孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア  欧米による経済制裁は効果をあげているのか?

2022-04-27 23:05:02 | ロシア
(G20参加国の対ロシア制裁への対応【4月21日 テレ朝Newsより】)

【プーチン大統領「西側の制裁は失敗」 ルーブルは侵攻前水準に戻す】
欧米からの制裁を受けるロシア・プーチン大統領は「西側の制裁は失敗した」との強気の姿勢を見せています。

****欧米の経済制裁「失敗した」 プーチン氏“ロシア経済の安定”強調****
ロシアのプーチン大統領は、欧米諸国などがロシアに科した経済制裁は「失敗した」と主張した。
ロシア・プーチン大統領「対ロシア対策は失敗したと自信を持って言える。経済的な電撃作戦は失敗したことが証明された」

ロシアのプーチン大統領は18日、ロシアへの経済制裁について、金融・経済情勢を一気に揺るがしたが、わが国は耐え抜いたとの認識を示し「制裁は失敗した」と主張した。そのうえで、むしろ欧米諸国の経済が悪化していると皮肉を口にしている。

一方で、モスクワの市長は、外国企業の撤退により、およそ20万人が職を失う可能性があると危機感を示している。【4月19日 FNNプライムオンライン】
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国内向けに強気姿勢を見せざるを得ない面もありますが、部分的、短期的には制裁の効果があがっていない面もあります。言い方を変えれば、“壊滅的打撃を被っている”とは言い難い面もあります。

制裁直後に急落した通貨ルーブルはその後回復して、ウクライナ侵攻・制裁前の水準を超えるまでになっています。

****プーチン大統領「西側の制裁は失敗」ロシア制裁の一方ルーブル回復なぜ?専門家解説****
政府は19日からロシア産のウォッカやビールなどのアルコール飲料を、輸入禁止としました。防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。

日本や西側諸国は最も有効とされる“強いエネルギー制裁”について、足並みを揃えられていない状況です。その一方で、プーチン大統領から気になる発言が出ています。

プーチン大統領は18日、「西側諸国による我が国の市場にパニックを生み出す作戦は間違いなく失敗した。ロシアの経済状況は安定している」と話しました。

その根拠として挙げているのが“ルーブルの回復”です。
ルーブルの為替レートを見てみると、ウクライナ侵攻前は1ドル=80ルーブル前後で推移していました。侵攻後、ルーブルは下がり続け、3月7日は1ドル=142ルーブルまで暴落。ところが、それ以降はルーブルの価値が上がり、19日時点で1ドル=79ルーブルと、侵攻前の水準となっています。

エコノミストの崔真淑さんによりますと、ルーブルが戻った要因の一つとして、「ロシアの経常収支」を挙げています。ロシアは、西側諸国の制裁により、輸入が減っている一方で、ロシアからの輸出は、各国が石油やガスとったエネルギーを買い続けているため、結果として、経常収支は黒字が拡大しました。黒字ということは、それだけロシアが多くの外貨を獲得したということです。その外貨を自国通貨であるルーブルに変えようというニーズが高まり、ルーブル高へ繋がります。

(Q.プーチン大統領の「制裁は失敗した」という発言をどう見ますか)

かなり強がっている表現だと思います。ルーブルが元に戻したといっても、それ以外でロシア経済への影響は出てきています。だから、ロシアで反発が出ないように、国内向けには、「影響がない」と断言せざるを得ない。外資系企業が撤退して失業者が出たり、国内では物価が上がっています。ロシア経済へのさらなる影響は避けられないと思います。

(Q.西側諸国や日本は、石油や天然ガスなど、エネルギー制裁に踏み込む可能性はあるのでしょうか)

いまの段階では、ロシアに天然ガスを依存するヨーロッパ諸国は、天然ガスの禁輸には慎重な姿勢を貫いています。天然ガスの禁輸は、最後の切り札になると思いますので、ロシアが大量破壊兵器の使用に踏み切らないように、抑止するために、その切り札は、いまは温存しておいたほうがいいと思います。【4月19日 テレ朝news】
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今のルーブルの水準はかなり資本規制や強制的な外貨売却といった“人為的に制限”された結果でもあります。

****ルーブル、過大評価の可能性=カザフ中銀総裁****
カザフスタン中央銀行のガリムジャン・ピルマトフ総裁は27日、ロシアのルーブル相場が経済情勢を完全に反映していないとの認識を示した。

総裁は会見で「ルーブルはかなり大幅に上昇している。今のルーブル相場は、現状や将来の予想を完全には反映していない」と指摘。資本規制や強制的な外貨売却がルーブル高に大きく寄与しているとの認識を示した。

