孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

南海トラフ巨大地震  発生確率「今後30年に70~80%」 「備えを進めてほしい」でいいのか?

2018-02-10 22:39:42 | 災害

(【気象庁HP】 津波については“関東地方から九州地方にかけての太平洋沿岸の広い地域に10mを超える大津波の来襲が想定されています”とも。まあ、原発を抱える私の住むところは震度5弱ですむようですし、東シナ海側ですから津波もそう大きくないと思いますので、いいと言えばいいのですが・・・)

地球温暖化のリスクから目をそむけるトランプ大統領
将来起こるかもしれない大災害について、「神のお告げ」ぐらいにしか頼れなかった時代は、あれこれ悩む必要がなかった分、物事は簡単でもありました。実際、災害が起きて被害が出ても、“神の思し召し”ということで、人間の責任が問われることもありません。

現在は科学の発達によって、“ある程度”は予測することが可能なものも増えてきました。

ただ、この“ある程度”というのが厄介で、そのリスクをどのように評価して、どのような対策をとるのか・・・立場・見解によって大きな差異があり、決定に悩むことにもなります。

とるべき対応・対策をとらずに被害が拡大すれば、“人災”として政治の責任を問われることにもなりますが、不確実な予測に基づいて、現在の生活基盤を大きく変えるような対応を住民に求めることは、現実問題としては非常な困難を伴います。

地球規模での将来的大災害ということでは、いわゆる地球温暖化の問題があります。

その危険性、早急な対応の必要性を訴える一般的流れ・科学的知見に抗して、アメリカ・トランプ大統領は温暖化の可能性・リスクを重視せず、パリ協定については、石炭や石油などに恵まれるアメリカのビジネスチャンスを奪う「米国にとって不公平な、ひどい取り決めだ」として離脱を表明しているのは周知のところです。

もっとも、すべてが“取引”の対象であるトランプ大統領が、今後どのようにしたいのか・・・よくわからない部分もあります。

****トランプ大統領 「パリ協定に復帰したい」 ただし大幅修正が条件****
ドナルド・トランプ米大統領は、自身が昨年6月に離脱を表明した地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」について、大幅な修正が加えられれば復帰したいとの意向を示した。28日放送予定の英テレビ局ITVのインタビューで述べたもの。
 
放映前に公開されたインタビューの抜粋によると、トランプ大統領は「パリ協定はわれわれ(米国)にとって大災難となりかねないものだった」「良い取り決めがなされればわれわれが復帰する可能性は常にある」と語ったうえで、現状のパリ協定については、米国にとって「とんでもない」取り決めであり内容も「不公平」だと主張。

「もし(米国に)パリ協定に復帰しろと言うなら、それはまったく異なった取り決めでなければならないだろう」と述べる一方、「(パリ協定に)復帰したいかって?ああ、復帰したいね。ぜひそうしたい」とも語った。
 
トランプ大統領は今月10日にも米国のパリ協定復帰はあり得ると言明しており、昨年に同協定からの離脱姿勢を示していたのは米国の排出削減目標の緩和を狙った「狂言」だったのではとの臆測を呼んでいた。【1月28日 AFP】
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地球規模のリスクを“取引”で弄ばれるのは困ったものだ・・・と思いますが、その件は今日はパスします。

【「日本の火山全体で1万年に1回程度」のリスクを重視する原発稼働に関する司法判断
一方、将来の危険性を“過度”に強調しても、一般生活者の常識とかけ離れてきます。

昨年12月13日、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)をめぐり、住民が求めた運転差し止め仮処分の抗告審で、広島高裁は広島地裁の決定を覆し、運転を禁じる決定をしました。阿蘇山が過去最大規模の噴火をした場合、火砕流の影響を受けないとはいえないと判断したことが主な理由とされています。

阿蘇山噴火(時折起こる小規模噴火ではなく、周辺百数十kmにまで火砕流が及ぶ大規模噴火)のリスクをどのように評価するかはいろいろあるところでしょうが、個人的には、「そんなことを言ったら、原発云々ではなく、そもそも(私を含めて)九州に生活している者はどうしろと言うのか?」という常識的・素朴な疑問を禁じえませんでした。

この点では、珍しく【産経】と意見が一致したようです。

****伊方停止の決定 阿蘇の大噴火が理由とは****
(中略)同高裁は、運転を認めない理由として、伊方原発から130キロの位置にある阿蘇山の巨大噴火を挙げた。
 
9万年前の破局的噴火の規模なら、火砕流が到達する可能性は否定できないとした。
 
あまりに極端だ。そうした噴火が起きれば、原発以前に九州全体が灰燼(かいじん)に帰するではないか。
 
高裁は、逆転決定の理由の中で、想定したレベルの破局的噴火の発生確率が「日本の火山全体で1万年に1回程度」であることを認めている。
 
また、その種のリスクを、無視し得るものとして容認するという社会通念が、国内に定着しているという常識論も述べている。
 
その一方で、原子力規制委員会が策定した火山事象の安全審査の内規に、破局的噴火の火砕流が含まれていることを、運転差し止めの根拠とした。
 
全体に強引さと言い訳めいた論理展開が目立ち、説得力の乏しい決定といえる。
 
しかも、広島地裁で審理中の本訴訟の行方をながめ、異なる判断がなされる可能性もあるとして、運転停止期間を「来年9月30日まで」と限定する自信のなさだ。(後略)【2017年12月14日 産経】
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そこまでリスクを重視するのであれば、運転差し止めより先に、阿蘇カルデラ内に暮らす多くの人々の強制移住を直ちに行うよう政府に勧告すべきところでしょう。

