ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『エンパイア・オブ・ザ・ウルフ』

2005-11-23 00:50:10 | 新作映画
----これジャン・レノとは思えないね。
髪はシルバーだし、顔もいつもより厳つい。
「うん。実はこれに加えて十字架のタトゥまでしているんだ。
最初、ジャン・レノ主演のアクションと聞いて
あまり期待はしていなかったんだけど、
これは意外・・・と言っては失礼か。
なかなかの拾い物だったね」

----ジャン・レノって『レオン』と言う名作があるよね。
どうして期待しなかったの?
「だってあの作品以降、
彼の主演映画はどれもぱっとしない。
あの重たそうな瞼そのままに、
シャープさに欠けた寝ぼけた作品が多かった。
それでも監督が『キス・オブ・ザ・ドラゴン』のクリス・ナオンと聞いて
少し興味が出てはいたんだ。
リュック・ベッソンが製作に回ったヨーロッパ・コープ作品の中で、
あの映画は群を抜いてオモシロかったからね」

----でもあの映画も構図は『レオン』そっくり。
だからオモシロく感じたんじゃないの?
ま、いいや。で、結果はどうだったの?
あ、そうか拾い物だったね。
「この映画、実はミステリー仕立てになっている。
一つはマインド・コントロール、
そしてもう一つは政治色を持ったトルコの新興宗教集団。
この二つの話が別々に進み、
やがてそれが一つになると言う構成。
まあ、それだけならよくあることかもだけど、
それぞれの話が凝っていて、
それだけでも一本の映画として成り立つくらいよくできている。
原作は『狼の帝国』。
『クリムゾン・リバー』のジャン=クリストフ・グランジェの
ベストセラーと聞けば、なるほどそれも納得だ」

----どんな話なの。さわりだけでも教えてよ。
「アンナという名の女性。彼女はなぜか夫の顔を覚えていない。
しかも夫に子供が欲しいと言うと、
夫は『お前が望まないから作らなかった』と、
自分が言うはずもないことを言う。
このあたりでは、また『頭の中の消しゴム』かとも思ったね。
時を同じくしてパリ10区のトルコ人街では連続殺人事件が発生。
3人の犠牲者は身元が判明できないほどに切り刻まれている」

----ふうむ、これは二つを結びつけるのが難しそうだ。
「でしょう?
しかもここまでは言ってもいいと思うけど、
その女性アンナは最初、夫が整形したのではないかという疑いを抱き、
それがきっかけでとんでもない<事実>を知ってしまう。
そして彼女がその<事実>に気づいたとたん、
警察の治安部隊が動き出す」

-----ひえ~っ。どうなるんだろう?
「ところが彼らに対し、アンナは互角以上の戦いをやってのける。
逃げ方も堂に入ってるんだ。
もちろんその理由も後に明らかになるけどね」

----ふ~む。それはそうとジャン・レノはどこに出てくるのよ?
「彼が登場するのはもう一つの連続殺人事件の方。
刑事局の若き刑事ポール・ネルトーは
トルコ人の裏社会に精通し組織からも一目置かれているジャン=ルイ・シフェールに接触。
このシフェール、ダーティな捜査のやり口から暴力と汚職の噂が絶えない」

----分かった。それがジャン・レノでしょう。
『クリムゾン・リバー』シリーズでも若手刑事と組むものね。
「正解(笑)。
ところが今回は、かなり強烈。
トルコ人の組織に乗り込んで
ボスに白状させるため指を切断したりまでする。
彼の動き自体がミステリアスで、
その真意がどこにあるか分からないところが
この映画最大のポイント。
彼は果たして善なのか悪なのか?------
そのキーワードとなるものが
いつ映画に出てこないとも限らないため、
観る方はかなり緊張を強いられる」

----ニャルほど、そう言うことか。
「映画を通してずっと雨が降っているんだけど、
映画から受ける印象は、『セブン』のように陰鬱ではなく逆にパンキッシュ。
というのもシフェールは花柄のシャツなんかを着ているんだ。
まじめに捜査しているようにはとても感じられない。
いかにも裏に何かありそうな感じだ。
この画作りの妙が観る方の頭を混乱に陥れる。
映像が物語を牽引していく映画、
やはりこれはぼくの好きなタイプの作品だな」

                 (byえいwithフォーン)

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