孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ルワンダをめぐる歴史認識  中央アフリカ、ルワンダの二の舞の危険

2014-04-07 22:40:14 | アフリカ

(中央アフリカの首都バンギのモンキー島 女性自警団「アマゾネス」のメンバーら(2014年2月21日撮影)【4月1日 AFP】)

「われわれ2国が真に歩み寄るためには、真実を直視しなければいけない」」】
“歴史認識”で揉めているのは別に日本と中国・韓国だけではなく、多くの国々で見られるところです。
何か紛争や衝突、惨事があった場合、その出来事をどのように認識するかは、利害の反する当事国の間では異なることの方が多いようにも思えます。

昨日、大虐殺から20年が経過したルワンダを取り上げましたが、このルワンダ大虐殺に関しても、ルワンダと当時も今もアフリカに深く関与しているフランスの間では、認識の相違があります。

****大虐殺関与の 「真実見よ」とルワンダ、仏大使の式典出席拒否*****
1994年にアフリカ・ルワンダで起きたジェノサイド(大量虐殺)をめぐり、ルワンダ政府は6日、フランスに対し、同国が虐殺に関与したという「難しい真実」と向き合うよう求めた。

多数派フツ人主導の政権下で80万人のツチ人が犠牲となった大虐殺から20年の節目を目前に控え、両国間では激しい火花が上がっている。

ルワンダでは7日に政府主催の追悼式典が開かれる。しかしフランス政府は、ルワンダのポール・カガメ大統領が大虐殺へのフランスの関与を改めて非難したことを受け、予定されていたクリスティアーヌ・トビラ法相の追悼式典出席を中止。式典には駐ルワンダ仏大使が出席すると発表し、自国の代表を事実上「格下げ」した。

仏外務省は「式典のボイコットは一度として検討していない」と説明したが、この決定はルワンダ側の猛反発を招いた。ミシェル・フレシュ駐ルワンダ仏大使は7日、AFPの取材に、ルワンダ外務省から6日夜に電話連絡があり、式典への出席を禁じられたと明かした。

これに先立ち、ルワンダのルイーズ・ムシキワボ外相は「われわれ2国が真に歩み寄るためには、真実を直視しなければいけない。真実は難しい。ジェノサイドに関与した者と親しい間柄にあるという真実は、非常に受け入れるのが難しい真実だ」とコメント。「フランスとの関係を保つための条件として、ルワンダが歴史を忘れなければいけないのであれば、われわれ2国が前に進むことは不可能だ」と述べていた。【4月7日 AFP】
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カガメ大統領のフランス批判というのは、仏語誌「ジュヌ・アフリカ」最新号で、カガメ大統領が「フランスは虐殺の計画に直接関与し、実施にも加わった」と述べたことです。

フランスは虐殺が起きる前、虐殺を主導したフツ族政権と非常に近い関係にあり、90年からのルワンダ内戦で、自国民保護による派兵やフツ族中心のルワンダ政府への武器供与などを行っていました。

そうした事情もあって、フツ族政権を倒した現在のカガメ政権は“仏軍兵士が殺人やレイプに直接かかわったほか、フツ族民兵側の路上検問を黙認するなど、大虐殺政治的・軍事的に支援した”とフランスを批判する報告書を作成し、フランス関与の責任者としてミッテラン元大統領らフランス有力政治家の名前を挙げています。

また、大虐殺直後にルワンダに派遣されたフランス軍は、虐殺を行ったフツ至上主義者ではなく、これを追って進撃するカガメ氏が率いる反政府軍と交戦してその進撃を止めたとして、カガメ大統領は「フランス人は犠牲者を保護するのではなく、殺人者を救助しようとした」と批判しています。

フランスはルワンダ側の批判を否定する一方で、大虐殺のきっかけとなったハビャリマナ・ルワンダ大統領(当時)の搭乗機撃墜事件をめぐり、ルワンダのカガメ現大統領が首謀者だったとする報告書をまとめています。

このあたりの両者の言い分等については、2008年8月7日ブログ“ルワンダ 14年前のジェノサイドへのフランス関与を批判”(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080807)でも取り上げたところです。

