ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々』

2005-11-29 23:55:48 | 新作映画
----これも実話なんだって?
「そうだね。ヒトラー政権末期の1943年。
『打倒ヒトラー!』の文字を町中に書き、
郵便やビラで国民に自由を呼びかけた
“白バラ”と呼ばれた若者たちのグループ。
その紅一点、ミュンヘン大学の女学生
ゾフィー・ショルの最期の日々を描いたドイツ映画なんだ」

----ヒトラー関連のドイツ映画って今年、他にもあったよね。
『ヒトラー~最期の12日間~』だね。
あの映画のラストで、
ヒトラーの元タイピストの女性が
自分と同じ年のゾフィーの存在を知って
初めて罪に目覚めたと語っているけど、
そのゾフィーこそがこの映画の主人公と言うわけだ」

----ふん。つまりレジスタンスの話ってことだよね。
「うん。映画はゾフィーと兄のハンスが
ミュンヘン大学構内でビラ撒きをして見つかり、
逮捕、ゲシュタポの尋問、
人民法廷での裁判、そして処刑されるまでを描く」

----確か、こういう実話ものって
描かれているものが事実と合っているかどうかに関心が集中して、
映画そのものの魅力への言及がされにくいって言っていた記憶が…。
「うん。そのことについて監督はこう答えている。
『幸運にも我々が得た事実は
我々を夢中にさせるものでした』と。
この<白バラ>の話は過去にも何度か映画化されているけど、
本作は90年代になって東ドイツで発見された
ゲシュタポの尋問記録が軸となっている。
そのため映画は、かつてのように
ゲシュタポをステロタイプには描いていない。
ゾフィー・ショルを尋問したゲシュタポのロベルト・ムーア。
アレクサンダー・ヘルトの好演もあり、
その屈折した心理描写がじっくり描き込まれている。
ゾフィーはどんなに詰問されても、
冷静に理路整然と自分の潔白を訴えていく。
そのため、ムーアは最初彼女が無実と信じ込むんだ」

----うわあ、それってスゴくない。
相手はゲシュタポなのに、よく一介の女子大生がそんなことできたね。
えいには無理でしょう?
「うん。自分に置き換えてみて、少し情けなくなったね。
果たして、このようなとき自分だったらどう反応するかってね…。
それはともかくとして映画の話に戻ろう。
釈放寸前でゾフィーはビラ撒きに関わっていた証拠が見つかる。
それでも無関係を主張していたゾフィーだが、
兄の自白と言う絶対的証拠を突きつけられてからは
一転して反撃に出る。
自分たちは信念を持って行動し、それを誇りに思っている。
しかもそれは自分と兄だけでやったのだと、すべてを引き受ける。
仲間にナチの手が及ばないようにと言うわけだね。
そんな彼女に、ムーアは他の仲間を密告すれば命を助けると持ちかける。
ところがゾフィーはこれを拒否」

----mmmmm……。
映画は、この尋問描写が一時間以上も続く。
法廷映画と言うのはよくあるけど、これは珍しい。
でもそれだけ見つかった資料が驚愕的だったと言うこと。
それがあればこそ、ゾフィーの思想はもとより、
彼女の人間像が深く描き込まれたと言うわけだ」

----法廷の方はどうニャの?
「これが悪名高い狂気の裁判長フライスラーによって執り行われる。
彼の判決は先入観が元となっていて、
被告には恫喝で接し、
最初から有罪との決めつけがなされれている。
彼には元共産党員であるという弱みがあり、
自己保身のためにパフォーマンスをやっていたというように、
映画では描かれているけど、
いやあ、それにしてもこのシーンは戦慄が走ったね。
演じるアンドレ・ヘンニックにフライスラーが乗り移ったかのようだった。
ゾフィーを演じるユリア・イェンチの抑えた演技との対比が見モノだ」

----彼女らは即日処刑されたと聞いているけど・・・。
「うん。本来は99日の余裕があるはずなんだけど、
判決後すぐ執行される。
それを聞かされたとき、初めて彼女は絶望から慟哭する」

----ふうむ。これは観る価値がありそうだ。
「ムーア尋問官との心理的駆け引きだけでなく、
ビラを構内に置いて回る冒頭のエピソードからしてサスペンスフル。
見つかるとは分かっていながらもハラハラドキドキ。
一度観たら絶対に忘れられない衝撃のラストまで
目がスクリーンに釘付けとなること間違いないよ」

                   (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーン、固まったニャ」いいねぇ

※ドイツの傷もまた深い度
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