孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラン  94年のテロ事件がアルゼンチンで政治問題化 18日から核問題交渉再開 決断する段階

2015-01-16 23:05:59 | イラン

(14日 ジュネーブの街を散歩するイラン・ザリフ外相とアメリカ・ケリー国務長官 “flickr”より By U.S. Department of State https://www.flickr.com/photos/statephotos/16093756359/in/photolist-qw9H4V-qw3jYf-qwb3LM-qw3jro-qLiJeA-qw9GGc-pSn3wv-pS5gZC-pSimm6-pS5gwo-qLMtJY-qP915e-qwzM5G-pS8Xb7-qwHtjc-qLRaGY-qwG27X-qP5jDr-qP5jui-pS5gJh-qNVb6i-qP5iRV-qNVaTK-qww4Dw-qNVaJ6-qwv9EU-qP14bh-qPmEdK-qM4yJW)

フェルナンデス大統領 イランと密約?】
南米アルゼンチンと中東イランの関係といってもピンときません。

地下鉄サリン事件の起きた95年の前年、1994年にアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで7階建てビルが全壊し、85人が死亡するという大規模テロがあり、この事件の黒幕が当時のイラン政府で、実行犯はシーアは武装組織ヒズボラだったとされています。

****アルゼンチン、イラン元大統領を国際手配 94年テロで****
当地のユダヤ人センターで1994年に起きた爆破テロ事件に関連し、アルゼンチン検察当局がイランのラフサンジャニ元大統領らの逮捕状を請求したことを受け、同国連邦裁判所は9日、元大統領ら9人の逮捕命令を出し、国際手配を要請した。

事件では、同国のユダヤ人の活動拠点で中南米最大の規模とされるセンターの7階建てビルが全壊。85人が死亡、200人以上が負傷し、同国史上最悪のテロとなった。

犯人は特定されていないが、アルゼンチン当局は、当時のイラン政権幹部が犯行を計画し、同政権の支援を受けるレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラが実行したとの見方を示してきた。

ラフサンジャニ氏は、1989年から2期8年にわたって大統領職にあった。

検察当局が25日、逮捕状請求に踏み切ったことに対し、イラン当局は「根拠がない」と非難する声明を出していた。【2006年11月10日 ロイター】
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当然ながら、「国際手配」とは言っても、この事件の関係でラフサンジャニ元大統領がどうこうされるという話はありませんが、ここにきて、アルゼンチンのフェルナンデス大統領に火の粉が降りかかってきています。

****検察「証拠に傍受録」 テロ巡る大統領の疑惑 アルゼンチン****
アルゼンチンで1994年に起きたユダヤ系施設への爆弾テロ事件を巡り、同国のフェルナンデス大統領らが14日、検察から捜査を求められた。

容疑者を処罰しないとの密約をイラン政府と結んだ疑いが持たれており、検察側は通信傍受で得た情報をもとに、「反論が不可能な堅い証拠がある」としている。

地元有力紙ラナシオンなどによると、同国が2012年、テロ事件の黒幕とされるイランと真相究明委員会の設置交渉をした際、逃亡中のイラン人容疑者を処罰しない代わりに、アルゼンチンから肉や穀物を輸出し、イランから石油を輸入する取り決めをしていたと主張している。

検察側の有力証拠は、両国政府関係者の電話の会話を傍受した記録だ。司法関係者が同紙に語った内容によると、アルゼンチンの有力政治家がイラン政府側に「アルゼンチン政府からの緊急メッセージを預かっている。素晴らしい内容のものだ」などと話す様子が録音されているという。

こうした証拠から、検察の報告書は「フェルナンデス大統領からイラン側に、非公式なルートで秘密裏に交渉が持ちかけられた」と指摘している。15日には検察官が国会で、この問題について報告する予定だ。

テロ事件は94年7月に首都ブエノスアイレスで発生。ユダヤ人共済会ビルが爆破され、ユダヤ人ら85人が死亡、約300人が負傷した。【1月16日 朝日】
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アルゼンチンで通信傍受・・・“盗聴”がどういう法律的位置づけにあるのかは知りませんが、いかにもありそうな話ではあります。

経済制裁を受けて苦しいイランにとっては、石油を輸入してくれるというのは助かるところでしょう。

話が横道にそれますが、輸入と引き換えに自国産品の輸出を求めるというのは、アルゼンチンの通常行っている輸入制限措置であり、WTOから是正勧告を受けています。

****WTO アルゼンチンに是正勧告****
アルゼンチン政府が工業製品などを自国に輸入する企業に求めている措置に対して、日本などが、WTO=世界貿易機関のルールに違反しているとして訴えていた問題で、WTOは15日、日本などの訴えを全面的に認めアルゼンチンに是正を勧告する最終判断を出しました。

アルゼンチン政府は、外国企業などが自国に自動車などを輸入する際に、これと同じ金額分の農産物など自国の物品の輸出を求める措置をとっていますが、これに対して日本は、3年前にアメリカなどとともにWTO=世界貿易機関のルール違反だとして提訴しました。

この問題を巡り、WTOで紛争処理の最終審に当たる上級委員会は15日、「輸入企業に重い負担を課している」などとして、日本などの訴えを全面的に認め、アルゼンチン政府に是正を勧告する最終判断を出しました。

これによって今後、問題の措置が是正されない場合、日本などは対抗措置としてアルゼンチンから輸入される農産品などの関税率を引き上げることなどが可能になります。(後略)【1月16日 NHK】
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アルゼンチン・フェルナンデス政権のこうした措置の背景には、過去の債務不履行(デフォルト)の影響で国債を発行して国際金融市場で資金を集めることもできず、主に貿易黒字で外貨を積み増すしかない事情があります。

