「ジョーカー・ゲーム」柳広司 角川書店 2008年(初出野生時代2007~2008年+書き下ろし)
昨年とても評判が良かった本作。「このミス」でも上位にランクインしていた。戦前、(いやいつを戦前とするかはちと悩む。第二次世界大戦はドイツがポーランドに侵攻した1939年が定説であるが、柳条湖事件もしくは盧溝橋事件が第二次大戦が始まった瞬間であると考え「てもいい」と思っているので、1931年もしくは1937年に第二次世界大戦が始まったと考えると、戦前がいつなのかその定義が危うい。麻生首相は真珠湾攻撃=第二次世界大戦の始まりであると言ったそうであるが、こんなお茶目な首相がいるなんて日本はステキな国だ) いや、そんなことどうでもいいか・・・
で、戦前、D機関というスパイ養成学校が作られ、そこ出身のスパイをめぐる連作短編集である。かなり読ませる。
「ジョーカー・ゲーム」 東京在住のアメリカ人にスパイの容疑が。その証拠を押さえに彼の家に行くが、見つからない。焦る日本人佐久間。憲兵隊、上司との丁々発止。
「幽霊」 横浜にいる英国総領事にスパイ容疑。出入りのテーラーの店員になり、彼のチェスの相手をする蒲生。状況証拠ではクロ、心証ではシロ。さて真相は。
「ロビンソン」 ロンドンで当局に逮捕されたスパイ伊沢。機密を漏らさずに脱出することが出来るのだろうか。
「魔都」 上海で日本人を狙ったテロが続く。及川憲兵大尉宅にも爆弾が。しかし真相を探っていくうちに意外な結末が。
「XX」 ドイツ人スパイが東京で自殺。しかし彼はソ連との2重スパイである。自殺であると断定されると困る日本当局は真相をつかむ。
以上、こんな感じ。設定が古びているのでどうかと思いつつ読んだら、設定が戦前の日本であるだけで、内容は多少ハードボイルドの香りがするエスピオナージだ。私個人はエスピオナージ(スパイ)小説は昔から好んで読んできた。ル・カレ、グレアム・グリーン、ブライアン・フリーマントルなど。しかし最近はご無沙汰だったので、久しぶりに何とも良い気分にさせてもらった。
スパイを描くときにスパイがスパイである苦悩をどう描くかが一つの鍵になる。その鍵を作者は上手く扱っている。また本作が面白いと思った人と、ジェームズ・ボンドは観ている分には悪くないけど、本当のエスピオナージ活動ってもっと地味なんでしょ?って思っている人にはぜひフリーマントルのチャーリー・マフィンシリーズをオススメする。騙されと思って初期のとても読みやすく、かつガツンと来る「消されかけた男」と「別れを告げに来た男」を読んでみて欲しい。
先日、湊かなえの「告白」について、私が大傑作かどうかわからないと書いたところ、それに反論するようなコメントがついていた。繰り返さないが間違いなく大傑作の一つであると私が思うのは、チャーリー・マフィンシリーズである。「告白」は足元にも及ばない。
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妙に惹かれるんだけど絶対に幸せになれない気がする~。
本の表紙は結城中佐のイメージでしょうか?
湊かなえといえば、『贖罪』お読みになりましたか?
図書館の窓口で「しょくざい」と言って検索してもらったら、「食材」と入力されてしまいました。
はぁ・・・。
女スパイと付き合うとすぐに「スッパイものが食べたい・・・」などと言われるのでしょうか・・・
表紙は結城中佐だろうと思います。
「贖罪」は、昨日から読み始めたところです。やや読みにくいため進んでいません。