孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ナイジェリア  頻発するイスラム過激派のキリスト教徒襲撃 帰還した拉致女性に対し政府軍が堕胎処置?

2022-12-09 23:22:30 | アフリカ
(【6月17日 alpha Online】6月に襲撃されたナイジェリア南西部の教会 キリスト教徒40人以上が殺害され、ナイジェリア当局はイスラム過激派「イスラム国西アフリカ州(ISWAP)」の犯行だと非難しています。)

【イスラム過激派によるキリスト教徒虐殺 「過去30年間で最悪」】
西アフリカのナイジェリアは人口2億1140万人でアフリカ最大、経済規模も2014年に南アフリカを抜いてアフリカ最大となり「アフリカの巨人」とも称されています。

宗教的には北部はイスラム教徒、南部はキリスト教徒が多く、民族対立と合わさって緊張関係があります。
憲法には「民主的な世俗国家」と規定されていますが、ナイジェリアが国際的に話題になるのは「ボコ・ハラム」などのイスラム過激派の爆弾テロや女子学生拉致などが多いようです。

経済的・政治的主導権が南部にあり、豊かな南部に対し貧しい北部という南北格差が存在することが、北部イスラム教徒を基盤とする「ボコ・ハラム」などのイスラム過激派を生む背景ともなっています。

イスラム教徒とキリスト教徒の対立から生まれる悲劇は枚挙にいとまがありませんが、今年6月にも。

****ナイジェリアで教会襲撃、少なくとも50人死亡 ミサ参加者ら犠牲に***
ナイジェリア南西部オンド州オウォで5日、武装集団がカトリック教会を襲撃し、地元メディアなどによると、ミサに参加していた女性や子供を含む少なくとも50人が死亡した。襲撃犯の正体や目的は明らかになっていない。

地元メディアによれば、武装集団は信徒らに銃撃を加え、教会に爆発物を仕掛けた。

オウォの病院関係者はロイターに対し、少なくとも50人の遺体が医療機関に運び込まれたと語った。

ブハリ大統領は襲撃を「凶悪だ」と非難。オンド州知事は出張を切り上げて地元に戻り、声明で「全力で襲撃犯を捕らえ、代償を払わせる」と表明した。【6月6日 ロイター】
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ナイジェリア当局は6月10日、「あらゆる状況から鑑みて」テロ組織「イスラム国西アフリカ州(ISWAP)」の犯行だと非難しています。

おそらく欧米で同種の事件がおきたら大騒動になるところでしょうが、ナイジェリアでは「日常」です。

ただ、“ナイジェリアでは、主に北東部でイスラム過激派が勢力を持ち、北西部で武装したギャングが身代金目的で誘拐事件を起こしているが、南西部でこのような事件が起こるのは珍しいという”【6月7日 CHRISTIAN TODAY】とも。

****日本メディアがほとんど報じなかった黒人キリスト教徒大虐殺テロ ナイジェリアで起きている「極度の迫害」****
ナイジェリアで相次ぐキリスト教会襲撃
アフリカ西部のナイジェリアで、キリスト教徒が大量に虐殺されるテロ事件が頻発している。6月19日には北部カドゥナ州でキリスト教の教会が襲撃され、3人が殺害され36人が拉致された。6月5日には南西部オンド州で教会が襲われ、40人以上が殺害された。ナイジェリア当局は10日、「あらゆる状況から鑑みて」テロ組織「イスラム国西アフリカ州(ISWAP)」の犯行だと非難した。

2週間のあいだにナイジェリアでキリスト教会が立て続けに襲撃され、50人近くのキリスト教徒が殺害されているというのに、日本のメディアはこのテロについてほとんど報道していない。

2019年にニュージーランドで白人の男がイスラム教のモスクを襲撃し、51人のイスラム教徒を殺害した際の報道と比較すると、その差は歴然としている。2020年には日本のメディアも「黒人の命は大切だ!(Black Lives Matter)」と大合唱した。

しかし日本のメディアは、西側諸国で白人がイスラム教徒や黒人を殺害したりする事件は執拗に報道する一方で、アフリカで黒人イスラム教徒が黒人キリスト教徒を殺害する事件についてはほとんど無関心と言っていい。(中略)

狙われるキリスト教徒 迫害状況「過去30年間で最悪」
5日のテロは、日曜日にキリスト教徒たちが五旬節を祝うために教会に集まっているところを狙ったものであり、死者の中には多くの子供も含まれていた。犯人らはキリスト教徒になりすまし、彼らに紛れて教会の中に潜入、突如キリスト教徒に対して銃口を向け、爆弾を爆発させた。

