「哄う合戦屋」北沢秋 双葉社 2009年
1549年信濃の地の領主、遠藤吉弘のもとで軍事を仕切ることになった天才合戦屋石堂一徹。小笠原長時、武田に囲まれながらも領地を広げていく。石堂に負うところが大きいと知りながら、娘の若菜と石堂の仲がよくなることが気に入らない。石堂の軍略が優れていると知っていながらも…人間は将棋の駒であると豪語する石堂の打つ手とは。
いやいやいや。これは面白かった。文句のつけようがない。
石堂一徹、若菜の人物設定が巧い。ちっちゃな豪族が飲み込まれるか飲み込むかの緊迫した状態にあるのを、「緊迫した状態にある」と書かずに情景を描写することで伝えようとする様がいい。先が読めないストーリー展開がいい。
若菜という天真爛漫でみなに愛される娘の苦悩する様もまたいい(これは読んだ人みながいいと言うと思う)
現実にはいなかった遠藤、石堂が「もしかしていたのかも」と思わせるのは、現実にいた武田や小笠原、村上、上杉らの武将の名前と混在させているからだろうか。そのリアリティの隙間感がまたいい。
表紙に描かれたヒゲを生やした男は石堂にしてはいい男過ぎる。実写にするなら元関取で格闘家の戦闘竜、若菜は夏帆にすると美女と野獣感たっぷりになるかと思う。絶対却下されるだろうが。
あらためて、「いい人なのにブレる」遠藤と「ブレない」石堂のコントラストがこの小説のひとつの軸なんだなと思い、そしてこの夏は「ブレない」男になりたいとバランスボールに乗りながら思う。
ぐらぐら。
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