映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

人生万歳!

2011年01月08日 | 洋画(11年)
 恵比寿ガーデンシネマが、本年1月一杯で閉館することになり、その最後の上映作品だということで、気は早いのですが『人生万歳!』を見に行ってきました。

(1)『人生万歳!』は、ウディ・アレンの監督40作目に当たり、監督業も大層手慣れたものとなっているだけでなく、久し振りでホーム・グランドのニューヨークに戻ってきて制作したせいか、このところ鳴りをひそめていた持ち前の饒舌性とかウイットが溢れ返っていて、実に楽しい映画に仕上がっています。
 なにしろ、登場人物が、冒頭からなんとなくカメラを意識しているなと思っていると、暫くしたら主人公のボリスが、はっきりと観客に向かってべらべら喋りだすのですから。
 とこうしていると、メロディなる可愛い子ちゃんが登場し、アレヨアレヨという間にボリスと結婚。そこにメロディの母親が登場、夫が別の女性のところへ走ってしまったからと二人と同居するようになります。さらに驚いたことに、その夫までも、浮気相手の女性とは別れたと言いながらボリスの家に押し掛けてくる始末、という具合に、ハチャメチャのドタバタコメディなのです。

 主人公のボリスと結婚してしまうメロディ役には、これまでだったらスカーレット・ヨハンソンが演じたことでしょうが、この映画ではエヴァン・レイチェル・ウッド
 いくら若いと言っても既に随分と実績のあるスカーレット・ヨハンソンでは、嫌みな老人ボリスを好きになってしまうおバカな女の子の役では似つかわしくないかもしれません。とはいえ、『それでも恋するバルセロナ』以降お目にかかっていないクマネズミとしては少々残念なところです。
 もしかしたら、今度はエヴァン・レイチェル・ウッドが売れ出すのでしょうか(彼女は、『レスラー』に登場したようですが、印象に残りませんでした)。



 なお、このメロディについては、ボリスから乗り換える若いイケメンに「ユニクロ」でばったり遭遇するというシーンがあります(尤も、メロディの母親が画策したことですが)。ユニクロは、映画『(500)日のサマー』におけるIKEAのようなデートスポットになっているのでしょうか?

 また、メロディの母親は、田舎から突然ニューヨークに出てきたにもかかわらず、ボリスの友人にその写真の才能を見出されて、遂には個展を開催するまでのアーティストになります。
 女性が大活躍しているアメリカと一概に言っても、それまで彼女が住んでいた南部では、偏見もあって才能の開花が見られなかったものの、一度ニューヨークに出ると一気に芸術家になってしまうというストーリーは、おそらくアメリカの実情(地域格差)を反映しているものと思われ、実に興味深いことだなと思えます〔例えば、村上隆氏の『リトルボーイ』展のように(2005年)、芸術の世界でニューヨークは、アメリカどころか世界の中心と言えるかもしれません。ただ、『脳内ニューヨーク』の場合には、フィリップ・シーモア・ホフマン演じる主人公の妻は、ベルリンで個展が開催されますが!〕。
 なお、この母親役はパトリシア・クラークソンが演じているところ、『エレジー』とか『それでも恋するバルセロナ』でも活躍していて、マサニお馴染みといった感じです。

 とはいえ、この映画で最後まで違和感が残るのは、主人公のボリスを演じるラリー・デヴィッドが、まるで監督ウディ・アレンの“そっくりさん”の如く、風貌からしゃべり方に至るまでウディ・アレンそのものなのです。そこまでやるのなら、年齢的に無理だとされてはいますが(75歳)、以前のように彼自身が出演すればと思ってしまいます。なにしろ、2006年の『タロットカード殺人事件』までは、何かと出演していたのですから(クリント・イーストウッドだって、78歳で自分の映画『グラン・トリノ』に出演しているのですから)。
 でも、このラリー・デヴィッドというコメディアンは、これまで全然知りませんでしたが、何かにつけて人の意見を否定するという実に嫌みな自称“天才物理学者”を誠にうまく演じていて、見終わった後は、しいてウディ・アレンでなくとも良かったのかなと思えてきます。




(2)恵比寿ガーデンシネマでは、今回の作品の監督であるウディ・アレンの作品をいろいろ見ました(たとえば、『ギター弾きの恋』(2001年)とか『メリンダとメリンダ』(2005年)、『ウディ・アレンの夢と犯罪』などなど)。
 他にも目ぼしい映画が随分とこの映画館で上映され、クマネズミも見に行ったところなので(たとえば、『千年の祈り』とか『ロルナの祈り』、『マイ・ブラザー』などなど)、2010年は史上最高の映画国内興行収入との報道があったばかりにもかかわらずこの映画館が閉館する、というのは酷く寂しい気がします。

(3)前田有一氏は、「年の離れた小娘とじいさんが恋する話というのは、ウディ・アレンファンから見るとちょいと生々しすぎて引き気味にならざるをえない。アンタはいつまでロリ美少女を追いかけるんだよと、思わず突っ込みたくなる」ものの、「笑いと皮肉の利いた、これぞアレン映画の魅力。その切れ味はここ最近では見られなかったほどのもので、数年ぶりに舞台をNYに戻して撮影しただけのことはある」として70点を与えています。
 渡まち子氏も、「すったもんだの出来事を経て、それぞれに似合いの相手をみつけ幸せになっていくキャラクターたち。物語は「いろいろあっても、人生は収まるところに収まっていくもの。心配無用だよ」とウィンクしているようだ。ただしそれには、自分とは違う世界の人間とも知り合って交流してみる勇気が大切。活路はいつも思いがけないところから開けていくのだ」として70点を与えています。



★★★☆☆



象のロケット:人生万歳!