犯行後、キリスト教徒たちが血の海の中に倒れ、周囲の人々が泣き叫ぶ映像が出回った。明らかにキリスト教徒を標的とした卑劣なテロである。

紛争や人道危機の情報収集・分析プロジェクトを行う米国NGOのArmed Conflict Location and Event Data Project(ACLED)によると、ナイジェリアでは2022年に入ってから6月までの間に、教会やキリスト教徒に対する襲撃がすでに23件発生している。

2021年は1年間に31件、2020年には18件だった。同NGOは、2019年以降ナイジェリアでキリスト教徒を標的とした攻撃は明らかに増えていると指摘する。

2022年5月には教会指導者の拉致・誘拐が相次いだだけでなく、ISWAPがキリスト教徒20人を処刑する映像を公開、これは「世界中のキリスト教徒」に対する警告であり「ジハード戦士たちはこの世の終わりまで彼らと戦い続けるだろう」と述べた。

NGOクリスチャン連帯インターナショナル(CSI)は既に2020年6月の段階で、ナイジェリアのキリスト教徒は2015年以降、イスラム過激派によって6000人殺害されているとして、国連安保理に対しジェノサイドを防ぐため適切な行動を取るべきだと呼びかけた。しかし国連は特に策を講じていない。

迫害を受けるキリスト教徒たちを支援する国際NGO「オープン・ドアーズ」は2022年1月、「76カ国で3億6000万人を超すキリスト教徒が、信仰を理由にした過酷な迫害や差別に苦しんでおり、その数は昨年と比べて2000万人増えている」と報告し、世界中のキリスト教徒の迫害状況は過去30年間で最悪だと述べた。

ナイジェリアに関してはキリスト教徒が「極度の迫害」にさらされている国の一つであり、ISWAPとボコ・ハラムはキリスト教徒を殲滅することを目的に、無差別かつ残忍な攻撃を続けていると報告されている。

差別反対を強く打ち出すメディア自体が、人種差別、宗教差別と判断されうる報道をしているのは皮肉な矛盾である。【7月1日 イスラム思想研究者 飯山陽氏 FNNプライムオンライン】
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NGO「インターソサエティー」によると、ナイジェリアでは今年に入って10月までに、イスラム過激派により、4千人を超えるキリスト教徒が殺害され、2300人余りが拉致されたとのこと。

****10カ月でイスラム過激派による犠牲者4千人超、拉致被害者2300人超 ナイジェリア****
ナイジェリア南部アナンブラ州に拠点を置くNGO「インターソサエティー」によると、同国では今年に入って10月までに、イスラム過激派により、4千人を超えるキリスト教徒が殺害され、2300人余りが拉致されたという。(中略)

インターソサエティーは、ナイジェリアではこの20年間にキリスト教徒が少なくとも6万人殺害されたとしており、過激派の暴力が最も激しかった同国北部では、2009年7月から21年7月までに推定で1000万人が避難を強いられたと報告している。

また、09年7月から21年7月までの期間に、同国内ではキリスト教主義の学校約2千校が襲撃を受けたとしている。

USCIRFは報告書の中で、「信教の自由に対する組織的、継続的かつ深刻な侵害に関与し、それを容認している」とし、ナイジェリアを「特に懸念のある国」(CPC)として指定するよう米国務省に勧告している。

米国務省は、トランプ政権下の2020年にナイジェリアを初めてCPCに指定したものの、バイデン政権下の21年には除外。信教の自由を擁護するキリスト教諸団体が相次いで非難声明を発表していた。【11月12日 CHRISTIAN TODAY】
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これだけ襲撃を受ければ、当然にキリスト教徒側の報復も想像されますが、そのあたりの事情はよく知りません。
また、バイデン政権が昨年ナイジェリアを「特に懸念のある国」(CPC)から外した理由も知りません。

*****バイデン政権、ナイジェリアを信教の自由侵害国から除外 諸団体が相次いで非難声明****
米国のバイデン政権が、信教の自由が侵害されている「特に懸念のある国」のリストからナイジェリアを除外したことを受け、米政府の諮問機関である米国際宗教自由委員会(USCIRF)や、信教の自由を擁護するキリスト教諸団体が相次いで非難声明を発表した。

米国務省は(2021年11月)17日、世界で最も信教の自由が侵害されていると考えられる「特に懸念のある国」(CPC)の最新リスト(英語)を発表した。このリストには「組織的かつ現在進行中の甚大な信教の自由の侵害」を行っている、または容認している国が掲載されており、指定国は制裁や他の間接的措置を受ける可能性がある。

