かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

クモの夢から一週間、何とか大過なくすごせたようです。

2009-03-22 19:32:20 | 夢、易占
 「アルケミックドリーム 向日葵の姉妹達」第3話その1、2をアップしました。はじめは二つあわせて1本でアップしたのですが、一応1,2の間は区切りがあったため、多少変則ではありましたが、2本に分けてアップし直しました。
 謎の「お姉さま(笑)」と消えたシェリーちゃんを追って、麗夢達一行が大阪の下町に飛び出して行きますが、この後、事件が起こります。いよいよ今回の敵役登場、というところですが、まだ、本作品で重要な役割を担う人物が数名出てきておりません。そういった人達を異なるエピソードでもって少しずつ露出しながらラストに向け収斂させていく。第2話の壁を突破した直後、そんな物語進行の基本のひとつを忠実に踏襲しようとストーリー構成を設計することにしました。おおよそ思惑通り事を運ぶことができたと思っておりますが、話の順番など、若干直しを入れてみたい部分もなきにしもあらず、です。これからそのあたりをおいおい検討しつつ、話を進めていくつもりでいます。
 
 さて、ちょうど一週間前、クモの夢を見て戦々恐々としていたのですが、その警戒振りが功を奏したのか、体調は大崩れせずに済んだみたいです。もっとも、家人もそうでしたが、いわゆるおなかに来る風邪を引いたみたいで、出張中は基本的におなかの調子が悪く、食後の薬が欠かせない状態でした。それに、多分念のため飲んでいた花粉症の薬のせいかと思われますが、昼間の眠気が割合に強く、電車などで眠りこけたりもいたしました。まあそんなこんなもこれくらいで乗り越えられればむしろありがたいくらいと考えておいたほうが無難でしょう。それにしても、ひょっとしたら登場するクモの大きさと体調の悪化具合とには相関関係があるのかもしれません。前回、大熱だして寝込んだときはそれこそ怪獣のようなクモが出ましたが、今回は普通サイズでしたし。そのあたりの検証は、次のクモの夢まで持ち越すことになるでしょう。できるならもう二度と見ずに済ましたいところですが。

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03 捜索 その2

2009-03-22 14:53:16 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』
 真夏の蝉時雨が、うるさくはやし立てているように聞こえる。物理的に突き刺さっているんじゃないか、と思えるほどの苛烈な陽光が容赦なく一行を真上から照らし、時折通りを吹く風も、熱い吐息を撫で付けて行くばかりだ。本当はすぐにも走り出したいくらいの状況なのだが、無闇やたらに突き進んで手がかりを失いたくない。麗夢は焦る気持ちを抑え、先頭を這うように進むベータの尻尾を見つめていた。
「どう? まだ大丈夫?」 
「ワン!」
 ベータが真剣な面もちで鼻を地面すれすれに降ろしながら、大丈夫、と返事をした。工場を出て間もなく、ベータの鋭い鼻がシェリーの痕跡を捉えたのだ。地面は火傷しそうなほど加熱したアスファルト。ベータの、はあはあと苦しげに舌を出しながら頑張る姿に、麗夢はあなただけが頼りなの、と声援を送る。アルファもピッタリベータに寄り添って、何か遺留品の一つもないか、と目を皿のようにして周りに視線を送っている。鬼童、ヴィクターも、今はただ黙々と麗夢達の後に従っていた。どちらもあまり外に出て仕事するタイプではない。ことにヴィクターは、過ごしやすい高原の故郷から、突然この世界中でもっとも不快なんじゃないか、と自信を持って推薦できるほどな酷熱地獄を彷徨っている。体力的にも限界だろう。だが、それはシェリーにも言えることだ。ヴィクターを支えているのは、まさにシェリーへの愛情その物に違いなかった。
 やがて、ずっと歩いてきた道に、浅い角度で交差する別の道が現れた。突然ベータの足が止まり、右左と忙しそうに首を振って地面をかぎ回った。
「ぅう~」
 やがて難しい顔つきで、心配そうに覗き込む麗夢に告げる。
「え? シェリーちゃんの匂いが分かれた?」
「きゅぅう~、くぅーうん」
 一つは、まっすぐ道なりに進む方角。もう一つはその道とVの字に分かれていく道、そしてもう一つ、そのVの字の反対側、逆方向に急角度に折れ曲がる方角。都合三方向にシェリーの匂いが残っているというのだ。
「い、一体どうしたんですか、麗夢さん」
 ヴィクターがたまらず問いかけると、麗夢は腕組みをして右手を顎につけた。
「実は、シェリーちゃんがどっちに行ったか、判らなくなったの」
「なんですって?!」
「こっちかこっちかこっち、どれかのはずなんだけど……」
 驚愕に固まったヴィクターに、ベータから教えてもらった通り三つの道を指さしてみせる。
「多分、ずっとまっすぐ歩いていって、戻ってくるときに間違え、その間違いに気づいて引き返したときに、また気づかずに違う方に歩いてしまったんだと思うのよ。でも確証はないわ」
 なおも考える麗夢に、鬼童は急角度に折れ曲がる方を指さして言った。
「ではこうしましょう。僕は取りあえずこっちの方向に進み、目撃者を捜してみます。アルファとベータはこのまままっすぐ進んで、シェリーちゃんが確かに折り返してきたかどうか確かめてもらいましょう。麗夢さんとヴィクターは、こっちの恐らく最終的にシェリーちゃんが行ったと思われる方角に進んで下さい。アルファとベータはシェリーちゃんが折り返したことを確認してから、麗夢さん達と合流し、僕たちはシェリーちゃんの足取りが掴めたら携帯電話でお互いを呼びあうことにしてはどうですか?」
「そうね、判ったわ。そうしましょう」
 鬼童としては、ピリピリしている麗夢の側が文字通り針のむしろだったがゆえの提案だったが、考えてみるとそう悪くない考えでもあった。三方向を調査しなければならないとなれば、分かれて探索するのは自然なことであるし、麗夢の推理は充分説得力のある合理的なものだったから、恐らくアルファとベータは程なくシェリーが引き返したことを探り当てることだろう。万一そっちでシェリーが見つかっても、アルファかベータどちらかが伝令役になることで連絡が付くし、麗夢と鬼童の間なら、携帯電話で状況の把握が可能だ。唯一の心配は、鬼童が見落とししかねない事である。麗夢の二人に対する信用は、シェリーを一人外に出したというその一点で既に地に落ちているのだ。とはいえ、ヴィクターを一人で不案内な日本の下町をうろつかせるわけにも行かない。
「それじゃあ、アルファ、ベータ、お願いね」
「ニャアウゥ」
「ワンワン!」
 二匹が笑顔で麗夢を見上げ、盛んに尻尾を振って了解を伝えた。麗夢もにこっと笑顔を返すと、にわかに顔を引き締めてヴィクターに言った。
「じゃあ行きましょう。ヴィクター博士」
「う、うん」
 鋭く踵を返した麗夢の背中を、慌ててヴィクターが追いかける。一方、一言もなくくるりと向こうに向いてしまった麗夢に、鬼童はまたもがっくり肩を落とし、自ら選んだ一人の道を、とぼとぼと歩き始めた。
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03 捜索 その1

