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シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

チェンジリング

2009-03-06 | シネマ た行
主演アンジェリーナジョリー、監督クリントイーストウッドの映画。初めてこう聞いたとき、とても驚いたのを覚えている。イーストウッドはもうハリウッドの長老と言ってもいい存在で、昔はすごくワイルドだったけどそれは彼が若いころ演じた役のせいで、実際の彼は紳士的な初老の男性というイメージだ。一方アンジーのほうは、ブラピとの生活や子供たちや、彼女自身の人道的な活動のおかげで最近は丸くなったとは言え、やはりまだまだワイルドなイメージを持っていた。イーストウッドが自分の映画の主演にアンジーを選ぶなんて、ワタクシにとってはとても意外だった。アンジーがイーストウッドの期待に応えられるのか!?と彼女のファンとしては少し心配だったのだ。もちろん彼女の演技力はもうお墨つきなんだけど、イーストウッドテイストにはどうだろう?と疑問だった。

1920年代後半から1930年代にかけてのお話。人々は現代人とはかなり違う。女性は特に違っただろう。そんな時代の仕事のできるシングルマザーをアンジーは実にうまく演じた。彼女が演じたクリスティンコリンズは非常に難しい状況におかれるのだが、彼女の抑えた演技と、感情を爆発させるときの演技、どちらも本当に素晴らしかった。心配していた自分が恥ずかしい。

一人息子が失踪したというだけでもかなりまいってしまう状況なのにもかかわらず、まったくの他人を息子だと言って帰され、その子までが自分がウォルターだと主張し、警察に訴えれば訴えるほど頭がおかしいと扱われ、とうとう精神病院にまで送り込まれる。誰がどう考えてもおかしな状況で、歯医者や学校の先生が戻ってきたウォルターは偽者だと主張しているのに、警察は自分たちの非を認めたくないためにクリスティンを狂人扱いする。警察も自分たちのやっていることは重々承知の上だろう。それでも、そのパワーをフルに利用し、警察に刃向かうもの全てを押さえつけようとする。クリスティンの件がまかり通ったのは、このときのロス市警が腐敗しきっていて、市民も警察に不満は持ちながらも、警察ににらまれるのが怖いために行動を起こせなかったからだろう。

クリスティンは、はからずも結果的にこの警察権力と戦った女性というふうになってしまうのだけど、それはひとえに彼女の母親としての強さがあったからだろう。ウォルターはどこかで必ず生きている。その想いが彼女をそこまでさせたのだろう。本当は警察権力を失墜させることなんて彼女にはどうでも良かったのだと思う。でも、彼女はたった一人の息子を取り返すために警察と戦うはめになってしまう。そんな事態を招いたのは他でもない警察であり、結局警察は墓穴を掘ったということなのだが。

映画としては少しスリリングさに欠けるところがあるとは思うのだけど、クリスティンの母親としての強さにスポットを当てた場合、あのような演出になるのはある程度理解はできる。あの当時、特に女性がどれだけ警察だけでなく社会において、下等なものだと見られていたかということが、精神病院に入れられている娼婦キャロルエイミーライアンとクリスティンの会話において、垣間見ることができるようになっていたり、クリスティンの事件と重大なかかわりを持ってくる連続殺人事件が明らかになるシークエンスなどはさすがのイーストウッドの演出と言えると思う。静かではあるが、全体的にとても丁寧に作られていることが観客に伝わる素晴らしい演出である。(娼婦のキャロルに「適切な言葉で話さなきゃだめよ」と言われて、お上品なクリスティンが医者に「FUCK」という言葉を使うシーンは胸がスカッとしたな)

演技に関して言えば、先に書いたアンジーだけでなく、憎むべき警部役のジェフリードノヴァンも、観客が本当に心の底から憎ったらしいと思ってしまうほど良い演技をしているし、出番は非常に少ないけど、クリスティンに協力してくれるハーン弁護士ジェフリーピアソンも登場シーンすべてにおいて、大きな存在感があって、役のせいもあるけど、ものすごい安心感を感じさせてくれた。ジョンマルコヴィッチの演技についてはここで語る必要もないだろう。彼の普通に善人の役ってめずらしいな。しかし、彼が敵役だと絶対に勝てない気がするけど、今回味方で本当に良かった。

最後にウォルターと一緒に誘拐されていた少年が5年たって出てくる場面では、クリスティンはそれがウォルターではなかったことに大きな落胆を覚えたに違いないのに、同じ立場であったその子の母親を祝福し、彼が戻ってきたことが、ウォルターが生きているかもしれないという希望につながったというのが、母って偉大だなぁと思わせた。

ウォルターをかたっていた少年が最後に警察に自分がウォルターだと言えと言われたという場面が少しだけあるけど、そこの部分があまり突っ込まれていなくて、本当にあの子は警察に脅されたかうまいこと言われたかしたのかどうかよく分からないまま終わってしまったのが、唯一残念だった。

オマケChangelingってどういう意味?と思って調べると「取り替えられた子、すりかえられた子」とあった。え?なんでそういう言葉にひとつの単語が独立して与えられてるわけ?と思ってもう少し調べると、西洋の伝説で人間の子供がフェアリーやトロールの子と取り替えられるというお話の伝承があったらしく、事実としては発達障害や自閉症の子が昔は理解されていなかったため、この子はトロールの子に違いないというふうに思われていたということらしい。

ディファイアンス

2009-02-24 | シネマ た行
第二次世界大戦中、ベラルーシで同胞のユダヤ人と森の中でコミュニティーを作り上げ、ナチの虐殺から1200人もの命を救ったビエルスキ兄弟のお話。

最初、長男でこのコミュニティーのリーダーとなるトゥヴィアを演じるダニエルクレイグが、「え~ジェームズボンドやもん。そりゃ、強いしナチからも守ってくれるんちゃうん?」っていうふうに感じてしまって、ちょっとミスキャスト?って思ったんだけど、物語が進むうちにもう彼がジェームズボンドであることなどまったく忘れて、一人の寡黙な悩めるリーダーにしか見えなくなったのは、ダニエルクレイグのしっかりした演技力にあると言えるのだろう。彼が演じたトゥヴィアはカリスマ性を持ちながらも、生まれながらのリーダーという感じではなく、この過酷な状況下で誰かがみんなを引っ張っていかざるをえないという状況で、自分でも意識しないうちにリーダーになっていたという感じだった。それゆえに人間らしく悩んだり、苦しんだり、個人的な感情と戦ったりとさまざまな面を見せてくれて、とても魅力的な人物像ができあがっている。

