シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

グッドライ~いちばんやさしい嘘

2015-04-20 | シネマ か行

予告編を見て面白そうだと思ったので見に行きました。

1980年代にアフリカのスーダンで内戦があり、南スーダンの村を北スーダンの兵士に焼き払われ親たちを亡くした子供たちはエチオピアにある難民キャンプを目指して歩き始める。しかし、途中でエチオピアも危険で引き返してくる一行とともにケニアへと向かう。一行の向かう先に兵士たちがいると分かった子どもたちは兄のテオをチーフとし、妹アビタル、弟マメール、途中で出会った同じ年頃で信心深いジェレマイアと少しやんちゃなポールの5人で団体とははぐれて別の道を行く。みなで休憩していたとき、ひょっこり背の高い草から頭を出してしまったマメールは北の兵士に見られてしまう。慌てて頭を引っ込めたが兵士は「出てこい」と脅してきた。怖くて頭を出せずに隠れていたマメールの代わりに兄のテオが立った。「仲間とはぐれたんだ」とあくまでも自分一人しかいないと兵士に信じさせたテオは兵士に連れ去られてしまう。テオのいなくなったグループはマメールをチーフとしケニアを目指して歩いた。合計で実に1200キロ以上もの距離を子どもたちだけで歩いたのち、やっとケニアにたどり着く。

ケニアの難民キャンプ。13年後。なんと13年もの間彼らは難民キャンプの中だけで生活をしていた。大きくなったマメールアーノルドオーチェン、アビタルクオスウィエル、ジェレマイアゲールドゥエイニー、ポールエマニュエルジャルはアメリカの支援団体がいつか自分たちをアメリカへ亡命させてくれるものと信じ仲良く暮らしていた。そして、ついに彼らにそのチャンスが巡ってくる。彼らの行先はカンザスシティー。飛行機に乗せられた彼らの胸は希望でいっぱいだった。

しかし、その希望はアメリカ・ニューヨークの空港で打ち砕かれた。支援団体のポリシーで女性は一般家庭にホームステイし、男性はユースホステルのようなところで共同で暮らすという規則になっており、アビタルだけがカンザスシティーではなくボストンに行くことになっていると聞かされる。この時の全員の悲痛な涙。正直、最初のほうの彼らがサバンナをずーーーっと歩いているシークエンスはちょっと長すぎるなぁ、ここはもうちょっとはしょっても良かったんじゃないの?と思いながら見ていたのですが、この空港の場面で気持ちが変わりました。あんな辛い内戦を経験し、キャンプにたどり着いてからも13年間片時も離れることなく一緒にいた彼らが団体の規則で簡単に引き離されてしまった。彼らの悲しみと不安、そして、絶対に何とかしてまたアビタルと一緒に暮らせるようにするんだという決意が、あの最初のシークエンスがきちんと描かれていることですごくよく伝わってきました。

カンザスシティーに着いたマメール、ジェレマイア、ポールを迎えに生きたのは職業紹介所のキャリーリースウィザースプーン。彼らに職業を紹介して終わり、となるはずだったキャリーと彼らの関係が徐々に深まっていく様子が描かれていく。

アメリカに着いてからしばらくは、かなり笑えるシーンが続きます。まずは機内食で出てきたパンに塗るマーガリンをどうしていいか分からずべろっと全部食べてしまったり、携帯電話で話すキャリーのことを独り言を言う人だと思ったり、マクドナルドのジュースのストローをどうするのか分からなかったり、キャリーが年頃をとうに過ぎた女性なのに結婚していないことを不思議がったり、キャリーが何度も電話しているのに電話など見たこともない彼らは何かの警報が鳴っていると思って放置しキャリーを心配させたり、キャリーの上司ジャックコリーストールの持つ牧場で「危険な動物はいますか?ライオンとか?」と言って冗談だと思われたり、まぁとにかくカルチャーギャップが笑えます。スーダンでは普通なんだろうけど、大の男3人で手をつないで歩くマメールたちが可愛いんだー。ジャックはギョっとしていたけどね。

なんかねー、こういうの、日本人だったら事前に詳しく講習会とか開いているような気がするんだけど、そんなことよりとにかく助けましょうって感じで飛び込ませてしまうところがアメリカ人っぽいなぁと思いました。良い意味で。

徐々にアメリカの生活に慣れようと頑張る彼らだったが、次第に現状への不満から不協和音が聞こえ始める。学校も行き始め仕事も順調なマメールと違い、ポールは職場でいい加減な仲間と付き合うようになり、問題行動を起こし警察に捕まってしまう。迎えに行ったキャリーたちの前でポールはマメールがアビタルを行かせたこと、サバンナでテオを死なせてしまったことをなじりケンカになる。アビタルが一緒にいられないことが彼らにとって非常に大きな問題であるということを改めて認識したキャリーはアビタルのホストファミリーになることを決意する。

アビタルがカンザスシティーにやってきてポールたち3人は大喜び。これで何もかもまたうまくいきそうになった。そんな時アビタルがキャンプから手紙が来たことをマメールに知らせる。それはある男がキャンプに来てアビタルとマメールのことを探していた、と知らせる手紙だった。2人を訪ねてきたある男。家族の誰かとしか考えられない。兵士に連れ去られたテオは生きていたのでは?

マメールは妹と弟がこちらにいるのだから、兄のテオもアメリカに呼んでほしいとキャリーたちと一緒に移民局に訴えるが、時はニューヨーク同時多発テロの後の世界。マメールがアメリカに来たころとはすっかり事情が変わってしまっていた。テロ支援国に指定されているスーダンの難民をもうアメリカは受け入れてはいないと言うのだ。

それでも現地に行ってテオ本人を探し、なんとかビザを発行してくれる大使館を探そうとマメールは独りケニアの難民キャンプに戻っていく。ついに再会することができたテオとマメール。テオはリウマチを患っていた。そんなテオをアメリカに連れ帰ろうと必死で大使館めぐりをするマメール。ある日、ついにビザが取れたよとテオと一緒に空港に向かった。出国手続きの列に並びながらマメールはテオに「これからはいつ誰に聞かれても名前はマメールと言うんだよ」と言う。実はテオのビザは降りておらずマメールになりきって出国させるつもりだったのだ。驚くテオだったが、マメールの決断を受け入れる。病気のテオをアメリカに行かせて自分は難民キャンプに戻り医師の手伝いをすると言うマメール。これは「良い嘘(グッドライ)」なんだとテオに言い聞かせて。

もう後半はずっと泣き通しでした。悲しい涙もあれば温かい涙も。後半というかワタクシ、JFK空港でアビタルだけ引き離されるところですでに泣いていたんですけどね。。。キャリーが「彼らにさよならって言うと死ぬほど寂しい顔をするのよ」と彼らのことを言っていた時も泣けたな。それだけで彼らの受けた悲しみを想像してあげられたキャリーの優しさに胸を打たれました。彼らがキャリーに「偉大な白い牛」というあだ名をつけたのも納得です。

マメール以下スーダン難民の役は実際に難民だった人たちが演じています。ジェレマイアとポール役の人は少年兵にされていた経験もあるのだとか。なぜかまったく宣伝されていない作品ですが、非常に良い作品なのでぜひたくさんの方に見ていただきたいです。



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