(震災後の福島第一原子力発電所 “flickr”より By DigitalGlobe-Imagery
http://www.flickr.com/photos/digitalglobe-imagery/5519452784/in/photostream/ )
東北地方太平洋沖を震源とする東日本大震災は、想像を絶する甚大な被害をもたらしています。
現時点では被害の実態すら十分には把握できていない状況です。
大津波による“壊滅”的被害を受けた都市・集落も多く、岩手県陸前高田市の街が丸ごと押し流される被害時の映像は9.11以来の衝撃的なものでした。当然押し流される建物・車の中には逃げ遅れた大勢の人がいたのでは・・・。
【メルトダウン そして爆発】
そうしたなか、東日本大震災で被害を受けた東京電力福島第一原子力発電所1号機で、原子炉内の燃料の溶融(メルトダウン)が起こり、更に午後3時30分ごろに爆発が起きたことが大きく報じられています。
****福島第一原発、退避範囲20キロ圏内に拡大*****
経済産業省の原子力安全・保安院は12日、東日本大震災で被害を受けた東京電力福島第一原子力発電所1号機(福島県大熊町)で、午後3時30分ごろに大きな爆発音を伴う爆発が起きたことを明らかにした。その直前には、原子炉内の燃料の溶融が進んでいる可能性が高いと発表しており、原子炉の状態と爆発との関係を含め、東電などが原因を調査中だ。
放射線医学総合研究所や東電が原発敷地内で、燃料中に含まれる核分裂生成物であるセシウムやヨウ素を確認した。いずれも、ウランが核分裂をした後にできる物質だ。
炉心溶融は、想定されている原発事故の中で最悪の事態だ。これが進むと、爆発的な反応を引き起こして広く外部に放射能をまき散らす恐れもある。
爆発音について、枝野官房長官は12日夕の会見で「原子炉そのものであるということは確認されていないが、なんらかの爆発的事象があったと報告された」と述べた。福島県によると、爆発で1号機の原子炉建屋の天井が崩落したことを確認したという。東電社員ら4人が負傷し、病院に搬送されたという。
東京電力は12日午後、同3時30分ごろ現場敷地境界で1時間あたり1015マイクロシーベルトの放射線を確認し、その2分後にはほぼ半減したと発表した。1015マイクロシーベルトは、一般人の年間被曝(ひばく)線量の限度(1ミリシーベルト=1000マイクロシーベルト)を、1時間で浴びる放射線量に該当する。
日常生活で自然から浴びている放射線は平均で1時間あたり0.05マイクロシーベルト。放射線業務従事者は年間50ミリシーベルトかつ5年間で100ミリシーベルトが被曝限度とされている。
政府から待避指示が出た原発から10キロ圏内には約800人の住民が残っていたが、午後6時現在も避難中という。
一方、保安院によると、爆発音のあった後に、1号機の原子炉格納容器の圧力が急激に下がってきたという。格納容器の破損を防ぐため、弁を開けて内部の空気を抜く作業が効果を上げたのか、他の要因かは不明だ。空気とともに容器内の放射性物質も外部に放出されたとみられ、放射線の観測値は上昇している。
原子炉圧力容器内の水位は下がり続けており、午後5時28分の段階で、燃料棒(長さ4メートル)の上端から1.7メートル低い位置にある。燃料棒の半分近くが露出した状態になっている。消防車などを使って冷却水を注入しているが追いついていない。このため、東電は海水も使うことを選択肢の一つとして検討していることを明らかにした。
政府は福島第二原発(同県楢葉町、富岡町)について、避難を指示する範囲を、半径3キロ圏から10キロ圏に拡大した。その後、官邸は第一原発から待避を指示する範囲を、半径10キロから20キロに拡大した。
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(炉心溶融〉原子炉内の水位が下がり、炉心が水中から露出すると、燃料の温度が上昇し、金属と水とが化学反応を起こして燃料を入れた金属製の器(被覆管)が溶ける。冷却が不十分だと燃料の溶融から、さらに炉心の構造物の破壊と落下が起こる。ここに水があると、水と溶融物が接触し急激な爆発が起こる恐れがある。爆発で格納容器が破壊されれば、大量の放射性物質が環境に放出されることになる。【3月12日 朝日】
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この原発事故に関し、テレビ各局は周辺住民に屋内にとどまってエアコンを切り、水道水を飲まないようにと警告、また外出する際には肌の露出を避け、顔をマスクや濡らしたタオルで覆うようにとも呼び掛けているそうです。
【遅れる情報公開】
日本初の炉心溶融ですが、その後の爆発がどこで、どういう性格の爆発が起きたのか、情報が明らかになっていません。
爆発したのは原子炉格納容器そのものなのか?原子炉建屋なのか?発電用タービン建屋なのか?
爆発は水素爆発なのか?水蒸気爆発なのか?
