シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ファーストフードネイション

2013-07-17 | シネマ は行

同名のノンフィクション小説をリチャードリンクレイター監督が映画化した作品。原作はファーストフード業界のルポを基に、業界の実態を暴くもの。

大手ハンバーガーチェーン、ミッキーズのマーケティング部長ドングレッグキニアはビーフパテに糞便性大腸菌(つまりはフン)の混入の調査のためにパテの工場があるコロラドへ出張してきた。工場の見学を一通り終え徹底管理された最新の工場には何も問題ないように感じたが、あまりにも完璧過ぎて何かがおかしいという気持ちを拭えずにいた。

一方メキシコとアメリカの国境から密入国してきたメキシコ人たちはその精肉工場での職を斡旋してもらう。

最初から最後までアメリカ(他の先進国も含め)が抱える問題のオンパレード。ストーリーを通して&登場人物が語るセリフを通してどれだけたくさんの問題が挙げられたろう。思い出せるだけ書いてみる。

・ビーフパテへの糞便性大腸菌混入。
(工場でのラインが早すぎて解体のときにフンが混じる)
・不法移民
・不法移民の仲介で儲ける人たち
・不法移民を不法就労させている工場
・そこでのセクハラ、ドラッグ問題
・不法移民が就労中に大ケガをしても知らん顔の会社
・ファーストフード店の衛生観念
・ファーストフード店での防犯カメラが客ではなく店員に向けられていること
・牛の飼育環境(汚染されたエサや狭い飼育スペース)
・牛の糞便を河川に流し汚染している
ちらっと会話に登場するだけのもので
・銀行の不動産投機
・わざとケージを狭くして客に可哀想と思わせ買わせるペット産業
・南アのアパルトヘイト問題
・森林伐採問題

と、ざっと挙げるだけでもこれだけある。ワタクシが思いだせていないものもまだあるかもしれない。

これだけの問題を織り交ぜながら一応のストーリーとしてはちゃんと筋があるものが作れているというのが結構すごい。ポスターや結構豪華なキャストからもう少しユーモアのきいた笑える作品だと思ったけど、笑えるシーンってのはほとんどなくて割と真面目に語られるお話だった。と言っても小難しいところは全然なくてすんなり入り込みやすい作品だと思う。

ブルースウィリス演じるドンと同じ会社の社員が「大人になれよ。100%安全なもんなんてこの世に存在しない。パテに牛の糞が混ざってるからなんだってんだ。火を通すんだから問題ねぇよ」と言っていたのにちょっと笑ってしまった。まぁねってなんか説得されてしまいそうになる。自分たちの口に入るものを他人任せにしている以上100%の安全なんてどこにもないんだろうなと思う。そのリスクを背負いながらワタクシたちは日々食事をしている。この日常を変えようと思う人は自給自足の生活を求めていくだろう。でもワタクシは今日も明日もハンバーガーを食べるなぁ…もうこれは覚悟の上の選択です!としか言いようがない。でもこういう消費者が世界をダメにしているという面もあり…

結構豪華なキャストが揃っているのでそれだけでも見ていて楽しいです。リンクレーター監督お気に入りのイーサンホークとか。歌手のアヴリルラヴィーンも問題意識を持っている高校生役で登場していました。意外と演技もイケるかも。

色んな問題を提起して特に解決するとかはなく(現実的に解決していないのだからそりゃそうだろう)、最後に主人公もすべての裏を知りつつ新商品(偽)BBQ味バーガーを提案する。現実問題は別として映画のラストとしては皮肉っぽくて面白かった。