう。

例えば、下巻の第三章はこんな感じ。

国岡は誰もがやりたがらないことをやる。自分の利益のためではなく。イランが石油を国有化したため英国のアングロ・ペルシャが締め出された。イランの石油は自分たちのものだから他の石油会社がイランから石油を持ち出そうとすれが、英国は軍が出撃すると脅す。どの国も躊躇する。国岡も躊躇するがそれは、契約によって英国のものになっているのだからそれを買い取るのは盗人だからだ。しかし調べてみると、英国は法外に安い価格で権利を買っており、イランをずっと食い物してきたことが分かり、国岡は立ち上がった。メジャーの妨害があり、タンカーを借りることも出来ない。国岡の虎の子、日章丸を動かすことにした。英国の攻撃はあるのか?決死の航海は!

おお!書いていて、血が沸騰しそうだ。

いわゆる「ビジネスマン」というおじさんたちに読ませておくのはもったいない。女性たち、若者たちよ、この本を読め。そして立ち上がれ。

立ち上がって何をするのはちょっと分からないが。

では、また。



海賊とよばれた男 上海賊とよばれた男 下
コメント (2)    この記事についてブログを書く
« 『白ゆき姫殺人事件』湊かなえ | トップ | ミチだと思ってた »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
今よんでます (R)
2013-02-01 09:31:49
年末、父に読むよう勧められたもののずっと机の上に放置していた本でした。
アルジェリアの事件の後に思い出してネットで検索。こちらへサイトがヒットしておじゃましました
なんか良さそうなので読み始めましたが・・・
本当に引き込まれますねっ
すごくおもしろいです

せっかく“女性たち、若者たちよ、この本を読め。そして立ち上がれ”
とすすめてくださってるので(笑)
友だちにも話してみようかな
返信する
こんばんは (ふる)
2013-02-03 20:08:49
★Rさん、

この本は面白かったですね。
薦めてくれるなんて、ステキなお父様ですね。
もしお気に召したのであれば、同一作者の他の作品もオススメです。
返信する

コメントを投稿