飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

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ロシアの巨匠ミハルコフ監督の新作「戦火のナージャ」を見て感動!!

2011年01月13日 13時04分50秒 | Weblog
 ロシアの巨匠ミハルコフ監督の新作「戦火のナージャ」を先日試写会で鑑賞した。1994年に製作され、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した「太陽にやかれて」の続編というが、前作とはガラリと変わり、第二次世界大戦で最も激戦といわれる独ソ戦を描いた戦争物である。だが、激しい戦争の中でも牧歌的な雰囲気が漂い、「これぞ、ロシア!」といえる映画で、久々に感動した。

 ミハルコフ監督が脚本、俳優、監督の1人3役をこなし、相手役にも前作同様、ロシアを代表するオレグ・メンシコフを登場させているが、様変わりしているのは愛娘ナージャである。前作では6歳のあどけない少女だったが、今回は24歳になり、事実上の主役として大人の女性を演じている。

 乗っていた船がドイツ軍の戦闘機に攻撃されて沈没、真っ黒な海に投げ出され、機雷につかまって漂流したり、瓦礫の広がる戦場で死に瀕した若い兵隊を看護したり。さらには兵隊の必死の頼みを聞いて裸身をさらす・・・。まさに体当たりの演技を見せてくれる。

 こうしたシーンの間に、前作のいたいけな少女時代の映像が流れ、その牧歌的な雰囲気に癒される。監督と娘が登場するシーンが多いのが気になる人もいるかもしれないが、家族を思いやる気持ちを、今の時代こそ大切にしたいという監督のメッセージが伝わってくる。

 スピルバーグ監督の戦争映画「プライベート・ライアン」を観て、この映画のアイディアが浮かんだ、とミハルコフ監督は語っている。といっても、同じような作品をつくろうと思ったのではないことは明白だ。スピルバーグ監督と違って、随所にロシア的なユーモアや意外性をおり混ぜ、思わず笑ってしまう場面も多かった。いつの間にか、ミハルコフ・ワールドに引き込まれてしまったというのが実感だ。

 もちろん、戦争物だから悲惨な場面やスターリンの粛清を示唆する場面も少なくない。とくにスターリン批判のモチーフは前作同様、一貫して流れている。だが、それ以上にミハルコフ監督のヒューマニズムがあちこちにちりばめられ、ともすれば「怖い」あるいは「残忍だ」といわれるロシア人のイメージを見直させる映画にもなっている。

 この映画の上映開始は、今年のゴールデンウイーク(GW)で、本国ロシア以外で上映されるのは日本が最初だという。ロシアという、近くて遠い国を知るには、一番手ごろな教材だと思う。是非一度映画館に足を運んでみてほしい。あなたもきっとミハルコフ・ワールドのとりこになるでしょう。

 
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