「煉獄の使徒」(上下)馳星周 新潮社 2009年(初出週刊新潮)
怪しいヨーガ教室の主宰戸邊が左翼を追われた弁護士幸田と組んで作った宗教団体、真言の法。戸邊は十文字源皇と名乗るようになる。邪魔な弁護士を殺害し、事業を拡大し、覚せい剤を使って信者を騙し、富士山の麓に総本部を作る。どっかで聞いた事ある話が多い。なぜかと言えばオウム真理教を下敷きにしたノンフィクション・ノベルだから。
面白いかつまらないか判断に困る。地下鉄サリン事件や坂本弁護士殺害事件などについて何も知らなかったらこれほど面白い作品はないと思う。ところが、知っていることが多いので、(だからと言ってつまらないわけでもなく)先が読める感と既視感を持ちながら読んだ。但し、登場人物の一人、公安刑事についてはこれがフィクションなのかそうでないのか分からなかったのだが。面白いorつまらないのどちらかで評価は私にはできない。タイトな文体と緊迫感はものすごく高いレベルで続いていたことは確か。
これは今、判断しないで20年後に読んで判断するか、あるいは事件を知らない者が読んで判断した方が的確な判断が出来る作品ではないのかと思った。だからと言って今楽しめないということではないけれど。
ヒトラーあるいはナチスの存在が、英国では大物スパイ、キム・フィルビーの存在が後の文芸作品、映像作品に多大な影響を与えたのと同じように、オウムの存在も後の小説に、これから影響を与えるのかも知れない。
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