頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『鳴いて血を吐く』遠田潤子

2017-12-13 | books
金がなくなり、高価なギターのコレクションを売ってしまったのは多聞。アーティストのインタビューをして自伝を書けと命じられる。相手は、実菓子。実菓子が歌い、多聞がギターを弾いたCDがヒットしていた。実菓子とは色々あって、もう一緒に仕事がしたくなかった。でも断れず、実菓子と多聞が育った村に向かう・・・実菓子には、インタビューではなく、多聞が覚えている実菓子のことを語り、それを本にすればいいと言われる。そして多聞が子供時代から、家族のこと、実菓子との出会いを語り始める・・・

おお。おお。遠田潤子が私の大好物だということがやはり分かった。

多聞と実菓子は単にギタリストとボーカリストというような単純な関係ではないことはすぐに分かる。多聞の兄をどうやら彼女が不幸にしたらしいことが分かるが、具体的なことはそう簡単には分からない(このじらしがうまい。もっとあたしをじらして)

2人が暮らしたところが相当閉鎖的な田舎だということも段々と分かる。多聞の父親がおぞましい男だったとか、実菓子の母親もおぞましい女だったとか、様々な「おぞましい」ことが段々を判明していく。この「段々」な具合がサイコーに巧い。

熱すぎる「桜木紫乃」という感じだった。彼女の作品を読んでから、こういう「肉と肉が熱くぶつかり合う(必ずしもエロくはなく)」ようなタイプの小説は自分は好きなんだなんと認識したのだけれど、人間関係のややこしさと熱さは桜木紫乃より上。根底に流れる清々しさとか普遍的な哲学では桜木紫乃の方が上というような印象を持った。ただし、遠田潤子はまだ2冊しか読んでないので、暫定的意見。

鳴いて血を吐く

今日の一曲

本に合っているような。Katie Meluaで、"I Put A Spell On You"



では、また。
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