ロシアは、カザフスタンにとって最大の貿易相手国。ルーブルとカザフスタンの通貨テンゲは、ロシアがウクライナに侵攻した2月に急落した。【4月27日 ロイター】
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カザフスタンなど中央アジア諸国にとっては、ロシアが最大の貿易相手国であるというだけでなく、多くの労働者がロシア国内で働き、その送金が自国経済を支えている側面がありますので、ルーブルが下落するとその送金額の実質価値が下がるという国民生活を左右する死活的に重要な問題になります。

なお、ルーブル高は現在も続いています。ロシア国内の株価も上がっているようです。
“ルーブル、対ユーロで一時2年ぶり高値 株価上昇”【4月26日 ロイター】

【今年は1割前後のマイナス成長 インフレも20年ぶりの高水準】
しかし、実体経済への制裁の影響は避けられませんし、その影響が深刻化するのは“これから”でしょう。

****今年のロシア経済成長率、マイナス12.4%の可能性=経済省****
ロシア政府は、2022年の経済成長率が基本シナリオでマイナス8.8%、保守的なシナリオでマイナス12.4%になると予想している。経済省の文書で27日明らかになった。制裁の影響を受けていることが改めて浮き彫りとなった。

前ロシア財務相のアレクセイ・クドリン氏は12日、ロシア経済が今年、10%以上のマイナス成長に陥るとの見方を示していた。ソビエト連邦崩壊を受けて経済が混乱した1994年以来の大幅なマイナスとなる。

経済省は23年の経済成長率を1.3%、24年を4.6%、25年を2.8%と予測。保守的なシナリオでは1.1%のマイナス成長を見込んでいる。

新たな制裁や貿易を巡る不透明感があるため、今年のロシア経済がどの程度のタメージを受けるかは不明。政府は今年、複数回にわたって予測を修正する可能性が高い。

経済省の文書によると、今年のインフレ率は最大22.6%に加速する見通し。4月15日時点のインフレ率は17.62%だった。

保守的なシナリオによると、実質可処分所得は22年に9.7%減少する可能性がある。設備投資は25.4─31.8%減少する見通し。【4月27日 ロイター】
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****「店に行くたび値上がり」制裁下のロシアで20年ぶりインフレが国民生活直撃…ウクライナ侵攻2か月***
2か月前にウクライナに侵攻したロシア。来月の第2次世界大戦の「戦勝記念日」を前に攻勢を強めますが、国内は欧米諸国の制裁などの影響で20年ぶりのインフレの波が国民生活を直撃しています。(中略)

政府系の「世論基金」が行った最新の世論調査では、プーチン大統領を「評価する」と答えた人は77パーセントと侵攻前(64パーセント)から上昇。(中略)

ただ気になる現象も起きています。実はプーチン氏を「評価する」という人の割合は前の週と比べ5ポイントマイナスと侵攻後、初めて大きく下がっていたのです。背景にあるとみられるのが、「制裁による影響」です。

モスクワ市民 「店に行くたびに、何かが値上がりします。砂糖もひまわり油も値上がりしています」

8日時点のロシアのインフレ率はおよそ17.5パーセントと20年ぶりの高水準。品不足までは起きていないものの、砂糖の値段は今年に入って1.5倍になっています。

一方で、プーチン大統領は(中略)欧米の制裁は失敗だと強気を崩しませんが、同時に「インフレの波に対応できるようにしなければならない」と国民生活への影響を認めざるを得ない事態となっています。

さらに外国企業の相次ぐ事業停止などでモスクワだけで20万人の失業者が出るとの見方もあります。

モスクワ市民 「8月にならないと本当の制裁の影響は見えてこないと言われています」(中略)

IMF=国際通貨基金の見通しでは今年のロシアの成長率はマイナス8.5パーセント。ロシア経済のさらなる混乱も予想されています。(中略)

国内がインフレで疲弊する中でロシア側のダメージも確実に蓄積されることになります。【4月25日 TBS NEWS】
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【制裁の“足並みの乱れ”やロシア側の報復に苦しむ面も】
一方で、“強いエネルギー制裁”について、足並みを揃えられていない状況・・・・という面は確かにあります。

