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( ジョン・ロック )

歴史を裁く愚かさ 《 世界にまき散らされる誤報――ドイツの例/西尾幹二 》

2024-08-31 | 04-歴史・文化・社会
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ドイツ政府がかつて「人道に対する犯罪には時効はない」と宣言したのは確かである。しかし「人道に対する犯罪」とはまずなによりも6百万のユダヤ人殺害、2百万のポーランド知識人あるいはそれを上まわる旧ソ連人の殺害、50万のジプシーの集団殺戮、大量の人体実験、占領地広域の不妊断種手術、障害者や病人の安楽死政策、外国からの約20万の美少年・美少女の拉致とドイツ民族化……といった鳥肌立つ一連の「ナチ犯罪」を指して言っているのであって、旧ドイツ軍による巨大規模の管理売春までは「人道に対する犯罪」のなかには含まれていない。


『歴史を裁く愚かさ』
( 西尾幹二、PHP研究所 (2000/01)、p125 )
第3章 慰安婦問題の国際的不公平
1 ドイツの傲岸、日本の脳天気

◆世界にまき散らされる誤報――ドイツの例

数年前になるが、ウヴェ・シュミット記者のひごろの日本報道のひどさに在フランクフルト日本総領事が腹に据えかね、投書欄に反論を寄せたことがあるのを私は覚えている。あの頃から彼はなにも変わっていないのだ。江藤元総務庁長官の「日本は韓国に良いこともした」発言と大臣更迭をめぐる報道に関しても、ウヴェ・シュミット記者は、日韓併合時の韓国政府とナチス時代のフランスのヴィシー政権とを同一視するといった粗雑で、でたらめな歴史知識を振り回している人物である(『フランクフルター・アルゲマイネ』1995年11月15日付)。

日韓併合は第一次大戦前の出来事なのである。比較するなら英仏の領土拡大とでも比較するしかあるまい。同記者がドイツ随一の日本記事をほぼ独占していることに、日本人として恐怖すら感じる。

スリ・ランカ出身のクマラスワミ女史が96年2月に国連人権委員会に報告書を提出した。報告書のテーマは、「女性に対する暴力の根絶」で、本文に二つの付属文書がついていた。まるでつけたしのように日本の従軍慰安婦の問題をそこで提起した。世界中で同種の問題を抱えない軍はないのに――米軍も、ロシア軍も、韓国軍も、旧ドイツ軍も例外なく――なぜ旧日本軍のそれだけを取り上げたか、なにものかによる政治的策謀を感じるが、それはともかく、ウヴェ・シュミット記者はしめたとばかりに「付属文書1」の日本問題にだけとびついて、騒ぎ立てた。「クマラスワミ女史は天皇国家の犯罪を公然と日本の戦後民主主義のスキャンダルとみなし、告知した。すなわち中国、フィリピン、オランダ、とりわけ朝鮮出身の、かつて日本軍に強制的にリクルートされ、慰安婦として前線の女郎宿で奴隷化された6万から15万に及ぶ少女や婦人の名において、女史は公式謝罪、補償、全証拠書類の公刊と現存している犯人の処罰を要求した。」というのである。そして、「女史は論拠として、人道に対する犯罪には時効はない、と言っている。」と強調している(同紙1996年2月8日付)。

ドイツ政府がかつて「人道に対する犯罪には時効はない」と宣言したのは確かである。しかし「人道に対する犯罪」とはまずなによりも6百万のユダヤ人殺害、2百万のポーランド知識人あるいはそれを上まわる旧ソ連人の殺害、50万のジプシーの集団殺戮、大量の人体実験、占領地広域の不妊断種手術、障害者や病人の安楽死政策、外国からの約20万の美少年・美少女の拉致とドイツ民族化……といった鳥肌立つ一連の「ナチ犯罪」を指して言っているのであって、旧ドイツ軍による巨大規模の管理売春までは「人道に対する犯罪」のなかには含まれていない。

なぜなら、ドイツ政府はいわゆる「ナチ犯罪」に対しては国家補償という手続きではないにせよ、ともあれ補償をしてきたが、ナチスが管理した「慰安婦」にまではとうてい補償への思いが及ばなかったからである。「ナチ犯罪」の巨悪の前には、それ以外のたいていの問題は影がうすくなり、小さく見えてしまうからだと思われる。

全体主義体制の徹底化された性の管理統制、すなわちヒトラーの軍隊の「占領地慰安婦」問題に対して、謝罪や補償をせよという声がヨーロッパであがったという話は聞いたことがないし、ドイツのマスコミが取り上げて問題にしたという例もない。だからそういう問題はなかったということにはならない。

ただヨーロッパではいわゆる「ナチ犯罪」を問題にするのが精一杯で――それだってとうてい十分とはいえない――「軍隊と公娼」という古典的テーマにまでは考えが及ばなかったのだ。最近やっと、日本の騒ぎが伝えられて、ドイツの一部勢力が遅まきながら動き出した。

翻訳されたクリスタ・パウル『ナチズムと強制売春――強制収容所特別棟の女性たち――』(明石書店・原書1994年刊)は、序文で日本と韓国の騒ぎが引き金になってやっと問題が提起されたと書いている。このことは逆にドイツでは、「慰安婦」問題などは日本の数倍も巨きな規模の悲劇であったにしても、取り上げられるレベルに達せず、ドイツ市民は今までそんなものは存在しないかのような涼しい顔をしていたということを意味しよう。

としたら、ウヴェ・シュミット記者が鬼の首でも取ったように日本の恥部を囃(はや)し立てるのは、自国の過去を知らない若い無知の世代のせいなのか、知っていてSchadenfreude(他人の不幸を喜ぶ気持ち)にぞくぞくと快感を覚える破廉恥人種なのか、いずれかということになろう。

序(つい)でにいえば、国連人権委員会で、クマラスワミ報告は4月19日、「聞き置く」(take note)ていどに止まる判定で、採択決議された。付属文書2の「女性への家庭内暴力」は評価されたものの付属文書1の従軍慰安婦問題があまりに粗雑な内容なので評価されず、全体としては「聞き置く」程度に抑えられたのだといわれる(『諸君!』平成8年8月号、秦郁彦氏発言を参照)。

それはそうであろう。この問題を叩いて埃りの立たない軍隊は世界中どこにもない。国連メンバーは世界全体のバランスをよく見ているのである。

日本では、国連は日本の従軍慰安婦問題を報告書どおりに「決議」した、とわざわざ誤解して大よろこびして騒ぎ立てた向きもあったが、『フランクフルター・アルゲマイネ』は take note が否決に近いことをさすがに知っていたのであろう、クマラスワミ報告を利用した日本叩きはこのあともう二度とやっていない。私の調べたかぎり、『ディ・ヴェルト』も、『ベルリン・モルゲンポスト』も同様であった。
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