その長男と対立する次男ズシュにはリーブシュライバーがキャスティングされている。彼はお兄さんよりもひとまわり大きく、武闘派な感じがよく出ているし、ダニエルクレイグよりもロシア語は上手だったような気がする。(いや、ワタクシ、もちろんロシア語なんてぜんぜん分からないから実際にロシア人が聞いたらどう思うのかは分からないけど)途中で仲たがいして、ロシアのレジスタンスに加わってしまうこのズシュだが、長男とは対立しつつも、いつも兄弟を想うことを忘れない心優しい男だということはきっとみんな分かっていただろうし、最後の瞬間に助けに来てくれるシーンは涙なしには見られない。この長男と次男が戦後アメリカに渡ってからもずっと一緒に商売を続けたということからも、本当はお互いを大切にしあっていたということがよく分かる。

ユダヤ人たちを取り囲むロシア人レジスタンスの思惑や、一般のロシア人でユダヤ人を助ける人たちのことなどもきちんと描かれていた。中でも、ユダヤ人を助けたことによって夫がナチに殺されたあとも夫の遺志を継ぐかのように助けてくれた奥さんが印象的だった。夫が生きていたときはユダヤ人を助ける夫に文句ばかり言っていた奥さんだったけど、本当は心の中でそんな夫の行く末を心配し、きっと誇りにも思っていたんだろうなと思えた。

こういう物語だから、数々泣けるシーンがあって、そのほとんどが悲しみや無念の涙なんだけど、唯一このビエルスキ兄弟の三男アザエルジェイミーベルの結婚式のシーンは、なんとも言えない不思議な涙がこぼれた。粉雪の舞い散る森の中、ささやかな結婚式。ナチから逃れて希望のないユダヤ人たちにとって、この結婚式が意味したものはとても大きかったんじゃないかと思えた。結婚がいいことばかりじゃなく、離婚するカップルも多い中でも、なぜか結婚式には希望というものを感じるなぁ。そして、さらにこのコミュニティーでは物資不足などで育てていけないため子供を持つことは禁じられていたが、戦争の中でドイツ人にレイプされた女性が身ごもっていて、その出産をトゥヴィアが許すシーンもすごく泣けた。たとえ、レイプされた子供でも、この状況下で身ごもった母親にとっても唯一の希望はこの赤ん坊だということに、悲しみとも感動ともどちらとも言える涙が流れた。

ナチスから逃れて森で生活したなんて言うから、せいぜい30人とかくらいかと想っていたら最終的には1200人ものユダヤ人がこのコミュニティーの中で生活し、最後に解放されたときにはその中に学校や病院、教会まであったというからオドロキだ。ユダヤ教というのは選民思想で、神は私たちユダヤ人を選んだと思っている彼らだが、信心深い教師までもが「次は別の民族をお選びください」と言ってしまうほどの状況の中で何年間も隠れて生き延びた1200人。そして、そのコミュニティーをまとめたビエルスキ兄弟。戦後彼らがこの出来事をあまり吹聴してまわらなかったのは、生き延びるためとは言え、農民から食物などを略奪したりしたこともあったからなのかもしれない。トゥヴィアが「こんな状況でもわれわれは獣ではない。人間らしく生きて死のう」と言うが、やはりこんな状況下ではそのボーダーに立たざるをえなかったのだと思う。

映画としての演出はさすがのエドワードズウィック監督で、見所もたくさんあり、ハラハラするシーンもたくさんあり、彼らしい骨太さと繊細さが絶妙に入り混じった演出で、戦闘シーンの荒々しさと彼らの心情がどちらも取りこぼすことなく描かれているところが素晴らしい。ユダヤ人に見えないキャストも多いし、英語とロシア語が入りみだりたりとちょっぴり変なとこもあるけど、細かいことは気にせず、いい物語に浸ってください。

オマケ隣に座っていた60代のおじさんが涙もろいワタクシよりも泣いていて、全然関係ないのにちょっと親しみを感じてしまいました。

チェ 39歳別れの手紙

2009-02-06 | シネマ た行
「チェ 28歳の革命」のレビューで「39歳別れの手紙」を見てからでないとこの2作品の真価は分からないと書いた。そして、“チェの部隊を密着取材しましたって感じ”とも。残念ながら、今作もまさに“チェの部隊を密着取材しました”でした。これがドキュメンタリー映画でないかぎり、それはどうなの?とちょっと思わざるをえなかったな。史実に忠実に、は分かるんだけど、それで映画として面白くなきゃ意味ないような。

今回はボリビアでキューバと同じように革命を成功させようとするチェベニチオデルトロ。このあたりの背景とか、協力しているのは誰かとか、ボリビアの現状はどんなだとか、そういうことの説明が一切ない。語られるセリフから推察はできるが、もう少し深い説明がほしいところ。それくらい知ってるでしょ?とかそれくらい調べて来いよっていうスタンスならちょっと傲慢な気がしたな。

映画の中でのゲリラ戦に占める割合が多すぎるように思う。ゲリラ部隊にいる兵たちが誰が誰だか分からない。もっとチェの内面にかかわる会話とか、そういうものが欲しかった。そんな中、いきなりマットデイモンがカメオ出演するけど、あれはとても余計だと感じた。こんなふうに“こだわって”撮ってるくせに、いきなりあーいうところでビッグネームを登場させる意味があったのかと思う。

「28歳の革命」のほうで「武装蜂起」には抵抗を感じると書いたけど、それについてゲリラの一人が「政府の圧政による暴力には耐えられても、革命の暴力はいけないというのか?」と言うシーンがあり、それにはすごく説得力があった。その説得力でなぜボリビアの農民たちを味方につけることができなかったのか?農民を集めて、現状を打破しようと訴えるシーンがあるがもう少しそういう啓蒙活動が必要だったんじゃないかと思えた。5年も準備したわりにこの失敗はなんだったんだろう?どうせ、この「失敗」のために1作品作るならもう少し掘り下げられたように思う。

