わたしはいつも、人さまの前に出るたびに、俺はだれより下劣なんだ、みんなが俺を道化と思いこんでるんだ、という気がするもんですから、そこでつい「それならいっそ、本当に道化を演じてやれ!お前らの意見など屁でもねえや、お前らなんぞ一人残らず俺より下劣なんだからな!」と思ってしまうんです。(フョードル、101ページ)
その人はこう言うんです。自分は人類を愛しているけど、われながら自分に呆れている。それというのも、人類全体を愛するようになればなるほど、個々の人間、つまりはひとりひとりの個人に対する愛情が薄れてゆくからだ。空想の中ではよく人類の奉仕という情熱的な計画までたてるのに、相手がだれであれ一つ部屋に二日と暮らすことができない。だれかが近くにきただけで、その人の個性がわたしの自尊心を圧迫し、わたしの自由を束縛してしまうのだ。その代わりいつも、個々の人を憎めば憎むほど、人類全体に対するわたしの愛はますます熱烈になってゆくのだ。とその人は言うんですな」(ゾシマ長老、136ページ)
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