頭の中は魑魅魍魎

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『増補 オオカミ少女はいなかった スキャンダラスな心理学』鈴木光太郎

2016-05-10 | books
ウサン臭いところのある心理学的な神話を、新潟大学の先生が斬る。

1920年、インドで発見された二人の少女。オオカミに育てられたので、四つん這いで歩き、食べ物は手づかみで食べた。アマラとカマラと名付けられた。という話。どこかで聞いたことがあるはず。しかしよく考えてみれば、オオカミの乳で人間が育つはずがない。撮影された写真を見ると、不審なところだらけ…

1956年、ニュージャージー州の映画館。上映中に「ボップコーンを食べろ」とか「コカ・コーラを飲め」というメッセージを1/3000秒画面に映し出した。これを5秒ごと繰り返し、6週間続けた。するとポップコーンの売り上げは57.5%、コカ・コーラは18.1%増えた。いわゆる「サブリミナル効果」というやつだ。なぜこうなったかと言うと、挿入されている時間が短すぎるので、観客は意識しない。しかし無意識では気づいているからなのだ。この実験結果が発表されるとアメリカでは大騒ぎになる。議会が取り上げ、ラジオ局、テレビ局はこういうサブリミナル刺激を含んだ放送を禁止するという自主規制を始めた。ゆえに、その後、比較できるような実験がなかったのだから、サブリミナル効果なるものがあるのかきちんと証明できていない。しかし本当にそんな効果はあるのだろうか…

映画は1秒間に24コマしかないのだから、1/3000秒画像を挿入することはできないはず。それにそんな短い時間で「ポップコーンを食べろ」という文字を読み取ることができるのだろうか。

というような話。すごーく面白い。

基本的には、捏造された話を詳しく解き明かす形式。作家の三浦しをん氏がどこかで薦めていたので、興味を持っていたのをすっかり忘れていて、今頃読んだ。

増補 オオカミ少女はいなかった: スキャンダラスな心理学 (ちくま文庫)

今日の一曲

嘘の歌。Amy Winehouseで"You Know I'm No Good"



では、また。
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