シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

サウスバウンド

2007-10-02 | シネマ さ行
森田芳光監督の作品ってまだ好きって思ったものがなかったのですが、この作品は結構好きだったな。

最近、「空気読めない」(「KY」って言うらしいですね)っていう言葉がはやってますが、これってどこから来たんでしょうか?お笑い芸人の「空気読めよー」ってやつから?この言葉自体は昔からあるわけですが、最近妙にはやりだして、しかもそれができないとすべてを否定されるみたいな言葉になってませんか。「空気読めない」でその人の評価が下るってすごい怖いことやなぁってワタクシは思ってたんです。なんか、その場にそぐわないこと言うなよ、分かってるやろな?みたいなね。全体主義的な怖さを感じるんですよねー。多数派に意見するなよ、みたいなね。確かにワタクシも日常生活で「空気読めよー」って思うことはあるにはありますが、少数派の有意義な意見までその言葉で一刀両断にされちゃうんじゃないかっていう怖さがあるんです。

なんで、急にこんなことを書いたかと言うとですね、この物語のお父さん豊川悦司がまさにその「空気の読めない」人なワケです。昔、学生運動に身を投じた革命の闘士で、過激派でアナーキスト。今は売れない作家のようなんですが、誰もが「当然」と思って、と言うよりも、特に疑問も持たずに何も考えずに国や公のサービスに支払っているお金なども、きちんと自分が納得しないと支払わない。家庭訪問に来た息子田辺修斗の担任に「徴兵制をどう思うか?」なんて質問をぶつけたりする。あぁ、空気の読めない人だ。。。こんな人、周囲にいたら確かに困るけど、全員が見事に空気読んじゃって、誰も何も言わないよりずっといいな。だから、ワタクシはこのお父さんが子供たちに「俺の真似はするな。俺は極端だからな。でも、おかしいと思ったことにはきちんと声を挙げろ」というところにジンときました。

沖縄の巡査役で登場する松山ケンイチくん。彼は演じる役によって、全然違うふうに見えますね。ここまで、実力派な若手ってそうそういないのでは?「L」のときも度肝を抜かれたけど、今回も違う意味で驚きでした。この先がめちゃくちゃ楽しみな役者さんです。

その他のところでは、子供たちの演技がヒドすぎるのと、西表島の人たちの演技がヒドすぎるので閉口してしまいました。カツアゲした子供が「まだなんかくれんのかい?ベイビー」なんか言うかぁ???(これは演技じゃなくて台本の問題ですが)西表島の人たちは素人なわけで、彼らが悪いわけでは決してありません。素人なんだから下手で当たり前。それを素朴な演出として利用した製作者側にはかなり問題があると思う。地元の人の素朴な演技が映画に味を加えることってもちろんあるけど、今回のはいくらなんでもヒドかったな。。。

どうやら、原作を読んだ人にとっては、ヒドいできばえの映画のようです。森田監督は「模倣犯」のときも原作をめちゃくちゃにしたと言われていましたね。「模倣犯」もワタクシは原作は読んでいなくて、映画だけ見たんですが、「模倣犯」は映画だけ見た人間にとってもヒドい映画でした。今回のは、映画だけの人には、まぁちょっと突っ込みたいところもありながらもなかなかいけるんじゃないでしょうか。

オマケ「パイパティローマ」ってなぁんか聞いたことあるなぁ、でも、なんやっけー?って思ってたら、実際に伝承されている伝説の島なんですね。きっとどこかで小耳に挟んだことがあったんでしょう。


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