孤児のヒューゴカブレエイサバタフィールドは、時計職人のお父さんジュードロウを亡くし一人で駅の時計台に秘かに住んでいた。ヒューゴはお父さんが博物館からもらってきた機械人形を直すために日々機械の部品となるものを集めている。そんなある日、駅の中にあるおもちゃ屋のパパジョルジュベンキングスレーに泥棒だと言われ捕まってしまい、お父さんの残した手帳を没収されてしまう。手帳を取り戻すためにパパジョルジュのおもちゃ屋で働くことになるヒューゴ。パパジョルジュとママジャンヌヘレンマックロリーが育てている少女イザベルクロエグレースモレッツと親しくなり、イザベルが持っている鍵のペンダントがヒューゴの機械人形を動かす鍵だと分かる。
イザベルとその人形とのつながりは一体なんなのか?鍵によって動いた機械人形が描いた絵はお父さんが初めて見た映画だと言っていた「月世界旅行」の絵だったし、絵の最後には「ジョルジュメリエス」とパパジョルジュのサインが入っていたが、それは一体どういうことなのか?本当のことを言いたがらないパパジョルジュの陰で二人はパパジョルジュの過去に迫ろうとしていた。
映画の原題はシンプルに「Hugo」だけど、原作本の題名が「The Invention of Hugo Cabret」なので「ヒューゴの不思議な発明」という邦題になったのだと思うのだけど、この題名と宣伝の仕方によってどうも「ハリーポッター」のようなファンタジーアドベンチャーものだと思って見に行った方が結構いたかも。多分、そういう感じのものを期待していった方はがっかりされたでしょう。イジワルな見方かもしれないけど、宣伝部はわざとミスリードしたのかな?と思ってしまいます。
実はこの作品はそういうアドベンチャーものではなく、ヒューゴという少年がジョルジュメリエスという映画の創世記に大活躍した映画監督の半生をたどるファンタジーとなっています。
まず「ジョルジュメリエス」という名前を聞いてピンと来る方は映画好きな方と言えるでしょう。ワタクシは小さい時から映画が好きで映画の創世記のころのことも色々と調べたりしたことがあるので、この作品に登場するリュミエール兄弟が世界で初めて開発したシネマトグラフによる「工場の出口」の映像や「ラ・シオタ駅への列車の到着」の映像のときに観客が汽車が自分たちのところに突っ込んでくると思って慌てて席を立ったエピソードや、ジョルジュメリエス監督の「月世界旅行」のロケットが月の目に刺さる映像、その後のバスターキートン、チャーリーチャップリンなどなどの映像にただただ心が熱くなってしまいました。多分、「映画」というものにそこまで思い入れのない人が見てもただの古い映像の羅列にしか過ぎないシーンなのかもしれませんが。
ヒューゴが直した機械人形をきっかけに、過去を封印していたパパジョルジュが心を開き、それによってすべて失われたと思われていた彼のフィルムが探し出される。ヒューゴの探究心は思いがけないところへ影響を及ぼし、パパジョルジュの、そして彼の家族、ファンの人生に大きな影響を与えた。そして、それによってヒューゴ自身も救われるという、実在の人物を基にしてはいるけれども非常によくできたフィクションとなっている。
ヒューゴを演じるエイサバタフィールドくんが「シックスセンス」に出てくる幽霊のようだし、奇妙な機械人形はちょっと気持ち悪いし、ベンキングスレーのメイクが奇妙だなぁなんて思いながら見始めていたんですが、最後にはそんなことは全部忘れてじーんと涙まで流してしまいました。
マーティンスコセッシがなぜこんなファンタジー映画を?と最初は思っていたワタクシもかなり納得の「映画の夢」と「映画への愛」が詰まった作品でした。
オマケ1サブストーリーのひとつとして、ヒューゴが暮らす駅のカフェのマダムフランシスデラトゥーアとお客さん(?)ムッシュフリックリチャードグリフィスの恋模様が描かれるのですが、この二人は「ハリーポッター」のハグリットの恋人マクシーム先生とハリーの養父バーノンダーズリーだったのでちょっと笑ってしまいました。
オマケ2自分の作品に登場するのが好きなスコセッシですが、今回も登場しましたね。探しながら見るのも面白いかもしれません。
オマケ3鉄道公安員サーシャバロンコーエンが連れているドーベルマンが駅の床をつるつる滑りながらヒューゴを追いかける姿を見て大型犬飼いのワタクシとしては、そんなところを走らせて関節は大丈夫?と変な心配をしてしまいました。
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iinaのブログにも、「総天然色」と「封切」という言葉を置きましたが、いまの若い人なら気にもせず読み過ごすでしょうが、さいきんは使われぬシネマ・スコプ等の映画用語ですから、反応される方は相応な歳の方です。
今でこそ笑い話な逸話を組み込み、感傷を刺激するなんて憎い演出でした。
最近「封切」という言葉、あんまり聞かないようになっている気がしますね。どうしてなんでしょうか?
フィルム一枚一枚に色を塗ってカラーにしていたという話を初めて知ったときにはものすごく感動したのを覚えています。
この作品を見て映画の創世記に興味を持つ方が増えるかもしれませんね。