「絆回廊 新宿鮫X」大沢在昌 光文社 2011年(初出「ほぼ日刊糸井新聞」2010年2月19日~2011年4月22日)
新宿鮫が帰ってきた。前作「狼花 新宿鮫IX」から5年。
殺人の罪で刑務所にいた大男が警官を殺すために拳銃と必要としているという情報が鮫島に入る。その事件を追いかけようとすると、暴力団関係の捜査の邪魔になるとして情報を得ることができない。鮫島が無理に追いかけようとすると、人が死ぬ。中国残留孤児2世、3世による謎の組織「金石」とは。
うーむ。久しぶりにいいものを読ませてもらった。新宿鮫ウエルカム・バック。
ほぼ日で連載されていたのだが、PCで小説を読むということに慣れないのか面白さが半減してしまったので、連載は2回しか読んでない。webマガジン幻冬舎なんかにあるエッセイのような一回読みきりの方がウェブ上の読書に向いているように思うけど、如何?
従来の新宿鮫を楽しんできた人なら何の問題もなく楽しめると思う。どの作品から読んでも楽しめるというのがウリらしいんだけど、私は最初から順番に読んだ方がいいと思う。本エピソードは続き物ではないけれど、シリーズ登場人物晶や藪、桃井に関してあまり説明があるわけはないので。
物語は大男の事に最終的には集約されるんだけれど、その前にばら撒かれる前振りが巧い。なぜ待つ者がいるのか、金石との関係はなんなのだろうか。大男の執念があまりにも強力過ぎて、若干無理があると思いながら読んでいたのに、結局最後まで読んだら何の違和感もなくなってしまった。
そして衝撃的な終わり方をする。まさか、そんな。
愛と暴力を描く純国産ハードボイルド、一度お試しあれ。
絆回廊 新宿鮫X | |
大沢在昌 | |
光文社 |
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます