ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『愛してよ』

2005-11-10 18:20:20 | 新作映画
----この映画、確か観たのが一昨日じゃなかった。
中一日置いたわけだね。これって珍しくない?
「うん。正直言ってあまりノレなかった。
ところがこの映画、作家たちにやけに評判がいい。
プレスには、中沢けいと佐伯一麦の対談、そして室井佑月の絶賛評。
もちろん宣伝側が意識してそう言う人たちをセレクトしたんだろうけど…。
でも一日置いてみると、別の観点から喋りたいことが出てきたと言うわけだ」

----ふうん。それってちょっと聞いてみたい気もするニャあ。
「ただその前に、この監督・福岡芳穂のキャリアについて話しておこうかな。
これまで彼の名前は他の監督のプロフィールを語るときよく登場した。
と言うのも、彼は1982年に、周防正行、磯村一路、水谷俊之ら
いまの日本映画を代表する監督たちとともに
製作集団『ユニット5』を結成しているんだ。
彼自身はその前年に『ビニール本の女 密写全裸』で
第3回ズームアップ映画祭新人監督賞を受賞している」

----なになに、そのHなタイトル?「ズームアップ」ってのも知らないな。
「いまは廃刊となった雑誌『月刊ズームアップ』。
そこが主宰したピンク映画を対象とした映画祭だ。
けっこう人気がある雑誌だったんだけどね(遠い目)」

----なんか、いやらしいな。分かったから早く本題に入ってよ。
「まあ、このことでぼくが何を言いたいかと言うと、
つまりこの福岡監督はキャリアのあるベテラン。
ぽっと出の新人じゃないと言うこと。
そんな彼が描く新作『愛してよ』は、
シングルマザーの美由紀が、10歳の息子ケイジを
キッズ・モデルとして成功させようとする話。
もともとこの母子の間には溝があるんだけど、
美由紀には新しい恋人が登場。
一方のケイジは美由紀の知らないところで新たな関係が始まり、
その溝はさらに広まって行く…。
簡単に説明するとこう言うストーリーなんだけど、
その中に、一年前に死んだエリカの霊にまつわる都市伝説や
オーディションの本命・高原タカシへの父の虐待など
いくつかのエピソードを絡みあい、物語の奥行きが広がってゆく」

----で、どういうところがノレなかったの?
「つまり、こうやって物語を語ってゆけば、その中でテーマまでも語れてしまう。
じゃあいわゆる<映画>としてのオモシロさはどこにあるのだろう?って…。
確かに、美由紀が持っている花束の花びらが風に舞い、
屋上にいるケイジがその一枚を掴む叙情性とか、
ケイジにしか見えないエリカの霊が彼に自殺を勧める幻想性とか、
オーディションの撮影風景がいつしか観客へのメッセージに変わる異化効果とか、
印象に残る<映像>も多々あるんだけどね。
それでも父から虐待を受けているタカシが、
自分が受けたその暴力を
『お前なんて、生きてる価値、ねーんだよ』の言葉と共に、
ケイジに向けるシーンは違和感を感じないではいられなかった。
一度は背中に棒で、もう一度はグーで顔を。
あれだけボコボコに殴られたら、
体中アザだらけでとても動けないはずなのに、
たいしたダメージも感じさせずに日常に戻ってゆく。
これはどういうことなんだろう?
誰もが突っ込みたくなるようなこんな初歩的ミスを
このベテラン監督がやるとは思えない。
もちろんこれは幻想でも夢でもないし……。
その<謎>がいまも心に引っかかっているんだ」

----それって考えすぎじゃニャいの?
「いや。この監督には考えがあるんだと思う。
そのキャスティングも含め、
映画ファンへの目配せがけっこうあるしね。
第一、冒頭はゴダールの『パッション』だし」

----どんな人が出ているの?
「美由紀には西田尚美。これまでのコメディエンヌぶりとは一変。
子供に自分の趣味を押し付けることで自分をどうにか支えている“子供オトナ”を好演。
その彼女の昔の夫に松岡俊介。新しい彼には野村佑人」

----あっ、分かった。
『800 TWO LAP RUNNERS』で共に主演している。
う~ん、それだけでも観てみようという気になるね。
「フォーンはエラい。ナイスフォローだ(笑)」
             (byえいwithフォーン)

※けっこう受けがいいようだ度

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