****ロシア原油輸出量 軍事侵攻前の去年上回る 制裁影響は限定的か****
厳しい経済制裁を科されているロシアからのタンカーを使った原油の輸出量は、今月に入って軍事侵攻前の去年を上回っていることが、民間の調査会社の分析でわかりました。インドや中国のほか、ヨーロッパでも受け入れが増えている国があり、現時点で制裁の影響は限定的との指摘が出ています。(中略)

世界の石油タンカーの運航の情報をもとに流通の状況を調査している、ベルギーの民間企業「KPLER」が分析した結果が明らかになりました。

それによりますと、ロシアから輸出され、タンカーで各国に到着する一日当たりの原油の量は、侵攻直後の落ち込みから回復し、今月は26日の時点で去年の平均をおよそ7%上回っています。

国別にみますと大幅に減っているのは ▽アメリカがマイナス83% ▽フィンランドがマイナス81% ▽ドイツがマイナス79% ▽イギリスがマイナス70%などとなっています。

一方で ▽インドが8.4倍 ▽トルコが2.4倍と大きく増えたほか ▽中国も13%増加しています。

さらに ▽イタリアが2.1倍など ヨーロッパでも受け入れが増えている国があります。

KPLERのマット・スミス主任原油アナリストは「ロシア産原油の価格が割安になっていることから、インドなどは買い増す機会と捉えている。ヨーロッパでも禁輸の措置がない国の中には購入を続けているところがある」と述べ、今のところ制裁の影響は限定的だと指摘しています。

ロシアの原油への対応 各国の足並みそろわず
ロシアの原油輸出量は世界2位の規模で、経済を支える柱になっています。ウクライナへの軍事侵攻を受けて世界最大の産油国であるアメリカは先月、ロシア産の原油の輸入を禁止する経済制裁を発表しました。

また、カナダやオーストラリアも輸入の禁止を決めたほか、イギリスも輸入を段階的に減らして年末までに停止するとしています。

ロシアからの原油に依存するEU=ヨーロッパ連合は、ロシアからの原油の輸入禁止を目指していますが、時期など詳細はまだ決まっていないほか、日本も輸入の禁止は打ち出しておらず、西側の足並みはそろっていません。

インド ロシアからの原油購入続ける意向
原油の多くを中東などに依存しているインドは、ロシアからの輸入量が全体の1~2%だとしたうえで、「原油価格が上昇する中、自国の利益になる取り引きを求めるのは自然なことだ」として、ロシアから原油の購入を続ける意向を示しています。

ロシアからのエネルギー購入をめぐっては、今月11日にアメリカの首都ワシントンで開かれたアメリカとインドの外務・防衛の閣僚協議、いわゆる「2プラス2」のあとの共同会見で、インドのジャイシャンカル外相が「ロシアからのエネルギーの購入に目を向けるのなら、ヨーロッパに注目することをすすめる。私たちの今月の購入量は、ヨーロッパが半日で買う量よりも少ないのではないか」と述べ、インドだけに注目すべきではないとする考えを示しています。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について、インドは自国の利益を最優先に対応する姿勢を示していて、制裁を強める欧米などとは一線を画しています。【4月27日 NHK】
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ロシアからの割安価格での原油輸入を急拡大しているインドについては、取り上げると長くなるのでまた別機会に。
インド以外でも。

****欧州、ロシアから石油「こっそり輸入」が急増―米華字メディア****
2022年4月25日、米華字メディア・多維新聞は、ウクライナを侵攻しているロシアに対し西側諸国がロシアからのエネルギー禁輸強化を計画する中、ロシアから欧州向けに石油がこっそりと輸出されていると報じた。

記事は、石油タンカー追跡機関TankerTrackersのデータとして、4月に入ってから現在までにロシアから欧州連合(EU)加盟国向けに輸出された石油の量が1日当たり160万バレルと、3月の130万バレルを上回っていることを紹介。

欧州各国はロシアからの石油を「不明な目的地」として輸送しており、その背景には欧州各国が経済運営を維持する上で石油を必要としており、燃料価格のさらなる高騰により歴史的なインフレの進行を防ぎたい思惑があるとした。

また、欧州諸国はロシア産石油に関する「不透明な市場」を形成してこっそりと取引を行うことで、米国からの制裁や批判を回避しようとしているとも伝えた。

記事によれば、ロシア産石油は1バレル当たりの平均価格がブレント原油基準価格よりも20〜30ドル安く、価格面で大きな魅力を持っているとのこと。欧州諸国の中でもルーマニア、エストニア、ギリシャ、ブルガリアのロシアからの石油輸出量が3月から倍以上となり、1日当たり10万バレルを超えているという。

