娘は、市立幼稚園の保育士をしています。
毎月毎月親御さんたち向けに子ども達はこんなに園で元気に成長していますよ~ということをお知らせするための「お便り」を出します。
B4の用紙に可愛らしいエピソードをいくつか綴るというようなたわいもないものですが、その執筆が保育士の人たちの間で持ち回りで行われるため、娘には3,4ヶ月に1度くらいその任務が回ってきます。
その当番になると彼女はいつもちょっと気が重そう・・・
というのは原稿を仕上げると上の人のチェックが入るのですが、それが微に入り細にいりネチネチといやらしいから、ということらしい。
娘と私たち(私とダーリン)は、今別居していますが、娘の家のパソコンが壊れているため、いつもその原稿を作りに、3,4ヶ月に1度はウチにやってきます。
最初はいい。自分が思ったように原稿を作るだけだから。
それを持って次の日、上の人のチェックを受けると、赤が入る。
直すためにまたやってくる。
1度目もまだいい。あぁ、なるほどな、というところや、はぁ~、そんな表現がいけないのか、ということなどいろいろとありますが、まだ納得できる。
で、たいてい、1度や2度では通らない。
回数を重ねて直しているうちに、本人も「いったいこれ最初は何を書きたかったんだっけ?」ともうわけがわからなくなってくるみたいです。
しかも何回も直しているうちに、「ここも」と指摘されたところが、「はぁ~!? それは最初っからそうだったじゃん。最初のときには指摘しなかったじゃん。今になってそこもダメっていう?なら、最初のときに言ってよ。」ということが起きる。
しかもチェックは1人ではない。
ようやく直属の上の人がよし、と言ったのでさらにその上の人にチェックを求めると、直属の上の人が「ここはマズイからこう直せ」と言ったところにチェックが入ったりする。「だったら、最初の私のままのほうでよかったんじゃないの!」ということになったりもするし、直属の人はそこにチェックが入ったことに対して、「あらぁ、ごめんなさいね。」と言うわけでもなく涼しい顔をしている。
娘はヘトヘトでおかんむりです。
まぁ、こんな状態が7日間ぐらい続くわけです。
私はよしよし、社会に出て働くということはこういう不条理を味わうことなのだよ、と娘の成長を見守っています。
しかし、これほどまでに文章の「てにをは」までが細かくチェックされるというのも、ひねくれた親御さんが見て、「ちょっと、これどういうこと?」とそうきたか!そこをそううがって解釈したか!というようなクレームが入ることを怖れるからでしょう。
それから市立の幼稚園だから、ということもあって、このお便りは市の役人にも保管で回るみたいです。
文書というものは残るものですからカリカリしちゃうんでしょうね。
もう少しおおらかになれないものですかねぇ。
だって、お便りを見ていると明らかに一番最初のときの方がいいんですもん。
○○ちゃんがこういうことを言いましたよ~なんて生き生きとしたエピソードが綴られていて「あら! いいじゃない。このエピソード」なんて言っていると、「ダメだって言われた。特定の子の話を載せると、それ以外の親御さんたちがやっかむから、って。」と言う。
え~!
そうかなぁ、園のほうが考えすぎなだけじゃないのぉ?
逆に「ふぅ~ん、この子がこんなことを言うなら、ウチの子もきっと似たようなこと言ってるんだろうなぁ。」と想像がついていいと思うんじゃないの?
それに、「○○ちゃんのことが今月載ってる! 今後はウチの子のことも載るかなぁ。」とワクワクして待てるじゃないですか。
こうして特定のエピソードが書けないのでお便りはどんどんつまらないものとなり、「みんな手が洗えるようになりました。」とか「みんな元気よくお返事できるようになりました。」というようなありきたりの面白みのないものとなっていくのです。
いったいこれもいつぞやからもてはやされるようになったみんなが手をつないで運動会のかけっこのテープをゴールインすることで1位やドベ(ドベって方言?)をつくらない、みんな公平で美しいね~、シャンシャン、というあの一環なのでしょうか。
社会が成熟していくと、色んな人がいる、という多様性を受け容れられるようになっていくものだと思っていましたが、日本は違うようですね。
世界はどうなんでしょうか?
アメリカやヨーロッパの先進国でもしょうもないクレーマーの影におびえることによって社会が萎縮していく傾向にあるんでしょうか?
たまたま今回は「残るもの」としての文書から端を発して考えているので、ふとお隣韓国がネットで中傷や暴露があってすぐに芸能人のブログなどが炎上し、自殺に追いやられる人が後を絶たない、ということを思うと、日本も含め、成熟しきっていない国でインターネットだけが異常に発達するとこういうことが起こるような気がしました。
少なくとも娘よ、まぁ、このくらいで妥協しておくか、というのもいいし、なんでこの文章がいけないんですか?と徹底的に戦ってみるのもいいけれど、上の人にまったく怒られることがなくなって、「私っていい文章が書けるようになったんだなぁ。」という勘違いだけはやめてくれよ、と思いました。
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