賀正

2011年01月04日 | その他
 明けましておめでとうございます
 今年もよろしくお願いいたします。

(1)昨年末から年初にかけて、東京以外の地域では大寒波のせいで大変な事態のようです。心からお見舞い申し上げます。
 こちらでは、例年の如く、杉並の「大宮八幡宮」と渋谷の「氷川神社」に初詣に行ってきました。
 元旦の午後は、さすがに大宮八幡は混雑していました。



 2日の午前中だったからなのでしょうか、相変わらず氷川神社は閑散としていました。



 なお、今年は3日に、押上の東京スカイツリーを見に行ってきました。といっても車で附近を通っただけのことですが。



〔東京スカイツリーの画像については、昨年11月18日の記事の末尾に付けた画像も見ていただけると幸いです〕


(2)2010年のベスト5
 年初にあたり、お遊びで2010年のベスト5を挙げてみると、クマネズミのマッタク個人的な興味に従っているに過ぎませんが、次のようです(★4つ以上を付けた作品の中から選んでみました)。

イ)邦画については
今度は愛妻家』(豊川悦司と薬師丸ひろ子の絶妙な掛け合い)
川の底からこんにちは』(何といっても満島ひかりの素晴らしさ)
ヘブンズ・ストーリー』(ジワジワと後から浸透してくる278分の長尺物)
十三人の刺客』(ラスト50分は圧巻)
怒る西行』(地元民だという特殊事情から)

ロ)洋画については
ずっとあなたを愛してる』(実に感動的な主演のクリスティン・スコット・トーマスの演技)
息もできない』(主演のヤン・イクチュンが製作・監督・脚本・編集を一手引受けの韓国映画)
闇の列車、光の旅』(ラテンアメリカを舞台とする上に、出来がよいのですから!)
彼女が消えた浜辺』(女優陣が優れているだけでなく、様々の観点から様々に議論が出来る優れたイラン映画)
ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』(様々の連想に誘うドキュメンタリー作品)

 なお、ワーストは、邦画では、断トツに『矢島美容室』。実に退屈極まる作品でした。また、洋画では『レポゼッション・メン』でしょうか、退屈はしませんでしたが、設定にマッタク納得がいきませんでした。


(3)このレビューの基本的なコンセプト
 この映画レビューは、少し身を入れて書くようになってから1年半ほどが経過し、昨年アップした記事の件数は130本ほどになりました。前年が90本ほどですからかなり頑張った感じながら、週3本見るとすれば年間150本くらいになるはずですから、まだまだなのかもしれません。
 とはいえ、映画に追われずに楽しんで見た上で、面白くレビューを書く、というのがモットーですから、マア100本くらいが適当なところではとも思っています。

 この映画レビューは、基本的に、これから映画を見ようという人よりも、むしろ既に映画を見た人を対象に、見てきた映画について楽しく語りましょうというコンセプトで作成してきたつもりです(ブログのタイトルに、そのように書き込んでいます)。
 ですから、ある記事についてのコメントで、“ネタバレはしない方が良いのでは”などと言われて面食らってしまったことがあります。勿論、不必要にわざとネタバレするつもりはありませんが、ネタバレになるかどうか頓着せずに書いているところであり、この姿勢は変えないつもりです。

 今少し申し上げれば、クマネズミのブログにおいて、通常のレビューは大体「(1)」の枠内に収め、「(2)」では、その映画から連想されること、思いつくことを書き込むことにしています。
 ただ、「(1)」は通常のレビューと言っても、既にその映画を見ている人を専らの対象としていますので、あまり映画の粗筋を書き込むことはしないようにしています。
 それでも、粗筋を書くことから取りかかると、レビューが凄く書き易くなるのも事実ですから、場合によっては粗筋プラス感想といった出来上がりになっている記事も出てきます。マア、疲れているときなど、そうなってしまうのも仕方がないでしょう。

 次に、「(2)」については、一見したところその映画とは関係がないと思われるものの、よく見ると密接に関係している事柄を書き込めれば理想的と思っています。
 実際には、その映画と原作との関係とか、他の類似作品との繋がり、など、あまり飛躍のないありきたりの内容になってしまっている記事が大部分になってしまっていますが。
 今年はここのところをもっと充実させたいな、と思っているところです。

 なお、「(3)」として映画評論家による論評の一部を掲載しています。世の中の代表的な映画の受け止め方を上手に文章化していると思えるからで、記事を書くに当たっては大いに参考になります。いうまでもありませんが、内容をそのまま支持するわけではありません(記事の掲載は、クマネズミとの違いを明らかにする意味もあります)。
 いただいたコメントの中には、映画評論家のレビューについてのものが見受けられますが、コメントしたいのであれば映画評論家自身のサイトに投稿すべきでしょう。


(4)今年もよろしく
 今年は、映画の年間鑑賞数はせいぜい昨年並みとし、数よりもむしろ充実した映画レビューを書くことに力を注ぎたいな、と思っています。
 また、映画のみならず、展覧会や音楽会にも昨年以上にアクセスして、レビュー記事にモッと変化を付けようとも考えております。
 ただ、クマネズミの方で頑張るだけでは、内容の向上は望めません。皆様からのコメントやTBによって、至らぬ点を指摘していただいたり、異なる見解を通知していただくことによって、一層の充実化が図られるものと考えます。

 どうか今年もご贔屓のほど、よろしくお願いいたします。