チェの理想とか信念というものはある程度伝わってはくるけど、本当に彼がどう感じて日々を生きていたのかまるで分からない。映画館に立ててある宣伝ボードには子供を愛し、家族をすごく大切にしたなんて書かれてあったけど、そんな側面はまったく見えないし、キューバ革命の前に妻子はいたけど、キューバ革命で出会った女性と再婚してるよね。それで「すごく家族を愛し…」とか言われてもよう分からん。(いや、別に離婚再婚を否定しているワケではありません)

チェゲバラという人が偉大すぎて、映画の評価も上がりがちなんじゃないかとさえ思えてしまう。なんかけなしたら悪いな、みたいなね。チェ自身の評価がどうではなくて、映画としてはワタクシはいまいちでした。

オマケ28歳でも思ったけど、39歳ではますますデルトロが古谷一行に見えて仕方なかったです

チェ 28歳の革命

2009-01-22 | シネマ た行
この後に「チェ 39歳別れの手紙」の公開が控えていて、それを見てからしかこの「28歳の革命」の真の評価はできないのかもしれませんが、とりあえず、現時点でのレビューをUPします。

まず、チェゲバラについて、何も知らない人がこの作品を見るのはかなり厳しいものがあると思います。この作品は彼についての多少の知識があるという前提で語られています。だからといってねぇ…東邦さん、映画の前にチェゲバラについての説明とか入れるのってどうですかねー?あれって、この作品の製作者側からの指示なの?それとも、東邦さんが勝手にやってること?なんかさ、テレビじゃないんやからさ、映画って、それを見に行くために下調べしようとか、別に必要ないなとか、そういうこと自分で判断した上で見に行くもんやと思うんですよね。もちろん、最初に多少の説明を入れたらそれは親切なことやと思うけど、製作者側がそれを必要だと感じるなら、それは作品の中で語られるべきやし、配給会社が気を回してやるようなことではないと思う。

と言っても東邦さんの説明を聞いてもぜんぜんゲバラについては分からないと思うので、知らない人は多少調べてから行ったほうがいいかも。

ワタクシ、スティーブンソダーバーグはそんなに好きな監督ではないのでね、あんまり期待しすぎるとあかんなと思って行きました。映画としてはどうですかね。ワタクシとしてはもうちょっとチェゲバラの内面に迫って欲しかったところがありました。1955年カストロと出会って、彼に共感し、彼とともにキューバ革命を成し遂げていく様子と、1964年にアメリカの国連本部に訪れたゲバラが交互に描写されますが、実際にあったことを見せるという感じで、ゲバラの人となりに特に強く触れるという感じではなく、彼の言動を通して見ることができるといった感じでしょうか。彼が自分自身の信念を強く貫いた人だということは分かりました。ちょっとゲリラ戦に割く時間が長すぎるような気はしますね。もうちょっとカストロとの対話とか、民衆側の反応とかを見たかった気がします。これでは、チェの部隊を密着取材しましたって感じが強すぎるなぁと。

カストロとゲバラはキューバを救うために武装蜂起した。この革命はアメリカの傀儡政権を倒すため、弾圧される民衆を救うためのものだった。この「武装蜂起」というものに対しては、複雑な思いを抱かずにはいられないな。カストロもチェゲバラも偉大な人だったことには変わりないんだろうけどね、彼らを偉大な人だと賞賛するなら、いま現在アラブ諸国で起こっているイスラム原理主義者たちの戦いは何なんだろう?と思えてきた。もちろん、一般市民を巻き込むテロというものには断固反対していかなければならないけど、アメリカの傀儡政権や経済的な支配を追い出したいという気持ちはカストロやゲバラと何も違わないんじゃないかという気がするんだけどな。ゲバラ自身も言っていたように、あの革命の成功がもう少し遅かったら、アメリカが軍事介入していたかもしれない。アメリカの軍事介入があったら、それこそいまのアラブ諸国と同じようなことになっていたんじゃないのかな。それともその2つには何か根本的に違うものがあって、ワタクシが無知で知らないだけなのかな?

少し映画から話が逸れました。映画的には先に言ったように、ちょっと物足りなさは感じた。「チェ 39歳別れの手紙」でもう少し評価が上がるといいのだけど。

トロピックサンダー/史上最低の作戦

2008-12-16 | シネマ た行
正直、ベンスティーラージャックブラックロバートダウニーJr.も全員好きとは言えちょっと飽き気味だったので、この作品も見ようか見まいか迷ったんですが、一応アメリカではそこそこ客が入ったみたいだし、見てもいいかなーと行って来ました。

結果は、、、うーん、残念。ですね。

ロバートダウニーJr.はコメディ俳優というわけではないし、今回かなり頑張ってたんで、もう麻薬からもクリーンになってこれからも頑張ってほしいなぁというところですが、ベンスティーラーとジャックブラックはまだ再評価ってワケにはいかなかった。特にベンスティーラーの超アメリカンは笑いは正直ついていけないやね。いや、おもしろいところももちろんあったけどね、それは主役の彼らじゃなくて脇役が面白かったわけで…あ、でも「アルパ・チーノ」は笑った。ジャックブラックはなんでこの映画に出ちゃったんだろう?ベンは監督としてジャックの良さをまーーーーったく表現できてなかった。ジャックがやったおもしろいことは全部編集で落とされちゃったんじゃないの?っていうくらいつまんなかった。

この映画の面白いところはズバリ脇役です。(これ言っちゃうとすごいネタバレなんだけど)マシューマコノヒーニックノルティトムクルーズ!がそんな役で出ちゃうの?って感じだし、それぞれにかなり笑いのウェイトを占めていて主役3人の存在感まったくナシって感じなんだよねー。特にトム様はすごいよー。あんなハリウッドの大物、ほんとにいそうだし。変なダンス踊っちゃうし。なんか悪ノリ?完全にこの映画を独り占めしちゃった感あるもんなー。結局トム様の変装とダンスしか頭に残らなかったみないなね。でも、せめてこれがあって良かったな。これがなかったら、本当の本当にどこで笑えばいいワケ?ってなってたし。あとはジェイバルチルくんがなかなか良かったなぁ。これからも脇役で結構いい評価を受けそうな若手です。(「ミリオンダラーベイビー」でもやしっ子のボクサーを演じてた子なんですね)