ナイジェリアはトランプ政権末期の昨年12月、以前から指定されていた9カ国に加え、初めてCPCに指定された。ナイジェリアは世界で最もキリスト教徒が殺害されている国で、信教の自由擁護団体「国際キリスト教コンサーン」(ICC)は前日に発表した報告書(英語)で、ナイジェリアを2021年の「今年の迫害国」に挙げていた。

(中略)国務省が発表した2021年のCPCリストには、ミャンマー、中国、エリトリア、イラン、北朝鮮、パキスタン、サウジアラビア、タジキスタン、トルクメニスタンが昨年に続き掲載され、ナイジェリアに代わりロシアが新たに追加された。ロシアはUSCIRFが指定を勧告していた4カ国のうちの1カ国で、他の3カ国(インド、シリア、ベトナム)は指定されなかった。【2021年11月24日 CHRISTIAN TODAY】
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【イスラム過激派から逃れてきた女性を待つ更なる苦難】
イスラム教過激派によるキリスト教徒襲撃は欧米・日本では大きな話題になりませんが、「ボコ・ハラム」の悪名を一躍世界にとどろかせたのが2014年の女子学生拉致事件でした。

****学校から集団拉致された女性2人、8年ぶり発見 ナイジェリア****
ナイジェリア当局は30日、イスラム過激派組織「ボコ・ハラム」によって8年前に集団拉致された女子生徒のうち、2人を発見したと発表した。

今回発見されたのは、ハンナトゥ・ムサさんとハウワ・ルカさん。2人はボルノ州内のボコ・ハラムの拠点であるサンビサ森林地帯から脱出し、バマの町にたどり着き、助けを求めた。

同州を管轄する軍部隊の司令官は州都マイドゥグリの兵舎前で、女性2人とその子どもたちをメディアに紹介した。26日にバマの部隊が身柄を確保したという。

拉致された時に18歳だったムサさんは現在26歳。ボコ・ハラムの戦闘員と結婚し、子ども2人をもうけた。夫からサンビサの別の場所にいたルカさんを訪ねる許可を得て外出し、日が暮れるのを待ってルカさんと一緒に出発。2日間歩いてバマで兵士に保護されたと説明した。

また拉致当時19歳だったルカさんは「ずっと逃げる方法を探していた」と述べ、ムサさんが訪ねてきて計画を持ち掛けられるとすぐに承諾したと語った。

ボコ・ハラムは2014年、北東部ボルノ州チボクで12〜17歳の女子生徒276人を連れ去った。そのうち、これまでに57人が脱出に成功。さらに当局による交渉の結果、80人がボコ・ハラム幹部との身柄交換で解放されている。

最近ではさらに多くの女子生徒が発見されているが、いまだ100人以上が行方不明となっている。プロパガンダ映像によると、多くの女性がボコ・ハラム戦闘員と強制的に結婚させられている。 【7月30日 AFP】
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しかしながら、イスラム過激派の手から逃れてきた女性には更なる苦難が待っているようです。
しかも、相手はイスラム過激派ではなく、今度は政府軍・・・

****ナイジェリア軍幹部、組織的な堕胎巡るロイター報道の調査拒否****
ナイジェリアの軍幹部は8日の記者会見で、同国北東部で少なくとも2013年から軍が女性や少女に対する組織的な非合法の堕胎行為にひそかに従事していたとの7日のロイター報道を否定し、事実ではない以上、軍は調査しないと語った。

ロイターは多くの目撃証言や閲覧文書を基に、少なくとも1万人がこうした堕胎をさせられていたと報道。多くは同国のイスラム過激派「ボコ・ハラム」などに誘拐され性的暴行を受けて妊娠した女性や少女だったと伝えた。

ロイターの報道を受け、国際人権団体アムネスティはナイジェリア当局に調査と処罰、被害者への補償を要求。米英の議員らも自国政府に対し、ナイジェリアに詳細情報を求めるよう訴えている。

軍幹部は16年に問題の北東部で任務に当たっていたが、会見では報道のようなことは起きていないし、見たこともないと主張した。

来年2月に予定される大統領選に立候補している元副大統領の報道官はロイターの取材に対し、元副大統領が当選すれば新政権はこの問題に取り組むことになると語った。【12月9日 ロイター】
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軍がイスラム過激派から逃れてきた女性や少女に対する組織的な非合法の堕胎行為にひそかに行っていたかどうか、その際の本人意思はどうなのか・・・などはわかりませんが、こうした女性に故郷の社会が冷たい視線を向けるという話は、ナイジェリアだけでなく、ISから逃れたイラクのクルド系ヤジディ教徒女性など、各地で聞かれる話ではあります。
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