かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

なんとなく、やる気だけが空回りしているような気がするうちに、3月が始まりました。

2009-03-01 21:45:19 | Weblog
 今日から3月。日曜日とあってのんびりした気分でスタートしたわけですが、明日からはとてもそんな悠長に構えてもいられない年度末進行が待っています。まあ、それはそれとしてまずは連載小説のアップから。「アルケミック・ドリーム 向日葵の姉妹達」第2話その2ですが、こちらものんびりした展開は今日のこの話まで。次で事件勃発、以後、お話が急展開していくことになっています。当初私が書きあぐねていたのも大体この辺りまでで、これ以降は、頭の中で沸いた文字をブラインドタッチでエディタに落とし込むのがもどかしいくらいに一気に進みました。今回の一節は、このお話の分水嶺というわけです。

 さて、せっかくPainterClasicも使えるようにしたことですし、このところ一つ絵を描いてみたい、とずっと思い続けているのですが、どんな絵を描きたいのか、あるいは描けばよいのか、もう一つピンとこなくて、結局描けないでおります。以前はちょっとしたグラビアを見て、このポーズを真似てみたいとか、この衣装を写してみたいとか、あるいは他の人のCGを見て、その筆さばきを味わってみたい、とか言うような動機からCGを描くことが多かったのですが、最近はあんまりそういうことも無くて、気がついてみると何を描きたいのかよくわからない、という妙な心境に陥っている自分が遺されておりました。
 これも一種のスランプと言うやつで、いずれそのうちまた描きたい物が出てきたりするときも来るのでしょうが、珍しく、せっかくやる気もそこそこ出ている時に、そのやる気を活かせない、と言うのも難儀な話です。月も改まったことですし、この機会に絵を描いてみようと今日も朝から思っていたのですが、結局何を描くと言うことも無く、いたずらにタブレット上へスタイラスペンを右往左往させただけで、まとまったものは何も得られませんでした。いっそアニメの続きでも描けば余計なことを考える暇もなくなろうというものですが、そこまでやるのもなかなか踏ん切りがつかず、一日が終わってしまいました。昔から、忙しくなると俄然お絵かきとか文章書きとかやりたくなってくる貧乏性なので、多分明日からは更に色々な欲求が募ってくることでしょう。それに期待して(?)、しばらくはあせりは禁物とばかりに、時節到来を待つことになりましょうか。それはそれで、なんだかなぁ、と言う感じではあるのですが・・・。