でも、アメリカのヤホーを見ると評価は「B」なんですよね。やっぱアメリカではそんなに最悪だと思われたわけじゃないんだな。ベンの超アメリカンジョークはやっぱりアメリカ人にしか分かんないんすかね。

デスレース

2008-11-18 | シネマ た行

「バイオハザード」は結構好きな作品なんだけど、ポールW.S.アンダーソン監督ってそんなにおもしろい印象はなくて、というか「バイオハザード」シリーズはミラジョヴォビッチへのワタクシのひいき目もあるから、それをさっぴくとそのシリーズだけではまだ信用するに至っていないという感じなんですね。主演のジェイソンステイサムもそんなにおもしろい映画に出てる人という印象がワタクシはない。ワタクシがアクション映画好きではないからそれは仕方ないんだけど。というわけであんまり期待せずに試写会に行ってきました。

うん。期待してないで良かったよ。おもしろくなくはないけどね。もっとおもしろくできた素材ではあると思うんだよねー。せっかく元ネタの「デスレース2000」のときよりも、実際の世界で“リアルTV”っていうような企画ものが増えて、このデスレースをテレビ中継してるっていう設定に無理がない時代になったんだから、このデスレースに夢中になって“もっと”を要求する異常な群衆側も取り込んで、色んな側面からこのデスレースを盛り上げたほうがおもしろかったんじゃないかなと思う。視聴者、テレビ局、所長ジョーンアレン、囚人たち。この4つをもう少し関連付けて見せてほしかったなと。

ジェイソンステイサムはそんなに悪くはなかったですね。あの背中の筋肉ムキムキは一体なんなんでしょうか?人間が生きていく上では完全に必要のない筋肉ですね。ジョーンアレンは「ボーンスプレマシー」のところでも書いたけど、年をとるごとに良くなっていく女優さんですね。今回はかなりなBITCHを演じていますが、ヤセこけた感じのキツめの顔でガイコツのようなので、とても似合っていました。ジェイソンステイサムの相棒役を演じるナタリーマルティネスはセクシーな役どころでしたが、もう一押し露骨なセクシーさがあっても良かったかなぁという気がしました。“ナタリーマルティネス”って名前がなんだかすごーーーくセクシーに感じてしまって、ちょっと期待しすぎた感アリでした。(って“ナタリーマルティネス”っていう名前にセクシーさを感じるかどうかはかなり人それぞれ、、、というかワタクシだけでしょうか?)

レース映画ですからもちろん準主役は車なんでしょうけれど、全体が埃色でそれぞれの車の特徴が分かりにくくて残念でした。ワタクシは車に詳しくはないけど、それでもやっぱりこういう映画だとかっこいい車が見たかったな。


敵こそ、我が友~戦犯クラウスバルビーの3つの人生

2008-09-04 | シネマ た行
クラウスバルビーという人のことはまったく知らなかったんですが、予告を見ておもしろそうだったので見に行ってきました。思ったより、観客は多かったです。

常々「戦犯」というものの定義はとてもむずかしいなと思っています。彼らは戦争というイカレタ状況の中で国に洗脳され上官に命令されるがまま非人道的な行為を行ってしまったのか?それとも、自分から率先してそんな行為におよんだのか?その罪は誰が償うべきものなのか?これを的確に定義することは人類には不可能だとは思いますが、このクラウスバルビーという人個人の場合はどうだったのでしょうか?

彼はナチスの親衛隊でフランスのリヨンでレジスタンスを殲滅する任務につき、“リヨンの虐殺者(ブッチャー)”と呼ばれた。また、(本人は否定していたが)孤児院にいた44人のユダヤ人の子供たちを収容所送りにした。そんな彼が戦後、戦犯として裁かれることはなかった。それはなぜか?

第二次世界大戦直後から、アメリカとソ連は対立を始め冷戦の幕開けとなる。“敵の敵は友人”という言葉がある通り、大戦中にソ連と戦ったナチスはアメリカよりもソ連の内情に詳しかった。そんなナチスをアメリカは対ソ連の戦略を立てるために保護し雇った。その中心人物がクラウスバルビーだった。彼はスパイ活動に詳しく、有効な拷問の方法の知識が深く、ソ連の情報を持っていたので、アメリカからしてみるとものすごく有益な人物だったわけだ。アメリカの上層部はもちろん彼が戦犯に値する人物だということは知っていたが、自国の利益のためにそれをもみ消し、バルビーが名前を変え、南米に逃れる手伝いをした。アメリカのスパイとして働いたナチスの残党たちは、自分たちの存在価値を高めるため、事実以上にソ連の脅威を高めるような情報をアメリカに流し、それによってさらに冷戦状態がひどくなっていったと語っていたアメリカの元議員がいた。世界を二分した冷戦にもナチスの影響があったなんていままで考えもしなかった。

南米に逃れてからもバルビーは政治の世界に近づき、そこにヒトラーがなしえなかった第三帝国の夢の続きである“第四帝国”を築くことを夢見たという。南米ボリビアで彼はチェゲバラの暗殺に関わったということだが、この映画の中ではこの部分はさして詳しくは語られなかった。見に行く前にワタクシがもっとも興味を抱いたのはこの部分だったので、それに関しては残念だった。

世界の左翼化、共産化を恐れるアメリカ、西欧がバルビーたちを操って南米に軍事政権を誕生させたりと、世界政治の裏に大国の思惑がひしめいているという事実が明らかにされる。

