ホテル星羅四万十は
四万十川を望む高台にある。
「温泉がいいなあ。」
列車でいける処で自然豊かな処
ということで見つけたホテルだ。
コンクリートの打ちっぱなしに
ベージュの石垣。そして
三角屋根のコントラストが美しい。
瀟洒でモダンなホテルだった。
用井温泉とあった。
三階の部屋から四万十川が見渡せた。
川へ下るのり面には満開の桜並木…
目の前の四万十川は春の陽光を受けて
穏やかにそしてとうとうと流れていた。
さっそく温泉に入る。
日暮れ前に浸かる温泉が好きである。
斜めに傾く日が湯に差してきて
湯面がきらきらするあの光景。
極楽浄土とはきっとこうなんだろう。
「はて、極楽浄土に温泉はあるのだろうか。」
幸運なことに誰も居なかった。
一面のガラス窓からは春を笑う山々
その間を四万十がたゆたう。
ふりちんで窓際に仁王立ちする。
大自然を目の前にすると、ことさら
裸を誇示したくなるのは何故だろう。
温泉に浸かっているのだから
もとより裸なんだが…。
「いい湯だ。」
こわばった心身が緩やかに溶けて行く。
泉質は
ヒドロ炭酸イオンにナトリウムイオン。
温度が低いため一度沸かしているが
正真正銘、四万十の天然湯である。
夕食は一階ロビー奥のレストランへ。
ゆったりしてソフィスティケートな
レイアウトのレストランは空間も広く
落ち着いて食事ができた。
四万十の鮎に川海老、そして
四万十牛のステーキを堪能。
特に青さのりの天ぷらは
味といい食感といいなかなかの逸品。
燗酒もこれは嬉し哉!
私の好きな銘柄土佐鶴だった。
これも好印象だなあ。
ここは星の街、夜は星羅万象
満天の星が降るとあったが
あいにく今宵は霞がかった夜空となった。
星の数も都会並みの見え方で残念。
久しぶりに漆黒の空にかかる天の川を
ただぼーっと呆けたように
眺めてみたいと思っていたのだが…。
翌日は列車の時間まで
近くのカヌー館へ行って自転車を借り
四万十の春をゆっくり散策してみよう。
春は爛漫。四万十のほとり
星羅の癒しに包まれたひと日。
そんなに生き急ぐことはなかろうと
生き様をちゃんと修正してくれる。
「自然ってやっぱいいいなあ。」
と思ってしまう私であった。
四万十の川面はゆらぐ 魂と
桜 菜の花。鶯の声 拙私有
お粗末です。
■ホテル星羅四万十
高知県四万十市西土佐用井1100