シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ブローンアパート

2014-07-17 | シネマ は行

ケーブルテレビで見ました。見終わって、あー、これ多分巷の評判は悪いんだろうなぁと思いながらネットで調べてみるとやっぱりあまり良くありませんでした。

警察の爆弾処理班に所属している夫と4歳の息子と暮らす母親ミシェルウィリアムズ。息子のことを深く愛していて、夫も息子のことは大切にしてくれているが夫婦間はあまりうまくいっていない雰囲気。そんなとき近所に住む記者ジャスパーユアンマクレガーにバーで言い寄られた彼女はジャスパーと関係を持ってしまう。一晩限りのことと割り切ったつもりだった彼女だが、夫と息子がサッカーの観戦に出かけた日ジャスパーを自宅に招き入れまた関係を持った。まさにその不倫の最中に、サッカースタジアムがテロの爆破被害に遭ってしまう。

夫と息子を亡くした彼女の苦悩を描くこの作品。原作は「息子を奪ったあなたへ」というタイトルの本だ。あなたへというのはビンラディンのことで、彼女はカウンセラーにビンラディンに手紙を書くことを薦められる。

のですが、、、

不倫相手の記者が犯人探しに走ったり、夫の上司が言い寄ってきたりで、なんだか話の焦点が定まらない。上司といい仲になりそうになった途端、実は上司はスタジアムがテロの標的になっていたことを知っていたとか、そういうことを記者がばらしたりとか。

そのあたりの展開はなんかねぇ、どーでもえーわ。っていう感じで見てました。犯人捜しのミステリーとして見ていたわけではなかったので。

その結果分かった犯人の息子との交流は犯人の奥さんも含めてもっと深く突き詰めて欲しかった。犯人の家族はテロのことを何も知らなくて、その相手と被害者の遺族が人としてどう関われるかというのは物語として掘り下げるに値すると感じました。この作品で表現されていた交流の部分はとても良かったと思います。

最後にこの母親は妊娠していることが分かり、(誰の子かは分かりませんが)ビンラディンに対して、自分たち(ロンドン)はゾンビのように立ち上がり、何度でも何度でも再生すると宣言するところで泣いてしまいました。そして、私なんかよりずっと頭の良いあなた(ビンラディン)なら世界を良くする方法が分かるはず。ともに世界を良いところにしていきましょう。というメッセージにはもちろん、そんなうまいこと行くかいなという気持ちはありつつもそのストレートさにふいに心を打たれました。

まー、不倫してた女が何言うてんねん!と怒り爆発の人にとっては彼女が何を言っても心に響かないのかもしれませんが、ワタクシは不倫をしたことと彼女が息子を亡くした悲しみとは別だと思いながら見ていたので、彼女の気持ちに共感することができました。

原作を読んでいないので、原作通りに映画化したらこうなったのかどうか分からないのですが、この母親の悔悛と再生を描いた最後の数十分にもっとフォーカスして、もっと言えばそこだけを焦点にして撮ったほうが良かったのではないかなと思いました。彼女が書いたビンラディンへの手紙をもっとたくさん読んで、時と共に変わって行く彼女の心情を見せて欲しかったです。

ネットのレビューを読むとミシェルウィリアムズに生活感がないと書かれている方が結構いたのですが、世間の彼女のイメージってそうなんですかねぇ?ワタクシは彼女は可愛らしいけど特に美人ってわけでもないし、貧乏くさい感じが似合うと思っていたので、この役はぴったりだと思ったのですが。そういう演技もうまいと思うんだけどな。

原作がそうなのかもしれませんが、主役の彼女は「若い母親」その息子は「男の子」(字幕では「坊や」)としか役名がなく、おそらくこれはすべての人の物語として名前をつけなかったのかもしれませんが、字幕で「坊や、坊や」と書かれるとなんか違和感があって、少しあざとさも感じました。普通にどこにでもあるようなボビーとかケヴィンとかつけてくれたほうが良かったな。

こうして書くとこーして欲しかったあーして欲しかったと注文ばかり書いているようになってしまいました。テロ、事件、ミステリーものと期待して見てがっかりした方が多かったようですので、最初からドラマとして見ていただければもう少し評価も上がるのではないかなぁと感じた作品でした。