そして、ついに大戦終結から約40年が過ぎた1987年にバルビーはフランスで“人道に対する罪”で終身刑に処される。おそらく、このときにはすでに冷戦は終結しており、アメリカにとっても西欧にとってもバルビーの利用価値はまったくなくなっていたのだろう。バルビーをかくまってくれる政府はどこもなく、彼はフランスに突き出され、裁判の場へと引きずり出される。ここで、数々の証人が登場し、バルビーの罪を告発するが、バルビーは「あれは戦争だった。そして、戦争はもう終わった」と主張する。最初に書いたように、戦犯という定義は難しい。バルビーが主張するようにあれは戦争だったからなのか?この映画を見て勝手に思ったことだけれど、あれは確かに戦争でその中でバルビーは“するべきこと”をしただけかもしれない。だが、実際彼がそこに快楽を感じていたことは否定できないんじゃないかと思った。それが、彼の人間性なのか、それとも誰しもが陥ってしまうようなことなのかは分からない。そういうことができる人間という生き物を国家が承認してしまうとそういうことが起こるということなのかもしれない。

バルビーの言う「みんなが私を必要としたのに、裁かれるのは私一人だけだ」という言葉は、確かにそうだなぁと思う。だからといって、彼の罪が消えるわけではないし彼を正当化することはできないけど、大国の政府は彼を利用するだけ利用してポイした。結局は、利用できるものはすべて利用して、自分たちの思惑を実現させるのが、大国の政府というものなんだろうな。そういう部分を明らかにするという意味で彼の人生をこのようにドキュメンタリーにすることには大いに意味があると感じた。

チャーリーウィルソンズウォー

2008-06-04 | シネマ た行
最後の一行のセリフのために2時間がある、というのは映画としてはワタクシはOKだと思う。この作品がそれだ。あの最後の一行のセリフがなければ、マイクニコルズともあろう人がこんな作品をどうして作ったのかと思っちゃう。あれがなかったら、全編アメリカバンザイで「いまどき、こんな映画」って本気でビックリしていたところだ。

とは言え、あの一行だけに救われるには、ちょっとそこにつながる2時間が救いきれない作りになっている気がする。内容的には事実を基にしているから、ある程度仕方ないと思うんだけど、物語の運びの悪さとか、人と人との関係の説明を希薄に済ませたところがあんまり良くなかったような気がする。チャーリーウィルソン議員トムハンクスと大富豪のジョアンジュリアロバーツの関係とか、ジョアンの背景とかもうちょっと説明して欲しかったな。

アフガニスタンに侵攻したソ連軍を撤退させるためにアメリカは湯水のようにお金を使っていくわけだけれども、戦況がどんどん良くなっているのは分かるんだけど、その辺をもう少しテンポ良く運んでくれればもう少し痛快な感じも出て、どうせ自虐的な映画にするなら、もう少し派手な演出にしても良かったんじゃないかなーと思う。チャーリーウィルソン議員のキャラクターも不真面目な人が一念発起して紛争を止めるってことにはなってるけど、なんか不真面目なところもあるけど、最初から真面目な部分は真面目って感じがしたし、特に彼のキャラが面白いって感じもしなかった。まぁ、それは本当の彼がそうなら仕方ないけど…

キャストの中で良かったのは、CIAのガストを演じたフィリップシーモアホフマンだけだった。彼はやっぱりどこにいても素晴らしいなぁ。このガストの役なんて対して役作りなんかなさそうな感じだけど、普段の彼とは全然違うんだもんなぁ。対して役作りなんかしてなさそうに見えるところがまた彼のすごさなんだろうなぁと思う。

ちょっと救いきるには、デキが良くない作品だったけど、最後の一行があってワタクシはホッとした。とにかく、アメリカ賞賛映画じゃなくて良かったそれにしても、戦争のためにはジャンジャカジャンジャカお金を出す政治家も学校建設のためにはビタ一文出さないってね、それもそれで典型的だけど、あのときアメリカが学校建設をしていたら、どうなっていたんだろう?反米意識の高いイスラム原理主義は育たなかっただろうけど、その代わりアメリカバンザイ国が誕生していたんだろうか?戦後のGHQと同じ?それはそれで怖いような…

ドミノ

2008-04-11 | シネマ た行
父親は俳優で、母親はスーパーモデルという裕福な家庭に生まれ、モデルからバウンティハンター(賞金稼ぎ)に転身したドミノハーヴィーキーラナイトレーを描く作品。この彼女が実在したっつーんだから驚きですよね。

まず「賞金稼ぎ」っていうと、西部開拓時代っぽい響きがありませんか?そんな商売がいまでもアメリカでは成り立ってるっていうんだから、これこそがアメリカの歴史をものがたってるっていうか、他の国にもあるのかどうか知らないけど、すごく不思議な感じがします。

そして、その賞金稼ぎに元モデルの若いお嬢さんがなるっていうんだから、また驚き。これが、フィクションならね、“まぁバカバカしいけど、楽しめるんじゃない?”っていう設定だと思うんだけど、これが本当の話だっていうんですからね。このドミノハーヴィーという女性、この映画の完成を待たずして35歳で謎の死を遂げているらしいんですよ。やっぱ、賞金稼ぎという職業がらなのかな…

映画的にはね、監督トニースコットですから、スタイリッシュな映像とカメラ回しに、カット割りも彼の特徴的なものだし、セリフに時々変な字幕が出るっていうのは彼のこの一作前の「マイボディガード」と同じ手法で、このころ彼の中ではやってたのかしら?全体的には彼が監督した「トゥルーロマンス」から脚本のタランティーノを引いた感じかな。

なんせ主役のドミノがモデルもできるような女性ですからね、キーラナイトレーがカッコいいよー。全体的な映像のカッコよさも手伝ってだけど、顔にケガをして血を流して、タバコ吸いながらFBIの捜査官ルーシーリューと話してる姿は最高にカッコよかった。賞金稼ぎの兄貴分で出てるミッキーロークもすっかり汚いおっさんになってしまったけど、めちゃめちゃ渋くてワタクシはいまの彼も結構好きだな。

ただねー、ちょっとお話がまどろっこすぎるのよねー。なんか、誰が誰なのかすごく分かりにくいし。結局あの偽造免許書を作った若造たちは何だったんだ!?とか、クレアモントデルロイリンドの最初の計画はどんなだったんだ!?とかイマイチ分からんことが多い。最初に「実話“みたいなもん”」ってな感じの説明が出てたので、実在した女性賞金稼ぎドミノハーヴィーのことを基にはしてるけど、ここでの事件はフィクションってことなのかな?まぁ、ストーリー的にはギリギリ及第点ってとこですな。ただ、先に書いたようにキーラナイトレーとミッキーロークがカッコいいので、ちょっと取り上げてみました。キーラのラップダンス(LAP DANCE)もちらっとサービスされますヨ。