今(8時40分)丁度、総理・官房長官の会見が行われています。
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どうやら原子炉建屋における水素爆発で、原子炉の格納容器自体には損傷はなく、爆発による放射能濃度も上昇は見られていないとのことです。
難航していた格納容器内の圧力を下げることも、何とかなったようです。
“燃料棒に使用するジルコニウムは1100度を超えると、水と反応しやすくなる。その反応の結果できた水素が、何らかの原因で格納容器の外部に漏れだし、空気中に含まれた酸素と反応して爆発した”【3月12日 毎日】という“水素爆発”との発表でした。
1986年4月26日のチェルノブイリ原発事故(旧ソ連)では、溶融した燃料が水と接触して水蒸気爆発を起こし、放射性物質が大量に放出されましたが、そうした水蒸気爆発による炉心自体の損傷という最悪の事態ではない・・・とのことのようです。
原発事故と言えば、79年のアメリカ映画“チャイナ・シンドローム”が思い起こされます。
この映画公開の12日後の1979年3月28日には、ペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所で本当の原子力事故であるスリーマイル島原子力発電所事故が起きています。
“チャイナ・シンドローム”という言葉は、「もし、アメリカの原子力発電所がメルトダウンを起こしたとしたら、地球を突き抜けて中国まで熔けていってしまうのではないか」と言う映画の中のジョークからとったものですが、まだそうした最悪事態の危険が完全になくなった訳ではありません。
福島第一原発では、これから海水注入での炉心冷却を図るとのことのようです。
無事に作業が進展することを願っています。
実を言えば、私も九州電力の原子力発電所近くに住んでいます。直線距離で9~10kmぐらいでしょうか。
もし同様事故があれば、避難対象になります。
改めて原発の安全性について考えさせる事故です。
それにしても、情報の発表に時間がかかり過ぎたように思われます。
影響が大きい問題なので、正確さの確認に慎重を期したということでしょうが、格納容器が爆発したのかどうかすら何時間もわからないというのは、困ったものです。
【「今回の出来事は全世界の原子力発電所が学ぶべき教訓だ」】
今回事故は世界も大きな関心をもって注目しています。
****東日本大震災:「日本最悪の日」…国際社会に衝撃****
東日本大震災から一夜明けた12日、大津波による惨状が次第に明らかになり、さらに被災した福島では原発の放射能漏れを伴う事故が発生、各国メディアは「日本最悪の日」などと、驚きを持って大々的に報じた。各国政府は日本への震災支援に動く一方、旧ソ連の「チェルノブイリ原発」を想起させるような事故に、重大な関心を持って成り行きを注視している。
◇「世界が学ぶべき教訓」…ロシア
12日付のロシア大衆紙「コムソモリスカヤ・プラウダ」は、東日本大震災で福島第1原発が被災したことについて「日本のチェルノブイリはロシアを脅かすか」と1面トップで報じた。ロシアやウクライナなどでは25年前に起きたチェルノブイリ原発事故の記憶が鮮明に残っている。
ロシア当局は、日本に近い極東の沿海地方やサハリン州、ハバロフスク地方、カムチャツカ地方などで放射能の検知態勢を強化するなど、万一の事態に備えている。
チェルノブイリ原発の元技師で、現在は被災者の救援活動に携わっているウクライナ在住のニコライ・イサエフさんは毎日新聞の取材に、「もし原子炉から漏れた放射能が雲の高さに達し、風で急速に広がればチェルノブイリと類似した事態となる」と警告した。
ロシアの核関連企業「ロスエネルゴアトム」のアスモロフ第1副社長はタス通信に対し、「今回の出来事は全世界の原子力発電所が学ぶべき教訓だ」と指摘した。
ウクライナ北部にあるチェルノブイリ原発から半径約30キロ以内は、今も放射能汚染で立ち入りが制限されている。
爆発直後に4号炉を覆う形で造られたコンクリート製の「石棺」は老朽化が進み、新たな鋼鉄製のシェルターを建設する計画が進んでいるが、資金不足で目標とする15年までの完成は疑問視されている。
ウクライナは今年から原発周辺への観光客受け入れを始めたが、地元では「まだ危険は残っている」と観光地化に反対する声が根強い。
◇原発建設問題に冷や水…米国
米国は1979年、ペンシルベニア州で原発の燃料棒が溶けて放射能が漏れ出る「スリーマイル島原発事故」が発生したことを受け、国内での原発建設を全面的に停止。「クリーンエネルギー政策」を掲げるオバマ政権になり、原発建設を約30年ぶりに再開させたばかりだった。
今回の放射能漏れが米国の原発政策にも影響を及ぼすのは必至で、米ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)は福島第1原発の炉心の冷却システムが故障したことや、周辺住民に避難指示が出たことなどを早くから詳報した。
米ワシントン・ポスト紙(電子版)は「(今回の)地震が、放射性物質の放出に敏感だった日本の原子力発電に対する信頼性を揺るがせたのは間違いない」と報道。その上で「日本での危機を警告のサインだと、原発反対派が指摘している米国でも、その信頼性を揺るがせた」と指摘した。
◇「増設計画変更ない」…中国
中国環境保護省の張力軍次官は12日、北京で記者会見し、東日本大震災により福島原発で放射性物質が漏れたことについて「沿海都市の核安全観測装置を起動し、中国に影響を及ぼさないか監視している」と明らかにした。一方で、電力需要の急増に対応するために進めている原発増設計画に関しては変更がないことを強調した。(中略)
◇大気の監視強める…韓国
福島第1原発1号機で発生した爆発事故は、韓国でも速報された。国内で約20基の原発が稼働して震災対策に関心があることに加え、自国への放射能の拡散を懸念している。聯合ニュースによると、韓国教育科学技術省や原子力安全技術院などは、福島原発にトラブルが発生した11日から対策チームを発足させ、大気の監視を強めてきた。(後略)【3月12日 毎日】
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最後に、今回震災で犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに、安否がいまだ定かでない多くの方々の救出が一刻も早く進むように願っています。
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