2009-03-22 14:53:12 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』
 シェリーの姿が見えなくなっていることに鬼童とヴィクターが気づいたのは、シェリーが出て行ってからちょうど一時間が経過したときのことであった。二人は、ようやく合流した麗夢に問われ、初めてシェリーがいなくなっていることに気が付いたのだ。
「でも、確かついさっき外へ行くって言ってましたから、そんなに遠くに行っているはずはないんですが……」
 鬼童の覚束なげなその言葉は、シェリーが出ていってもう一時間になると証言した従業員によって、見事に否定された。
「そ、そんなに前だったのか?」
 ヴィクターと鬼童が狐に鼻をつままれたような顔を互いに見交わしている前で、麗夢は苛だたしげに溜息をついた。
「もう、夢中になるとこれだから……。私が遅れたのは悪かったけど、シェリーちゃん一人ほったらかして外に行かせるなんて、信じられないわ……」
「……申し訳ない」
 二人はしおらしくしょげ返って、麗夢に頭を下げた。しかし、あのシェリーが見知らぬ土地を出歩いて一時間も帰らずじまいというのは、一同に不安を惹起させるには充分な時間である。
「と、とにかく探しに行きましょう。どこかで迷子になっているのかも知れないし……」
「あ、ああ! 早く見つけてやらないと、この暑さだし、心配だ!」
 全く、心配なら目を離さないで欲しい。麗夢がきっと二人を睨み付けると、再び二人の頭ががっくりと垂れた。
「で、シェリーちゃんはどっちに行ったの?」
「そ、それが……」
「まさかそれも判らないの?!」
「面目ない……」
 二人とも並べば東京都庁のようにそびえ立って見えるのに、今は小柄な麗夢よりも小さく錯覚されるほど、がっくりと肩を落としている。そんな二人を見かねて、おずおずと社長が口を開いた。
「確か、出てすぐに左へ行ったはずや。なあ」
 社長に問われて、麗夢の前に麦茶のコップを置こうとした従業員が、何度も頷いて社長の言葉を肯った。
「確かに左やった。あれから前を通りかかってないから、右の方には行ってへんはず」
「ありがとう、左ね!」
 麗夢は努めて明るく礼を言うと、厳しい目つきに返って突っ立っている二人に言った。
「さあ、行くわよ! 鬼童さん、ヴィクターさん。早くシェリーちゃんを見つけないと!」
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