オマケ1「ビバリーヒルズ青春白書」のアイアンジーリングブラニアンオースティングリーンがセルフパロディのように登場していました。ドミノに殴られたり「生きてたの?」とか言われちゃう本人役ですが、なかなかシャレの分かる二人ということですかね。

オマケ2最後の役者紹介の映像で、みんなファーストネームとその人の映像が出ていて、どうしてファーストネームだけなんだろう?と思っていたら、最後に“DOMINO”っていう文字と本人の映像が出てきて、あ、これの前振りだったんだと納得しました。

隣のリッチマン

2008-04-07 | シネマ た行
ジャックブラックベンスティーラーのコメディ。面白くないわけがないと思いません?

ニック(ブラック)とティム(スティーラー)はお隣同士に住んで、同じ会社に勤める親友同士。ティムはニックの上司で落ち着いた真面目な感じの人。ニックはいつも注意力散漫で落ち着きがない。そのニックがお得意の落ち着きのない思考で「犬のウンチが瞬時に消える」という商品を発明しようとする。その商品の開発に共同出資しないかと誘われたティムは、妻レイチェルワイズは賛成だったにも関わらず、「そんなの成功するわけない」と出資しなかった。かくして、商品はできあがり、空前の大ヒット。自分の親友であり部下であったお隣さんの家は大豪邸に建て代わり、馬を飼い、庭には遊園地やら野球練習場やら贅沢三昧。出資を押していた妻はティムに冷たくなっていき、すべてにイライラしたティムはついに会社で怒りが爆発し、上司にキレてクビ。さて、このティムはどうなるのか?

ワタクシはジャックブラックもベンスティーラーも好きなんですが、ジャックブラックのほうが好きなので、彼があんまり活躍しなかったのは少し残念でした。彼が演じるニックはすごくいい人で、彼の人柄には合っていたと思いますが、もう少し目だってほしかったな。あれなら、ジャックブラックを使ったのがもったいない気がする。

ベンスティーラーは本人がちょっと変な人っていうタイプのコメディもありますが、そうではなくてこの作品のように本人はいたって真面目にやっているのに、歯車が狂ってしまってドツボにはまるっていうタイプの役も多いですね。

この二人が揃って面白くないわけないと思いませんか?と書きましたけど、実際にはまぁ普通くらいの面白さって感じでした。こんな面子が揃ったらもっと面白いものができたろうになぁという感じです。途中、クリストファーウォーケンが絡んでくるところがちょっとうっとおしい展開になってるし。でも、ジャックブラックが出ているというので取り上げました。完全にひいき目ですね~。ワタクシの大好きなレイチェルワイズがこういうタイプのコメディに出ているのは意外だったなぁ。「ハムナプトラ」シリーズで、コメディセンスは少し見せていたけど、この作品では結構ドタバタなところを見せたりしてます。メンバー的にはいい感じなので、もう1本完成度の高いものを同じ3人で作って欲しい気も。

椿山課長の七日間

2008-03-14 | シネマ た行
突然、死を迎えた椿山課長西田敏行がなんと若くて美人のおねいさん伊東美咲になって現世に戻ってくる。

向こうの世界へ行く前にその日死んだ人が集められて天使だかなんだか分からない使いの人マヤ和久井映見が現世に遣り残したことがある人は3日間だけ戻れますと言う。もちろん、たくさんの人がそれに志願するが、許可されたのは3名のみ。椿山とヤクザの武田(死ぬ前:綿引勝彦、死んだあと:成宮寛貴)と小学生の雄一(死ぬ前:伊藤大翔、死んだあと:志田未来)。それぞれが現世に遣り残したことがあると向こうの世界で認められた者たちだ。そして、それぞれが生きていたときとはほぼ正反対と言っていい容姿でよみがえる。

さて、椿山課長が現世で遣り残したことというのは本人は残された家族のこととか仕事のこととかそういうことだと思っているんだけど、実際はマヤにあなたは重要な事実を知らずに死んだ。それを知る必要があると言われる。その事実とは何なのかを探る3日間となるわけで、おそらく椿山課長と同年代のサラリーマンたちはかなり自分と重ね合わせて考える部分が大きいのではないだろうか。

ワタクシはヤクザの武田と小学生の雄一の遣り残したことにも泣いちゃったな。まぁ、いずれも先が読める程度の遣り残したことなんだけど、ヤクザの武田の弟分の市川大介國村隼とその妻市毛良江の昔かたぎの雰囲気がとても良い感じで、彼らのエピソードに感動させられた。そのおかげで、ワタクシにとって椿山課長はすっかりお笑いパート担当って感じでした。

とは言え、椿山課長のほうも実はその重大な秘密っていうのが子供のことに関してかと思いきや、実はこっちのほうが重大な秘密だったんだよねっていう意外な秘密があってこっちにも感動しちゃったな。

よみがえった姿が伊東美咲と成宮くんで、この二人がお互いに中年サラリーマンとヤクザの親分ということを知らずに接近してしまうところが面白い。いよいよってとこでお互いに気づいてセーフ!になるわけだけど、成宮くん扮するヤクザの親分が「ヤッてから気づけば良かった」って言うのが笑える。その他にも椿山課長のエピソードには結構笑えるものが多かった。伊東美咲の演技力にはハテナがつくんだけど、西田敏行と正反対の容姿という意味で、伊東美咲はそれだけで満点をつけてあげてもいいかなー。


デンジャラスビューティー2

2008-03-11 | シネマ た行
テレビでやっていましたね。「1」は映画館に見に行って、面白かったんだけど、ブログに書いていないのはブログを始める前に見て、レビューを書くほど詳細には覚えていないってことだな。また、見る機会があったら「1」も書きたいな。と、そう思わせてくれるくらいに「2」も面白かった。