私の住む鹿児島でも、頻繁に噴火を続ける桜島のふもとに大勢が暮らしていますが、これが論外であることはもとより、中規模噴火でも噴石が飛んでくる対岸の鹿児島市(人口約60万人)も、大規模噴火を想定すれば強制移住が必要でしょう。(小規模噴火でも被害が及ぶ桜島のふもとで暮らしているのは、非常に非合理でリスキーだとは私も思います。)

あえて原発をつくることと、普段に生活していることは別もの・・・という話かもしれませんが、「日本の火山全体で1万年に1回程度」の危険性を持ち出すことへの違和感をぬぐえません。

南海トラフ巨大地震 最悪で32万人超が死亡
こんな将来リスクの評価に関する話をしているのは、南海トラフ巨大地震が今後30年以内に発生する確率が、これまで「70%程度」から「70%から80%」に引き上げられた・・・というニュースを目にしたからです。

****南海トラフと根室沖の巨大地震 発生確率80%に引き上げ****
(中略)政府の地震調査委員会は、日本周辺の海底や全国の活断層で想定される地震の発生確率について、毎年、1月1日の時点で計算し公表しています。

このうち、南海トラフで想定されるマグニチュード8から9の巨大地震については、今後30年以内に発生する確率は、これまで「70%程度」でしたが今回の公表で「70%から80%」に引き上げられました。

また、北海道沖の千島海溝沿いの根室沖で想定されるマグニチュード7.8から8.5程度の巨大地震も、今後30年以内の発生確率がこれまでの「70%程度」から「80%程度」に引き上げられました。

マグニチュード8以上の巨大地震の今後30年以内の発生確率は、これまで「70%程度」が最大で、「80%」が示されたのは、今回が初めてです。

地震調査委員会の委員長で東京大学地震研究所の平田直教授は「いずれも非常に高い確率であり、巨大地震が必ず起きることを示している。地震の発生が近づいていることを決して忘れず、備えを進めてほしい」と話していました。

M8の巨大地震で確率80%は初めて
政府の地震調査委員会が公表している今後30年以内の発生確率のうち、最も確率が高いのは、茨城県沖のプレート境界で想定されるマグニチュード6.7から7.2の地震で「90%程度以上」、次いで、三陸沖北部で想定されるマグニチュード7.1から7.6の地震と、北海道の千島海溝沿いの色丹島沖および択捉島沖で想定されるマグニチュード7.5程度の地震で、いずれも「90%程度」などとなっています。

しかし、いずれもマグニチュードが7程度の大地震で、マグニチュード8以上の巨大地震について「80%」の発生確率が示されたのは、今回の南海トラフと根室沖が初めてです。

一方、地震が起きない限り、時間の経過とともに発生確率はさらに上がるため、南海トラフ巨大地震は、今後40年以内で「80%から90%」、今後50年以内で「90%程度もしくはそれ以上」と想定されているほか、根室沖の巨大地震の確率も今後40年以内に「90%程度」、今後50年以内は「90%程度以上」となっています。

このため地震調査委員会は、巨大地震の発生が近づいているとして、住宅の耐震補強や家具の固定などの対策を進めるよう呼びかけています。

南海トラフの巨大地震とは
南海トラフは、静岡県の駿河湾から九州の日向灘にかけての海底で、海側のプレートが陸側のプレートの下に沈み込んでいる領域です。

プレートは年間数センチの速さで沈み込み、その境界には、時間の経過とともに少しずつひずみがたまって、限界に達すると、一気にずれ動いて巨大地震が発生します。

南海トラフでは、およそ100年から200年の間隔で、マグニチュード8クラスの巨大地震が繰り返し発生していて最後に起きたのは、昭和21年に四国など広い範囲に大きな被害をもたらしたマグニチュード8.0の「昭和南海地震」でした。

この地震からおよそ70年が経過していることなどから、政府の地震調査委員会は、これまで今後30年以内の発生確率を「70%程度」としてきましたが、今回、「70%から80%」に見直しました。

国の被害想定によりますと、津波と建物の倒壊、火災などで、最悪の場合、全国でおよそ32万3000人が死亡し、238万棟余りの建物が全壊や焼失するおそれがあるほか、避難者の数は、地震発生から1週間で最大950万人に上るなど影響が長期化するとしています。

また、去年11月からは、気象庁が南海トラフ全域を対象に巨大地震発生の可能性を評価する新たな情報の運用を行っています。【2月9日 NHK】
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南海トラフにおける海溝型地震は、一定の間隔で起こる「周期性」と同時に起こる「連動性」が大きな特徴となっています。