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02.出会い その2

2009-03-01 15:54:01 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』
 そんな無邪気な大人達を眺めながら、私は早く時間がたってくれればいいのに、と口の中で言ってみた。そして、自分には構わないでいい、と宣言してしまったことに、ほんのちょっとだけ後悔してた。
 初めのうちは、鬼童さんも博士も、退屈だろう、とか、疲れたろう、とか言って、一応は私のことを気にかけてくれていたのだから。
 それに対して、大丈夫だから心配しないで、って、いつもの通り少しだけ強がって見せた。だから表だって不平不満を並べる訳には行かなくなった。
 あんなこと言わなければ、まだ二人に一言くらい甘えてみることもできたかも、って思ってしまう。
 きっとそうだとしても言わなかったはずだけど、言えるけど言わないでおく、と言うのと、最初から言えない、と言うのとでは、気持ちの持ちようが違う。少なくとも前者なら、もう少し気持ちに余裕を持っていられると思うから。
 だからこうして、周りが全く目に入らなくなるほど夢中になっている二人を見ていると、一人取り残されたような気がする自分を持て余してしまう。
(それにしてもあと1時間……)
 この工場に入る直前、鬼童さんが電話してくれたけど、今、麗夢さんは全速力でこちらに向かっているとのことだった。それでも後1時間はかかっちゃうから、それまで私は頑張らないといけないのだ。
 ……でもさすがに限界かも……。
 少なくとも、ここでじっとしてるのは、もうしたくなかった。
(ちょっとお散歩くらいは、いいよね) 
 私は、話に夢中な博士に一言、ちょっと外を見てきます、と言って、そっと工場の外に出てみた。
 博士は軽く手を挙げただけで振り返りもしない。
 いや、手を挙げただけまだましかも。本当に、夢中になると目の前しか見えなくなる人なのだから。
 こうして取りあえず息の詰まる場所から離れた私は、少しだけ気持ちが清々した。
 もちろん真夏のお昼時に、母国のすがすがしい気候に慣れた体でこの見知らぬ土地を出歩こうというのは、かなり危険な冒険と言える。実際照りつける太陽は、鍔広の帽子ごしでもぜんぜん関係なしに頭や身体を熱し、まとわりつくようなじっとりした空気がとっても気持ち悪い。
 それでも、うるさくて、臭くて、まぶしくて、あつーいところにじっと閉じこめられているよりまだまし。
 そう自分に言い聞かせて、私は工場前の車2台なんとか並べられるほどの狭い道路を、きょろきょろと見渡した。
 どうも左の方が何となく影が多い。
 私はそう見定めると、とりあえず左へ足を向けた。
 初めての不案内な街だけど、こうして直進するだけなら迷う心配もないと思った。
 それにしても、何とも表現に困る街……。
 車窓から見たときと同じ感想が、暑い吐息と共に私の口を漏れ出る。
 全く統一感のない背の低い建物達の、道に面した窓や玄関のドアが大きく開け放たれ、何かの音声が通りにかなりの音量で流れ出して、小うるさい蝉の声と交じり合ってる。
 チラとそちらをみてみると、どうやらテレビの音だった。
 窓を向いたテレビの画面に、この炎天下、長袖長ズボンを着た男の人達が、長い棒を持って振り回したり、私でも鷲掴みできそうな小さな球を投げたりしている。
 事前に学習した内容を頭の中でぱらぱらめくり、それは野球という球技であろうと見当をつけた。確か日本では一番人気のあるスポーツだったはず。
 そんな玄関前には、大抵所狭しと鉢植えの植物がおかれ、燦々と降り注ぐ太陽を浴びて、さすがにぐったりと葉をたれ下げている。
 ただ、サボテンだけは様子が違うみたい。
 小指ほどの太さと長さの、産毛のような刺を体中にまとったのが、大きな鉢一杯に群がるように広がって、もう元気一杯って感じ。
 そんなこんなを眺めながら先を進んでいた私は、ふと地面に根付いている植物の姿がほとんどないことに気づいた。まだ500メートル程しか進んでいないと思うけど、地面に見える緑は、舗装された道の所々に出来たひび割れから顔を出す名も知れぬ草ばかりで、木と言えるようなものは全然ない。
 完全に緑不足。
 過ごしやすいバイロン湖畔の、柔らかな草原や深い森の緑とは全く縁のない世界。
 その上とにかく目にも耳にも雑然とした混沌が飛び込んできて、ここにいることその物が、妙な不安をかき立てる。
 全くの異国の見知らぬ町を、たった一人で歩いているのだから、その感覚は当然と言えば当然なのだ。郷に入りては郷に従え、って言う日本語も私は覚えている。だから、これはこれとしてしっかり目に焼き付けておけばいいこと。
 私は少しでも日陰を選びながら、そう自分に言い聞かせて更に先を歩いた。
 実際、目が見えるようになってからの私は、まさしく好奇心の塊だった。
 目で見えるもの全てに強い興味を覚え、少しでもその姿を目に焼き付けたくて仕方ないのだ。
 でも、そんな風に考えられるようになったのはまだ最近のこと。
 初めのうちは、耳と手触りだけの暗黒の世界に、急に光が射しこんんで来たものだから、全く目が眩んでそれどころではなかった。
 そもそもそれまで暗黒とは何かすら理解してなかったし、目が見える、と言うことを想像もできなかったのだから、私の驚きと戸惑いはほとんど恐怖そのもの。博士が根気よく献身的にリハビリテーションしてくれてなかったら、そしておじいちゃんが泣いて喜んでくれていなかったなら、私はもう一度目を見えなくしてくれるよう本気で博士に頼んでいただろう。
 それくらい、視力というのは刺激の強いものなのだ。
 でも、それにようやくの思いで慣れた私は、その裏返しのように、目に見えるあらゆる物を見て、手触りや香りで刻まれていた過去の記憶に、新たなページを書き込むことに夢中になった。
 今まで甘い香りとしなやかな肌触りで覚えていた花が、本当にきれいな色をしていることに興奮したり、冷たいだけだった雪が、奇跡のように純白で穢れない色をしていることに感激した。
 中でも湖に架かった虹の姿には、深い感動を覚えた。
 雨の後の澄んだ空気の中に、きらきら輝く湖面の上で音もなくかかる巨大な橋。赤から紫まで、この世の全ての色を順に並べたその橋の美しさは、涙がこぼれそうになる位素晴らしかった。
 北の方の神話では、あの虹を渡っていくと神の国に行けるんだそうな。私は、その虹が消えて見えなくなるまで、半ば本気で、いつの日かあれを渡ってみたいと願っていた。
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