ロウハニ大統領「重要課題を国民投票にかける好機だ」】
イランが行ったとされているブエノスアイレスでのテロ事件に話を戻すと、海の向こうの南米で随分荒っぽいことをやったものだ・・・という感があります。

当時に比べれば、イランも随分おとなしくなっています。経済制裁でそんな余裕がないと言うべきでしょうか。

イラン・ロウハニ大統領としては、なんとかアメリカ等との関係を改善し、核問題交渉を前進させ、制裁解除を実現したいところです。

そうしないと、制裁解除を期待されて登場しただけに、その存在意義が問われ、政治的求心力を失います。
しかし、国内保守派の強い抵抗もあって、なかなか交渉は進展していません。

そんななかで、イラン・ロウハニ政権がアメリカとの関係改善を国民投票にかける・・・という信じ難い話も流れています。
キューバがアメリカと関係改善できたなら、イランも・・・ということでしょうか。

****米と関係改善へ?イラン国内に波紋 ロハニ氏「重要課題、国民投票に****
イランのロハニ大統領が米国と国交正常化に乗り出すとの観測がイラン国内で広がっている。4日の演説で「孤立した国家は成長を持続できない」「重要課題を国民投票にかける好機だ」と述べ、これが国交正常化を指していると受け止められたためだ。
 
米国と敵対するイランだが、国民の間にはあこがれの気持ちも強く、投票になれば米国との関係改善を望む声が多数を占める可能性もある。ただ実現は困難との見方も出ている。

ロハニ氏は「重要課題」が何を指すのか具体的には示さなかったが、同じ演説で「不要なウラン濃縮を止める準備がある」などと核開発の縮小を再三強調。見返りとして制裁緩和を求めて交渉が続く、米欧など6カ国との核協議が念頭にあったようだ。

核協議は昨年11月下旬までの「枠組み合意」を目指したが、米国とのあつれきが壁になり、合意に至らなかった。そのため、ロハニ氏の発言は「米国との関係改善で国民に信を問う狙いだ」(ジバキャラン・テヘラン大教授)との見方が、イランの政治家や識者の間で強まっている。

イラン経済は、制裁に加えて頼りの原油価格も下落して低迷する。米国との国交正常化は究極の解決策となる。対立関係にあった米国とキューバが昨年末、関係改善に踏み出すと発表したこともイラン側の期待を高めているようだ。

しかし、1979年の革命で政教一致のイスラム体制となったイランにとって反米は「国是」。米国は80年に断交した。融和を嫌うイラン強硬派のインターネットサイトは「国家の運営は国民投票などに頼らず強くあるべきだ」「国民の代表は国会。米国との関係改善ならば手続きを踏むべきだ」などと反発した。

イランの国民投票は、国会議員の3分の2以上が認めたうえで、上部機関の護憲評議会、さらに最高指導者ハメネイ師の承認が必要だ。

国会の多数はロハニ氏と対立する強硬派が中心で、テヘラン大のジャバディ教授は「実現は不可能だろう」とみる。それでも国会と護憲評議会はハメネイ師の影響下にあり、同師が指示すれば実施の可能性はあるという。

ただ、イランが米国との関係改善を望んでも、イランと対立するイスラエルやサウジアラビアなどの強い反発が予想され、一筋縄にはいきそうにない。

オバマ米大統領は先月29日放送の米公共ラジオ・NPRのインタビューで、イランとの国交正常化は「絶対にないとは言わないが、段階を踏まねばならない」と述べ、まずは核協議を優先する姿勢を示した。【1月7日 朝日】
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最高指導者ハメネイ師が賛同して後押しすれば実現の可能性もあるでしょうが、ハメネイ師が賛同するようには思えませんし、ましてや後押しして・・・というのは考えにくい話です。

イラン民主化のためには実現してほしい話ではありますが。

決断をすべき段階
核問題交渉の方は、昨年11月のウィーンでの協議で包括合意できず交渉期限を延長し、3月末までの「枠組み合意」、6月末までの最終合意を目指しています。

高官レベルでの協議が今月18日からジュネーブで行われる運びとなっています。

それに先立ち、アメリカのケリー国務長官とイランのザリフ外相が会談していますが、「広範囲にわたり実質的なものだった」そうです。

****<イラン核問題>米イラン外相会談「広範囲に実質的なもの****
米国のケリー国務長官とイランのザリフ外相は14日、イラン核問題交渉についてジュネーブで約7時間にわたり会談した。

ハーフ米国務省副報道官によると、両外相はこれまでの核交渉を総括し、15日以降に本格化する協議に関する指示をそれぞれの交渉団に与えたという。会談は「広範囲にわたり実質的なものだった」という。

米側からはイラン核交渉を主導してきたシャーマン国務次官やバーンズ前国務副長官らも参加、技術専門家も関わった。

イラン国営衛星テレビ・プレスTVによると、ザリフ氏は会談後、「(交渉を)前進するために相手側が決断をすべき段階に来ている」と語った。

両国は15~17日、高官レベルで協議する。イランと主要6カ国(米英仏中露独)の全体交渉は18日に再開する。【1月15日 毎日】
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2人で15分程度ジュネーブの街を歩く場面もあったそうで、雰囲気は悪くなさそうです。
そろそろ結果が出てほしいところですが。双方とも“決断をすべき段階”でしょう。

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