その後、2010年2月、フランス・サルコジ大統領(当時)がルワンダを訪問し、「ここで起こった忌まわしい犯罪を防ぎ、止めることができなかったという過ちについて、フランスを含む国際社会は反省をまぬがれない」と虐殺におけるフランスの「過ち」を認めました。しかし、謝罪の言葉までは至っていません。

ルワンダ・カガメ大統領も「過去にとらわれず、新たな関係に踏み出す時代になった」と応じて、“手打ち”がなされたようにも見えました。
参考:2010年2月26日ブログ“フランス・サルコジ大統領 ルワンダ訪問「甚だしい判断の誤りを犯した」”(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20100226

しかし、冒頭記事に見るようなとげとげしい関係に逆戻りしています。
“自分たちが加害者だという真実に向き合い、これを認めよ”・・・・という歴史認識問題ではありますが、2010年のサルコジ大統領訪問当時と今現在の政治状況の違いが、認識の差を許容できるか否かに大きく影響しているようにも見えます。

【「このままでは20年前のルワンダの虐殺の二の舞になりかねない」】
前置きというか、前日補足が長くなりましたが、今日の主題は中央アフリカです。

中央アフリカではこれまでも何回か取り上げたように、キリスト教住民とイスラム教住民が互いに民兵組織・武装組織をつくって殺しあうような状況にあり、“ルワンダの再現”が懸念されています。

****国連事務総長 中央アフリカを訪問****
宗教対立が激しさを増し数千人が死亡している中央アフリカを、国連のパン・ギムン事務総長が訪問し、「このままでは20年前のルワンダの虐殺の二の舞になりかねない」と警告しました。【4月6日 NHK】
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ここでもアフリカに深く関与しているフランスが軍事介入し、アフリカ連合(AU)主導の「中央アフリカ支援国際ミッション(MISCA)」とともに治安安定に努めていますが、未だ危機を脱していないようです。

****中央アフリカ、平和維持軍が民兵組織に「宣戦布告****
情勢不安に陥っている中央アフリカで治安維持活動に当たっているアフリカ連合(AU)主導の「中央アフリカ支援国際ミッション(MISCA)」は26日、国内多数派のキリスト教徒の民兵組織「反バラカ」を「敵とみなす」と宣言した。

現地のラジオ放送によると、MISCAのジャンマリー・ミシェル・モココ司令官(コンゴ共和国)は、中央アフリカに展開する国際平和維持部隊に対し「反バラカ」が襲撃を繰り返していると非難。「今後、われわれは反バラカを敵とみなし、相応の対応をする」と述べた。

これに先立ち国連は、「反バラカ」が中央アフリカに派遣された国際部隊を襲撃したことについて、越えてはならない一線を越えたと警告していた。

中央アフリカの首都バンギでは先週末から武装グループと国際部隊との衝突が繰り返し発生し、これまでに約20人が死亡している。【3月27日 AFP】
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一方、イスラム教国チャドも「中央アフリカ支援国際ミッション(MISCA)」に参加していましたが、“中央アフリカの苦難をチャドとチャド人のせいにする悪意あるキャンペーン”が行われているとして支援団から離脱を表明し、一部チャド軍兵士が市場の住民に無差別発砲するという事件が起きています。

****チャド軍、中央アフリカの首都の市場で乱射 多数が死傷****
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は4日、アフリカ中央部の中央アフリカ共和国の首都バンギで先月29日、隣国チャドの軍部隊が市場で民間人に発砲、約30人を殺害し、300人を負傷させたとの暫定調査結果を公表した。

襲撃したチャド軍はその後、拘束などされずに母国へ戻ったとみられる。

中央アフリカではイスラム、キリスト両教徒間の流血の抗争が続き、周辺国で組織する国際支援団が和平維持活動に当たっている。国連によると、市場を襲ったチャド軍は支援団の一員でないという。

OHCHRによると、チャド軍は複数の軍トラックに分乗してバンギに到着して、女性や子どもも含む買い物客で混雑する市場に進み、発砲した。パニック状態となったがチャド軍兵士は構わず乱射を続けたという。

複数の消息筋はOHCHRの調査団に、チャド軍の襲撃グループは残留するチャド人やイスラム教徒を連れ出すためバンギに入っていたと指摘。キリスト教系の民兵組織からの迫害を防ぐことが任務だったとしている。