単純で、明快で、突っ込みどころは満載で、「んなワケねーだろ」っていうことばっかなんだけど笑えちゃう。ちょっと安っぽいB(プラス)級ムービーってとこですかね。

ワタクシはサンドラブロックはまぁまぁ好きなほうなんで、その分もプラスになってるかもしれません。

「1」で準ミスアメリカになっちゃったFBI捜査官グレイシーハート(サンドラ)は有名になりすぎて表立った捜査ができなくなり、FBIのスポークスマンとなって、マスコミ対応をすることになる。その彼女のボディーガードをすることになったのが、ケンカっぱやくて、みんなにパートナーを断られる問題捜査官サムフラーレジーナキング。この二人が出会ったときからお互いの印象はサイアク。犬猿の仲の二人がともに行動するうちに友情が芽生え、、、っていうアメリカの刑事物にはよくあるパターン。

前回で有名になったグレイシーはマスコミに出ることで、おしゃれにもまたまた目覚め、自分が有名なことを鼻にかけたちょっとイヤな奴になっちゃってるんですが、そのへんのところは特に大きく取り上げられることもなく、最後に目覚めがあるわけでもなくスルーされているのが、多少気になったものの、随所に笑えるところがあって、すごく面白かった。テレビで日本語吹き替えで見たのがそういう点では良かったのかもしれないな。

グレイシーを飾り立てるのは、またもやゲイのスタイリスト。映画において、ゲイの男性というのはいつもおもしろパートを引き受けていますね。今回の彼ジョエルディートリックベーダーもいろいろおもしろいことをやってくれるし、いいところで肝心のアドバイスをしてくれたりもします。彼が変装を手伝ってくれるサンドラの“ビッグバード”は最高でしたね。あと、サンドラがおばあさんに変装したシーンもかなり笑えました。

こういう映画は批評家からそんなに高い評価を受けるタイプのものでもないし、続き物とあって辛くなりがちだとは思うのですが、アクションということには期待せずに、女性が主役のコメディという意味では結構いける作品だと思います。

チャプター27

2008-02-18 | シネマ た行
ちょっと時間が経ってしまったけど、年末にジョンレノン関連の映画が2本公開になりました。ひとつは「PEACE BEDアメリカVSジョンレノン」これはジョンレノンの平和主義者としての活動を追ったドキュメンタリー。そして、もう一本がこの「チャプター27」ジョンレノンを殺害したマークデイヴィッドチャップマンジャレットレトの話。ワタクシは「PEACE BED」のほうも見に行きたかったんですが、どうしても時間が合わず見られませんでした。それで、なんとしてもどちらかだけでも見たいと思い「チャプター27」、見てきました。

なんとしても見たいって、ワタクシ特にジョンレノンのファンでもなんでもないんですけどね、でもなんだか興味をそそられる。ジョンレノンはそういう存在です。

この映画の触れ込みはジョンレノンを殺害事件の真相に迫るっていうものだったと思うんですが、残念ながらちっとも真相に迫ってるっていう感じはありませんでした。マークチャップマンが最初から最後までブツブツブツブツ言いながらジョンレノン暗殺に至るわけですが、結局のとこなんで殺したかってことは分からない。マークチャップマン自身が多分分かっていないんだろうから、分かりようがないんだろうけど。彼が「ライ麦畑でつかまえて」をバイブルのようにしていたということで、それに触発されたのは間違いないんだろうな。自分を「ライ麦」の主人公のホールデンコールフィールドと同化させていたみたいだし。この本は実はワタクシも高校生のころ愛読しておりました。日本語版で読んでから、まだ英語がさして分からないときに辞書片手に英語版で読んでみたりもしたくらい好きでした。チャップマンはホールデンが言う「インチキ」なものとジョンレノンを重ねてしまったんですね。そのへんの思考回路は完全にいっちゃってる感じでしたね。そうでもなければ、人を殺そうなんて考えないんだろうけど。まぁ、ホールデンもちょっといっちゃってる子だからな。本当にあんなふうにホールデンとまったく同じ行動をチャップマンもNYでしたんだろうか?彼のインタビューが基になった映画だから、彼がそう言ったのかもしれないけど、彼のいっちゃってる加減を考えても本当にあんな行動をとったのかどうかは怪しいな。

「チャプター27」っていうのは「ライ麦畑でつかまえて」が26章までで、その続きってことなんだろうけど、その続きでホールデンもどきがジョンレノンを殺しちゃったなんて、サリンジャーもいい迷惑だね。

映画としては、チャップマンがずーっと一人で語ってて、特にビックリするような真相も出てこないもんだから、途中から「もうさっさと殺して終わりにしようぜ」なんて不謹慎なことを考えちゃうくらい退屈になってしまったんですが、かつてはキャメロンディアスの恋人でもあったあの可愛らしいジャレットレトが、30kgも太ってチャップマンを演じているのは素晴らしかったと思います。偏執狂的なチャップマンを非常にうまく演じていて、普段のジャレットレトとは似ても似つかなくて、彼を知らない人がこの映画を見たら、あとからジャレットレトを見ても同じ人とは気づかないよね。リンジーローハンはいろいろプライベートではお忙しいようですが、映画に出てくるとやっぱり存在感あるなぁ。せっかく才能あるんだから、変なことに時間を使わないでもらいたいですね。

J.P.シェーファーという監督さん、これが初監督だそうです。なので、ちょっと採点甘めにはしておきますが、次回はもうちっとがんばってほしいです。

ダーウィンアワード

2007-11-22 | シネマ た行
もっとも愚かな死に方をした人間に対し、愚かな遺伝子を自ら減らしたという感謝の念を込めて贈られるダーウィンアワード。なんと実在の賞らしい。。。

公式ウェブサイト(英語です)→ダーウィンアワード

その賞にとりつかれたサンフランシスコ市警のプロファイラーマイケルバロウズジョセフファインズ。彼はとても優秀なプロファイラーだが、ヘマトフォビア(血液恐怖症)といって、血を見ると失神してしまう。いままで、なんとかごまかしごまかし警察で働いていたバロウズだったが、ある日、連続殺人犯と格闘となり、犯人が鼻血を出し、その血を見て失神。その間にまんまと犯人に逃げられる。それをきっかけに警察をクビになるバロウズ。しばらく、茫然自失となるが、自分がダーウィンアワードの受賞者に詳しいことを利用して保険会社に就職しようとする。