記事は、欧州諸国がこっそりとロシア産石油を購入する「手口」について、ロシアからの輸送先を「未知の目的地」に設定していると紹介。

「未知の目的地」はもともと、海上で大きな石油タンカーに積み替えて運ぶことを意味しており、ロシア産石油を海上まで運び、そこで他国産の石油を積んだ大型タンカーへと移し替えて「ブレンド」するという「古典的な制裁回避法」が使われているのだとした。また、これまでにもイランやベネズエラなどの被制裁国からの石油輸出でも同様の手法が用いられてきたと伝えている。【4月26日 レコードチャイナ】
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ただ、ロシアの原油生産自体は大きな打撃を受けています。

****ロシアの石油生産、今年は最大17%減も 輸出も減少へ****
ロイターが27日に入手したロシア経済省の文書によると、制裁の影響により2022年の石油生産が前年比最大17%減少する可能性がある。

減少幅は石油業界が投資不足に直面していた1990年代以来の大きさとなる見込み。
ロシアの石油生産量は3月に減り始め、4月中旬までに7.5%減少した。国際エネルギー機関(IEA)は制裁の影響が5月以降に本格的に表れると予想している。(中略)

今年は石油・ガスの輸出も減少する見込み。石油輸出は2億1330万─2億2830万トン(日量427万─457万バレル)と予想。昨年は2億3100万トンだった。【4月27日 ロイター】
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石油生産・輸出はロシア経済・財政を支える大黒柱で、これが落ち込むことは経済・財政の悪化を意味します。

一方で、今日話題になっているのは、ロシアの報復による西側が被る打撃です。

****ロシア、天然ガスの供給停止を通告 ポーランドとブルガリアに****
ポーランドの国営ガス石油会社PGNiGは26日、ロシア国営ガス会社ガスプロムからポーランドへの天然ガス供給を27日に停止するとの通告を受けたと発表した。

ロシアは通貨防衛のため自国通貨ルーブルでのガス代支払いを求めていたが、ポーランドが応じなかったためとみられる。

ロイター通信によると、ブルガリアも同様に27日からのガス供給停止を通知された。ロシアが欧州各国の主要エネルギーであるロシア産ガスの供給停止に踏み切れば、ウクライナ侵攻を巡る対立の激化は必至だ。

ポーランドはベラルーシ経由の「ヤマル・ヨーロッパ」パイプラインでガスプロムからガスを輸入してきた。ポーランド政府は、一定のガス貯蔵量を確保しているほか、他国からの液化天然ガス(LNG)などの代替手段もあるため、国内供給は「安定している」としている。ただ、これまでロシア産ガスは国内消費の約5割を占めており、今後、産業用などの利用制限が必要となってくる可能性もある。

ブルガリアのエネルギー省も26日、ロシアからのガス供給停止に対し「状況に対応するための措置を講じた」と主張したが、同国ではこれまでガス輸入の約9割をロシアに頼ってきた。

米欧による制裁で、ロシアのルーブルは急落。その対策としてロシアは「非友好国」に指定した国や地域に対し、ロシア産ガスの購入代金をルーブルで支払うよう求めている。

欧州は天然ガス輸入の約4割をロシアに頼ってきた。ウクライナ侵攻後、各国はエネルギー面でのロシア依存脱却を急ぐが、ドイツなど各国が脱炭素社会に向けた移行期エネルギーとして重視するガスについては、早期に代替手段を確保するのが困難だとされる。

欧州連合(EU)は8日に発動した対露追加制裁に石炭禁輸を盛り込んだが、ガス禁輸についてはいまだ慎重論が強い。ロシアがガス供給の停止を拡大すれば、欧州の経済や暮らしに大きな影響が出る恐れがある。【4月27日 毎日】
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ロシア産のガスを止められないのは日本も同じです。“サハリン2からのLNG調達、代替難しく自発的見直しあり得ず=東ガスCFO”【4月27日 ロイター】

西側の対応の足並みが揃わない面、ロシア側の報復で苦しむ場面も確かにあります。
“我慢比べ”の面もありますが、一国で耐えるのと多くの国が協調して耐えるのでは大きな違いも。“総合的・俯瞰的”に見れば、今後のロシア経済の苦境は避けられないところでしょう。
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