****南海トラフ巨大地震****
南海トラフの地震は、約90 - 150年(中世以前の発生記録では200年以上)の間隔で発生し、東海地震、東南海地震、南海地震の震源域が毎回数時間から数年の期間をおいてあるいは時間を置かずに同時に3つの地震が連動していること(連動型地震)が定説とされてきた。

一方で、慶長地震は南海トラフを震源とすることに異論が出されており、南海トラフの地震は200年程度の間隔で発生すると考えるのが自然な姿であるという見解も存在する。【ウィキペディア】
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最悪で32万人もが死亡するような巨大地震が今後30年以内に発生する確率が「70%から80%」・・・・それって、大変な話じゃないの! 何もしなくていいの? 北朝鮮からのミサイル攻撃などより確度が高く、被害も大きいんじゃないの?・・・というのが率直な印象です。

もちろん、政府も何もしていない訳でもありません。

*****南海トラフ地震対策 予知前提の防災見直し 最終報告書****
中央防災会議の有識者会議は26日、東海地震の予知を前提とした大規模地震対策特別措置法(大震法)に基づく防災対応を見直し、南海トラフ巨大地震の対策強化を求める最終報告書をまとめた。

先月25日に示した報告書案に沿った内容で、国は予知を前提とした防災情報の発信のあり方などを見直す方針。モデル地区(団体)として、国は静岡、高知両県と中部経済界を選び、具体的な防災対策を議論するしていく。
 
最終報告書は大震法の見直しまでは言及しなかったが、現在の科学的知見では「確度の高い地震の予測はできない」とし、予知を前提とした防災対応は改めるべきだと指摘した。
 
その上で、大規模地震発生が懸念される四つのケースを想定。(1)南海トラフ巨大地震の震源域の東側で大規模地震が発生(2)同震源域でマグニチュード(M)7程度の地震が発生(3)東日本大震災前と同様、地震回数が減少するなどの変化を観測(4)東海地震の前兆とされる「プレートのすべり」などを観測--の場合だ。
 
(1)と(2)は、地震が連続して起きる確率が高まっており、住民の事前避難などの検討が必要とした。また、(3)は「大規模地震の発生につながるとは判断できない」として、事前の対策はできないと判断した。
 
一方、(4)はこれまで、大震法に基づき首相が警戒宣言を出し、住民の事前避難や公共交通機関の停止などを行う「東海地震予知」のケースだった。しかし最終報告書では、地震発生の可能性がどの程度高まっているか判断できないと指摘。行政機関は「警戒態勢を取る必要がある」としたが、住民の事前避難などを求めることは難しいとした。
 
最終報告書の提出を受けて菅義偉官房長官は26日、「新たな防災対応の構築を急ぐ」と表明。(1)、(2)、(4)のケースで防災対応を改める。

モデル地区に選ばれた自治体などについては、事前避難の対象となる住民や避難日数、避難場所などを議論する。その結果を踏まえ、自治体が防災対応を個別に定めるためのガイドラインを策定する。

現在は気象庁が「東海地震予知情報」などを発表して警戒を呼びかける態勢だが、南海トラフ全域を対象とした防災情報発信のあり方などを検討する。【2017年9月26日 毎日】
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“現在の科学的知見では「確度の高い地震の予測はできない」”ということで、住民の事前避難などはかなり限られた場合になるようです。

なお、KDDIと海上保安庁による「携帯電話基地局の船上開設に向けた実証実験」とか、資源エネルギー庁と防衛省による自衛隊へのスムーズな石油供給などを図るための合同実働訓練等々、いろいろ動きはあるようです。

人間のリスク管理に関する限界か
ただ、「1万年に1回程度」という話ではなく、「今後30年に70~80%」という大災害予測です。
避難等が可能な事前に確度の高い予兆が必ずあるものなのでしょうか?

もし巨大津波が襲ったらひとたまりもないような海岸沿いの都市・集落は西日本太平洋側に多数存在しているでしょう。それらについて、何か確度が高い予兆が起きたら住民避難を検討する・・・・ということでいいのだろうか?という印象も。

そもそも「南海トラフ地震」という呼称も、(意図的なのか)被害対象が判然としない感も。「東日本大震災を超え、国難ともいえる巨大災害」(中央防災会議の「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」による2012年中間報告)というのであれば「西日本大震災」といった呼称で国民の関心を高める方がいいように思います。

もちろん、独裁国家でもない民主国家日本にあって、確度の高い予兆がない段階で住民生活を変えるような措置はできない、住民生活・経済へどれほどの大影響があると思うのか・・という現実論はわかりますが、はたしてそれがリスクに照らした場合、“合理的判断”なのか?

ただ、こうした巨大地震・火山噴火のリスクを考えていくと、そもそもプレート境界にある日本列島に住むこと自体が“合理的判断”と言えるのか?という話にもなってきます。この“危険な”列島に暮らす日本国民が甘受すべき“運命”でしょうか?

結局は、巨大災害が実際に起きるまでは抜本的対策はとられず、実際被害が起きてから「現代の科学には限界があり・・・・」と弁解するのが人間のリスク管理に関する限界でしょうか。そこに踏み込むのが政治の役割だと思うのですが。

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