なぜ、ダーウィンアワードに詳しいからといって、保険会社なのかっていうのは、最初ちょっとハテナだったんですが、見ているうちに分かります。ダーウィンアワードをもらうような人は自分の過失でケガをしたり死んだりする傾向にある。その要素を調べて、最初からその要素を持つ人を保険の対象外にしておけば、保険会社は損をすることがないってワケ。

なるほど、自分の過失で死んだのか、商品や状況が悪かったのか分からない人も、バロウズが調査をするとダーウィンアワード的要因で自分から事故を引き起こしているのが分かる。これを彼が暴いていく過程がなんともユニークで面白い。

そして、そんな彼は自分がそういうリスクを恐れるあまり、石橋を叩いて叩いてから渡るという人生を送っている。それはとてもユーモラスでもあり、そこまでしなくてもいいんじゃないの?とあきれるようなこともある。

なんだかドタバタドタバタしてよく分からない話ではあるんだけど、最終的にはバロウズからまんまと逃げた連続殺人犯を捕まえてメデタシなわけ。保険会社の相棒調査員のウィノナライダーとのロマンスもあったりしてね。ウィノナライダーってひさしぶりに見たなぁ。あんなにちんまくて可愛くて、演技もうまいって有望視されてたのに、いまではすっかりプッツン女優になっちゃったね。。。

ワタクシは、連続殺人犯のくだりはかなりどうでも良かったんだけど、いろいろ出てくるダーウィンアワードの要素を持った人たちが最高に面白かったな。本当にバカだけど、あ~こういう奴おるかもーって。しかも、そのエピソードに出てくる人たちが映画ファンからすれば、そこそこ豪華だったし。クリスペン(ショーンペンの弟)、ジュリエットルイス(最近ぱっとしないね)、ジュリアナマグリーズ(「ER」で最初の頃、ジョージクルーニーの恋人だった人)、デビットアークエット(アークエット兄弟はみんな俳優さん)、ルーカスハース(可愛い子役だったのにどうしちゃったの?)、D.B.スウィーニーロビンタニー、、、ってあーほんとに映画ファンじゃなきゃ分からない人ばっか?ん~キャストの魅力を語るにはちょっと苦しいか。でも、メタリカのファンの人だったら最高に嬉しい映画かも!

ここに挙げたキャストを全然知らないって人はわざわざ映画館に見に行くほどの作品ではないかもしれません。。。ワタクシは結構笑わせていただきましたけど。

オマケ「award」っていう単語ってどうして「アワード」ってカタカナをはめることに決めちゃったんだろう?発音は「アウォード」に近いと思うんだけどな。カタカナで表した外国語はもはや日本語なんだと思うけど、なるべく近いように表記したほうが良くはなぁい?

大統領暗殺

2007-10-18 | シネマ た行
2007年10月19日アメリカ第43代大統領ジョージW.ブッシュ、暗殺される。

いくらブッシュが嫌われてるからって、そして、いくらウソだからって本物の現役大統領を暗殺しちゃうんだから、奇抜というか卑劣というか。。。これは見に行かないわけにはいかないなと。

よくあるアメリカのドキュメンタリーとまったく同じように話は進みます。微妙な斜めの角度から撮影された関係者の証言が次々と語られ、時系列に話が再現されていく。シークレットサービス、大統領補佐官、FBI、容疑者、その家族。そして、その証言プラス(この映画の中での)実際の映像で構成されている。

シカゴに遊説に来る大統領。シカゴ市民は抗議のデモを行っている。そのデモは次第に凶暴性を増していく。デモ隊と警官隊の間の緊張が高まる。そんな中、無事にスピーチを終えた大統領がホテルの玄関で支持者たちと握手を交わす。そこへ、銃弾の音が。倒れ込む大統領。大統領のケガは?犯人は?

大統領が殺されるまでのくだりはかなりうまくできています。映画が始まる前に、これはフェイクドキュメンタリーですと告知されているにもかかわらず、どこかで、本当の出来事のように錯覚しながら見ている自分がいました。(現実世界での)実際の大統領の映像とフィクションの映像の組み合わせが素晴らしくスムーズで、本当にその世界に騙されてしまうのです。あの国葬のシーンなんて、どうやってあんなリアルにできたの?って感心しきりです。(これはレーガン大統領の国葬を加工したものらしいですね)

そして、後半。大統領を殺した犯人の捜査が始まります。この作品の残念なところは大統領が殺される前と後で、映画のテンポがなにもかも同じだったこと。大統領暗殺の瞬間までグワーーーッと盛り上がったテンションはそのまま放っておかれた感じで、その後も淡々と同じように話が進むのです。

もしもブッシュ大統領が暗殺されたら、世界はどうなるか?アメリカはどうなるか?その結果を生み出したのはそれまでのブッシュの政策であり、それを支持したアメリカや日本も含めた同盟国。そこの部分の衝撃を観客に見せたかったんじゃないの?それだったら、一人の罪のないムスリムが捕えられて裁判にかけられるだけじゃなく、そのことが世界情勢にどういう影響をもたらすか、アメリカ軍はそのときどういう行動に出るのか、アメリカ国民はどういう行動を取るのか?それを見せないと意味ないんじゃないかな?一人のイノセントなムスリムが捕まる。それくらい、誰でも想像つくよね?問題はその後でしょう。いまのアメリカの在り方を批難したいなら、後半こそ力を入れて丁寧に作りこまないといけなかったんじゃないかなと。しかも、パトリオット法とか反ムスリムとか、現実にアメリカに起こってることのほうがずっときわどいんじゃないの?とまで思うほどソフトに仕上がっているような。。。

一緒に見ていた映画館にいる観客も全体的に後半ダレ気味の雰囲気が漂っていた気がするなぁ。現役の大統領を暗殺するなんて悪趣味な考えからスタートしていると批難されるような作品をわざわざ作ったのだから、もう少し頑張って欲しかったな。