頭の中は魑魅魍魎

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『彼が通る不思議なコースを私も』白石一文

2014-02-06 | books
不思議な小説だった。

霧子は、友人みずほが別れた彼氏に呼び出される、その場に同行する。その元彼氏はみずほとの仲が修復不可能だと知って、ビルから飛び降りる。霧子は、その場に黒い服装の男を見かけた。その男が死神のようだと思った。それから時間が経過して、霧子は合コンに参加する。すると、死神がそこにいた。彼は林太郎。小学校の教師をしていると言う。どこか浮世離れしている彼にどういうわけか彼女は惹かれてしまう。というのはほんのさわり。そこから、彼女が就職した電機メーカーでの苦労が描かれたり、彼が関わる教育における問題が描かれる。ネタバレしない範囲で言うと、学習に障害のある子に対して、社会はどうあるべきかがかなりリアルに描かれる。しかし、その教育問題がメインテーマかと言えば、そうでもないのである。これ以上は言えない。

白石一文節は相変わらず健在。好き人にはいつものテイストだから安心して召し上がれ。

何がテーマなのか明記しにくい。教育問題がテーマなのであれば、そっち方面に興味のある人やそっちに携わっている人必読、と言えるけれど、そうでもない。結婚がテーマのような、女性の生き方探しがテーマのような…(他のテーマについては、興を削ぐので言わない) しかしテーマが一つクリアーにあればいいというものでもなく、こんな風に何がテーマなのか分かりにくい小説も悪くない。

私は、白石一文の世界が大好きなので(「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」を読んで私の胸に突き刺さった矢はまだ抜けない)、そしていつもの感じなので、充分堪能させてもらった。読んだ人と、ネタバレを気にせずに語り合いたい本。

今日の一曲

本書のテーマを強引にひねり出すと、自分の脳内で流れる音楽をとめるな、ってことだと思う。ってことで、Jamie CullumのDon't Stop The Music



では、また。

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