約6000人規模の国際支援団にはチャド軍兵士約850人も参加。ただ、CNNのフランス語系列局BFMTVによると、チャド外務省は3日、支援団からチャド軍を撤収させるとの声明を発表していた。
この声明では、中央アフリカの苦難をチャドとチャド人のせいにする悪意あるキャンペーンへの批判を加えていた。

中央アフリカでは昨年春、イスラム系武装勢力の攻勢で大統領が国外へ脱出し、キリスト教系民兵組織が立ち向かう宗教対立に発展。武装衝突も拡大し、多数の死者が出ている。【4月5日 CNN】
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“チャド軍は「あらゆる方角に向けて発砲」し、周辺は逃げ惑う人々で大混乱に陥った”(地元住民の話)【3月31日 AFP】とのことですが、詳細はわかりません。わかりませんが、情勢が混乱していることは間違いないようです。

そうした混乱の中で女性自警団「アマゾネス」も出来たとか。

****アマゾネス」、紛争の中央アフリカで島を守る女性自警団*****
ヨランデ・ブラボさん(19)は3か月余り前、中央アフリカで続く血なまぐさい宗教紛争で兄弟が殺害されるとすぐに自警団に加入した。

彼女を含め8人の女性が頭をそり、武器を持ち、男性3人とともに首都バンギに近いウバンギ川に浮かぶモンキー島を守っている。

地元農民から「アマゾネス」と呼ばれる彼女たちは、土でつくった監視塔から交代で見張りを続けている。モンキー島の人口は1000人ほどだったが、紛争が始まって以来、避難民の流入でその数は膨れ上がっている。

兄弟が殺され、「私は加入せずにはいられなかった」と、カーキ色の戦闘ズボンにメッシュのトップからターコイズ色のブラが見えるブラボさんは言う。「私たちはみんなセレカの被害者だ」。12歳のおいは、セレカにライフルの台尻で打ちのめされたという。

イスラム教系の武装勢力連合セレカは2013年3月にクーデターを起こし、セレカの指導者ミシェル・ジョトディア氏が暫定政府の大統領に擁立された。中央アフリカの少数派であるイスラム教徒が同国の大統領になったのはこれが初めてだった。

その後ジョトディア氏はセレカの解散宣言を出したものの、セレカの戦闘員たちは今もなお民間人に対する暴虐行為を続けている。

これに対し、各地で自警団が結成され、イスラム教徒に報復攻撃を加えている。セレカも自警団も「バラカ」というなたを振りかざしているが、主にキリスト教系の自警団は「反バラカ」と呼ばれている。(後略)【4月1日 AFP】
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旧宗主国としての立場と、おそらく国益・権益の観点から、軍事介入して“孤軍奮闘”の感もあるフランスは、他の欧州諸国の腰の重さに苛立っていましたが、EUも1千人規模の派遣を決定しました。

****EU、内戦状態の中央アフリカに治安維持軍派遣へ****
欧州連合(EU)は1日、キリスト教徒とイスラム教徒の対立から内戦状態に陥っている中央アフリカ共和国に、治安維持軍を派遣すると決定した。

部隊は1千人規模で、主に首都バンギ及び近郊の空港で、住民の保護や人道援助などにあたるという。

ロイター通信によると、中央アフリカではこれまで数千人が死亡。アフリカ各国から6千人強、仏軍2千人の兵士が派遣されているという。

ブリュッセルでは2日からEUと40カ国以上のアフリカの国家元首らが集まる首脳会議が始まり、この日、中央アフリカに関する特別会合も開かれた。【4月3日 朝日】
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ウクライナへの対応で手いっぱいの感がある欧州各国ですので、遠い中央アフリカへの実際の派遣は、だいぶ時間を要するのではないでしょうか。

すでに数千人規模の犠牲者が出てしまっていますが、これ以上の拡大はなんとしても食い止める必要があります。ウクライナは幸いなことにまだ死者が大勢出るような状況にはなっていません。

内戦・衝突が頻発するアフリカにあって、アフリカ連合(AU)が効果的に対応できていないケースが多く、アメリカもアフリカまで介入する気はないようですので、歴史的関係も強い欧州にお鉢が回ってきます。

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