「オレンジの壺」宮本輝 1996年 講談社文庫(1993年 光文社単行本 初出CLASSY1987年9月~1992年3月)
夫から石のような女だと言われ、たった1年の結婚の後離婚した佐和子。祖父が遺言で、自分に日記を遺していたのに全く興味がなかった。思い出して、その日記を読んでみたら、1922年にヨーロッパに渡って、紅茶やスコッチウイスキーの輸入代理店になった頃の苦労が描かれている。しかし書かれているのはそれだけではなく、第一次大戦と第二次大戦の間の謀略と複雑な人間ドラマがあって…
うむ。ネタと構成と人物情景がすごくいい。ちょっとずつ謎が解かれていく様はすごく好奇心をくすぐるし、自称つまらない女、佐和子、佐和子と一緒に謎を解く滝井、佐和子の祖父、彼をめぐる人間たち、みな魅力的だ。
しかし歴史的な事柄について登場人物の吐く台詞が、後知恵でつけた感じがすることが多い。例えば、ヒトラーが危険な人物だと、後の時代に生きる我々は知っているが、それを当時の人物の言葉を借りて、彼は危険な人物だと語らせても、説得力も意外感もない。同時代に生きた者がなぜそう考えたかを読みたいのに。
また、雑誌新聞の連載らしく、謎は一部は解決されないまま終わる。それにはそれほど不満はないけれど、以上の二点が難点と言えば難点か。
傑作が多い宮本輝作品の中では、低い評価になってしまった。それでも面白かったけれど。
Amazonのレビューの中でミッキーという方がこんな風に書いている
ストーリーの構成事態は、非常に面白いとはいえ唸るほどではない。けれども宮本輝にしかできないような人物の心の機微の描き方や、その職人芸ともいえる文章力はさすが。宮本輝の本が他の唯川恵や林真理子らの本と同じ価格で売られていると思うと不思議な気がする。
唯川恵も林真理子の本もあまり読まないので分からないが、確かに、この人の本とあの人の本が同じ値段なのか…と思うことはある。
では、また。
谷川俊太郎さんの詩などで。
最近はまた漫画ですが益田ミリの本で日常のマンネリ化を『自分が薄まっていく』とあり、あぁそれだ。とガッテンガッテンしてました。
オススメ漫画は猫漫画ですが松尾スズキさんの愛猫オロチとの日々、買って損は無いですよ。漫画家の河井克夫さんの画力も見どころです。
宮本輝さんの本、女心書くのも上手ですよね。運や星回りを気にする。など。
遠回りしていてまだ流転シリーズ2巻目。堂々とした大木のような男も、ヤキモチやいたり。
人の良さを利用して相手から裏切られたり、騙されても仕返しはしない。は立派。
沢山本読んでみても人との関わりは自分が動いて関わらないと、いいこともそうでないことも何も起こらないね
日常のマンネリ=希薄化とは、うまい表現ですね。
「流転の海」シリーズは先が長いですし、続編がまだ出ますから気長に読みたいですね。
また、本ばかり読んでいてはという言葉、耳が痛いです。書を捨てよ、街へ出でよ、ですね。