毎年8月になると市内の果樹園から「ブドウもぎ取り」の案内状が来て、指定の日にブドウ狩りに行くのだが、今年はコロナ感染の状況下で顧客によるもぎ取りは中止となり、希望の品種と数を注文して宅配する形式となった。例年当日は長蛇の列を成して並ぶのだが手数が省けたとはいえ、自分の手でもぎ取り出来ないのは味気ない。
ここ15年ほど同じ果樹園でブドウ狩りをしているが、品種改良が年々進んで糖度が増して甘くなり、粒も大型化している。おまけに皮ごと食べられるようになった。小粒で甘酢っぱいかつての品種では一房150円とか200円位だったものが、今や人気のシャインマスカットなどはスーパーでも一房1500円前後、果物屋に行けば3000~4000円もする。
イチゴも同様だし、果物は概して甘く大きくなって行く宿命にあるようだ。
今朝の新聞に、戦後初の国産旅客機であるYS-11の記事が載った。戦後復興の象徴として観光施設で一般の人向けに展示する準備が進められているとの記事だが、私にとっては思い出深い飛行機である。生まれて初めて乗った飛行機がYS-11機であった。
それは大学3年生の夏休みに一人で東北地方を旅行して回った時のことだ。「東北周遊きっぷ」という、12日間国鉄(今のJR)乗り放題(但し特急は不可)の切符で猪苗代湖を皮切りに仙台の七夕や松島、牡鹿半島、平泉・中尊寺、花巻温泉、宮古・浄土ヶ浜、龍泉洞、八幡平、奥入瀬渓流、十和田湖と回り12日間の期限が切れたので帰りは三沢空港からYS-11で帰京した。
その時、松島や磐梯山が眼下にハッキリと見えた。ジェット機と違ってYS-11は飛行高度がずっと低いので天気がよければ正に観光飛行になるのだ。続いて驚いたのは羽田上空で旋回して着陸態勢に入る時、地面がひっくり返るように回って見えたことだ。乗っている本人は旋回している感覚は全くなく、地球が回っているという奇妙な感覚なのであった。
それから5年後、結婚式のため勤務地の大分から東京に帰る時に乗ったのもYS-11。妻となる彼女が同乗したが、天候が悪くて飛行機は揺れに揺れ、彼女は体をこわばらせて肘掛けにしがみついていた。
乗った回数は多くないが思い出多いYS-11機であった。