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プロ育て人気投票に歯止め――国が政治家養成システムを
フランス文学者・鹿島茂氏
【 インタビュー「領空侵犯」09.09.21日経新聞(朝刊)】
………………………………………………………………………………
鹿島茂(かしま・しげる)
49年神奈川県生まれ。東大大学院人文科学研究科博士課程修了。
現在、明治大教授。19世紀フランスの社会・小説が専門で、当時
の風俗をいきいきと描くエッセイを数多く執筆。古書のコレクター
としても知られる。
………………………………………………………………………………
――衆院選の結果にある種の懸念をお持ちとか。
「小選挙区制になって選挙が人気投票と化してきました。最悪の政治とは倫理観で動く政治です。ファシズムに転化しやすいからですが、次に危険なのが、今のようにイメージや人気で動く政治。実現できないのに目先で受けるマニフェスト(政権公約)を大衆迎合的に掲げるようなね」
「一番良いのは欲得ずく、それも先の先まで考え抜いた健全な欲得で動く政治です。しかし、小選挙区制で利益誘導はもう効きません。政治不信をなくすには利権や派閥の問題より人気投票を避けること。質のいい政治家をどう育て、なって欲しくない人たちをどうふるい落とすかです」
――政治家は誰でもできるような仕事ではない、と?
「政治家はプロフェッショナルな職業、そう認識して国家的に養成するシステムを作れと言いたい。別にエリートが好きなわけじゃないが、社会に絶対に必要だから。必要悪と言ってもいいでしょう」
「政治家には法学部出身者も多いようですが、過去の判例と法解釈を追う勉強は現実の変化に対して無力です。行政をやるための法律の作り方を鍛えないとだめです。東大法学部の政治コースだって、政治史・学科でしょう。政治のやり方など教えない。政治を一つの科学として教えるべきです。後はモラルですね」
――具体策としては。
「フランスに国立行政学院(ENA)と言う超エリート養成期間がある。一流大学を出た人材が入る。官僚として働いた人が経験を踏まえてもう一度、勉強する。そういう一段高いレベルですよね。日本も政党色は排除したうえで、国が政治家の高等教育機関を作ってはどうでしょう」
「すぐできる改革として、政治家になる人の資格試験の導入を提案したい。漢字の読み書きや一般常識で大学入学資格検定並のレベルは最低限必要でしょう。国会議員の政策秘書になるには国家試験を受けなければなりませんよね。あれを活用してもいい」
――いきなり国政に行くも良くないとお考えとか。
「野球のメジャーリーグのように政治家を1部、2部、3部とリーグ制に分け、段階的にキャリアを積ませる。最初は市町村長を経験させる。次に都道府県知事か政令指定都市の市長。それから国会議員とリーグを順々に移っていく仕組みにするのです」
「行政トップには議会折衝などの技術も必要です。若さや人気だけで当選した知事が議会とトラブルを起こしてダメになる例もある。市長村長から始めるのが一番いい」
【もうひと言】 オセロゲームのような選挙。いま入党するなら自民党では。
《聞き手から》
小選挙区制は有権者が「民主党か自民党か」で政権を選べる新時代をもたらした。マニフェスト(政権公約)や首相候補を押し立てる2大政党が主役となる。その陰で一人一人の候補者の質をどう高め、議員同士の競争からどうリーダーを育てるのか。鹿島氏の問いかけに答える責任を負っているのはまず、政党だ。 (編集委員・清水真人)
【 これらの記事を発想の起点にしてメルマガを発行しています 】
プロ育て人気投票に歯止め――国が政治家養成システムを
フランス文学者・鹿島茂氏
【 インタビュー「領空侵犯」09.09.21日経新聞(朝刊)】
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鹿島茂(かしま・しげる)
49年神奈川県生まれ。東大大学院人文科学研究科博士課程修了。
現在、明治大教授。19世紀フランスの社会・小説が専門で、当時
の風俗をいきいきと描くエッセイを数多く執筆。古書のコレクター
としても知られる。
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――衆院選の結果にある種の懸念をお持ちとか。
「小選挙区制になって選挙が人気投票と化してきました。最悪の政治とは倫理観で動く政治です。ファシズムに転化しやすいからですが、次に危険なのが、今のようにイメージや人気で動く政治。実現できないのに目先で受けるマニフェスト(政権公約)を大衆迎合的に掲げるようなね」
「一番良いのは欲得ずく、それも先の先まで考え抜いた健全な欲得で動く政治です。しかし、小選挙区制で利益誘導はもう効きません。政治不信をなくすには利権や派閥の問題より人気投票を避けること。質のいい政治家をどう育て、なって欲しくない人たちをどうふるい落とすかです」
――政治家は誰でもできるような仕事ではない、と?
「政治家はプロフェッショナルな職業、そう認識して国家的に養成するシステムを作れと言いたい。別にエリートが好きなわけじゃないが、社会に絶対に必要だから。必要悪と言ってもいいでしょう」
「政治家には法学部出身者も多いようですが、過去の判例と法解釈を追う勉強は現実の変化に対して無力です。行政をやるための法律の作り方を鍛えないとだめです。東大法学部の政治コースだって、政治史・学科でしょう。政治のやり方など教えない。政治を一つの科学として教えるべきです。後はモラルですね」
――具体策としては。
「フランスに国立行政学院(ENA)と言う超エリート養成期間がある。一流大学を出た人材が入る。官僚として働いた人が経験を踏まえてもう一度、勉強する。そういう一段高いレベルですよね。日本も政党色は排除したうえで、国が政治家の高等教育機関を作ってはどうでしょう」
「すぐできる改革として、政治家になる人の資格試験の導入を提案したい。漢字の読み書きや一般常識で大学入学資格検定並のレベルは最低限必要でしょう。国会議員の政策秘書になるには国家試験を受けなければなりませんよね。あれを活用してもいい」
――いきなり国政に行くも良くないとお考えとか。
「野球のメジャーリーグのように政治家を1部、2部、3部とリーグ制に分け、段階的にキャリアを積ませる。最初は市町村長を経験させる。次に都道府県知事か政令指定都市の市長。それから国会議員とリーグを順々に移っていく仕組みにするのです」
「行政トップには議会折衝などの技術も必要です。若さや人気だけで当選した知事が議会とトラブルを起こしてダメになる例もある。市長村長から始めるのが一番いい」
【もうひと言】 オセロゲームのような選挙。いま入党するなら自民党では。
《聞き手から》
小選挙区制は有権者が「民主党か自民党か」で政権を選べる新時代をもたらした。マニフェスト(政権公約)や首相候補を押し立てる2大政党が主役となる。その陰で一人一人の候補者の質をどう高め、議員同士の競争からどうリーダーを育てるのか。鹿島氏の問いかけに答える責任を負っているのはまず、政党だ。 (編集委員・清水真人)
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