シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

42~世界を変えた男

2013-11-13 | シネマ は行

黒人初のメジャーリーガー、ジャッキーロビンソンチャドウィクボーズマンのお話。日本人メジャーリーガーが増え、テレビでもメジャーリーグのニュースをよく目にするようになり、選手を始め監督や審判が全員背番号「42」をつけてプレイするロビンソンデーのことを知っている人も多いかもしれない。ジャッキーロビンソンがつけていた「42」番は現在ではアメリカの全球団の永久欠番だ。

1945年、ニグロリーグで活躍していたジャッキーロビンソンをドジャース(当時はブルックリンドジャース)のオーナーブランチリッキーハリソンフォードが周囲の反対を押し切り、ドジャース傘下のモントリオールロイヤルズに入団させる。マイナーリーグで活躍したロビンソンは1947年メジャーへと昇格。様々な困難を乗り越えて新人王を獲得。その後も大活躍する選手へと成長する。

ザ・伝記もの、ザ・野球もの、といった雰囲気の作品でまぁほぼ確実に外さないだろうといった感じの教科書通りの映画。ワタクシは野球が好きだから飽きることなく見ることができました。

ただ、ロビンソンへの差別の様子が随分マイルドに描かれているなぁという気がしました。もちろん、町中で脅されたり、何百通もの脅迫の手紙が届いたり、相手チームの監督ベンチャップマンにしこたま野次られたりと、見ていて気分が悪くなるようなシーンもありましたが、当時の人種差別主義者の黒人に対する憎悪というのはあんなもんじゃなかったんじゃないかなぁと思います。おそらくこれは製作者側の意図的なものかなぁと。ロビンソンとブランチリッキーの偉大な功績を素直に称えるというほうに重点を置きたかったのかなと思います。

差別主義者とそうでない人たちの印象的な描写としては、野球場でロビンソンに「ニガー」という罵声を浴びせる父親を見ていた少年が、同じように真似をして「ニガー」と叫ぶシーンがありました。あの子は「ニガー」という言葉の意味を深くは考えず、ただ父親の真似をしただけだったと思うのですが、あんなふうにして差別の気持ちが広がっていくといういい例だと感じました。

差別主義者でない人のシーンで印象的だったのは、ロビンソンが奥さんレイチェルニコールベハーリーと一緒に町を歩いていたときに白人のおじさんがつかつかとやってきて、警戒するロビンソンに「君の活躍を応援している。このあたりの連中はみなそうさ。機会は平等に与えられるべきだ」と言うシーン。人種差別が吹き荒れるアメリカでももちろん良心的な白人だってたくさんいただろう。

南部出身のチームメイト・ピーウィーリースルーカスブラックがロビンソンにブーイングをする観客の前で肩を組んでみせ「家族に僕がどんな人間か見てもらえる。その機会を与えてくれた君に感謝する」と言ったシーンでは涙が出ました。南部で育った彼にとって、それは自分の命を賭けることでもあったと思うのだけど、彼は勇気を持って行動に出ました。ブランカ選手ハミッシュリンクレイターが黒人だからと遠慮するロビンソンにみなと一緒にシャワーを浴びようと誘うシーンも良かったですね。

ピーウィーリースを演じていたのが、あの可愛らしかったルーカスブラックくんだったからビックリしちゃいました。良い役者さんにはなったと思いますが、もうちょっと大きな役をやる人になるかなぁと思っていたんですけどねぇ。

いつも同じ表情、同じ喋り方のハリソンフォードが、珍しくこの作品では特殊メイクをして喋り方も変えてブランチリッキーになり切っています。普通ならアンソニーホプキンスとかトミリージョーンズがやりそうな役なんですけどねぇ。そこまでこの作品に惚れ込んでいたということでしょうね。このブランチリッキーという人は最初は「お金は白でも黒でもない。緑だよ」と言ってロビンソンの入団を黒人客を増やすためとうそぶいていましたが、本当は大学時代に優秀なプレイヤーだった黒人の友人に何もしてやれなかったことをずっと悔いていて、そのつぐないをしたかったんですね。憎いね。



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