孤帆の遠影碧空に尽き

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韓国  止まらない少子化の流れ 「異次元の少子化対策」の日本も同じ轍を踏むのか

2023-02-22 23:23:25 | 人口問題

(【2月22日 東京】)

「異次元の少子化対策」なるものが議論される日本ですが、これまでも取り上げてきたように、日本や中国を含めた東アジア各国が少子化問題を抱えており、とりわけ日本以上に深刻なのが韓国です。

本日、韓国の新たな合計特殊出生率が発表されましたが、「0.78」となかなか驚異的です。今後更に0.70まで低下することも予想されています。(経済予測と異なり、変動要素が少ない人口統計予測はほぼ当たります。)

****22年出生率0.78で最低更新 OECD平均の半分以下=韓国****
韓国統計庁が22日発表した2022年の出生・死亡統計(暫定)によると、昨年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの推定数)は前年より0.03低い0.78で、統計を取り始めた1970年以降で最も低かった。

経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均(1.59人)の半分にも満たない。韓国政府が対策に多額の予算を投じてきたにもかかわらず少子化に歯止めがかからず、昨年の出生数は25万人弱と、20年前の半分に落ち込んだ。

◇出生率 OECDで10年連続最低 
韓国の合計特殊出生率は1974年(3.77)に4を下回り、77年が2.99、84年が1.74と低下。2018年には0.98と、1を切った。19年が0.92、20年が0.84、21年が0.81、昨年が0.78と、過去最低を更新している。

OECD加盟国の中では13年から10年連続して最も低い。20年統計の比較でも、1を下回ったのは韓国だけだった。

韓国の22年の合計特殊出生率を広域自治体別にみると、ソウル市が0.59で最も低く、釜山市が0.72、仁川市が0.75と続いた。最も高かったのは世宗市で1.12。

昨年の合計特殊出生率0.78は、統計庁が昨年発表した将来推計人口上の予測(0.77)に近い。政府は、新型コロナウイルス禍による婚姻件数の減少などに伴い合計特殊出生率が24年には0.70まで落ち込むとみている。

◇出生数は20年前の半分 30年前の3分の1
22年の出生数は前年比4.4%減の24万9000人で、過去最少となった。02年(49万7000人)から20年でほぼ半減し、30年前の1992年(73万1000人)の3分の1に減った。(中略)

◇婚姻件数減少に晩婚化 少子化対策の効果も薄く
政府は少子化対策予算として06年から21年までに約280兆ウォン(約29兆円)を投じた。だが対策は総花的で実感できる効果が薄く、少子化の流れを根本から変えることはできなかったと指摘される。

仕事と育児の両立が難しい環境や私教育費の負担などを理由に、子どもを持つことをためらう人が多い。婚姻件数自体が減っている上、晩婚化も少子化に拍車をかけている。

婚姻件数は21年(19万3000件)に初めて20万件を下回り、22年も1000件減の19万2000件で過去最低を更新した。昨年の離婚件数は9万3000件だった。

女性が第1子を生む年齢は平均33.0歳で、前年から0.3歳上がった。韓国はOECD加盟国の中で最も高く、OECD平均(29.3歳)を3.7歳上回っている。

子どもの数にかかわらず、韓国で女性の出産年齢は平均33.5歳だった。前年より0.2歳高い。35歳以上での出産が全体の35.7%を占めた。(後略)【2月22日 聯合ニュース】
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韓国政府も上記記事にもあるように資金を投じた対策は行っていますが、少子化の流れを止める効果は出ていません。

少子化に拍車をかけているとされる晩婚化も進んでいます。

****晩婚化社会突入の韓国で驚きの調査結果…30代女性の結婚数が初めて“20代越え”、その要因は?****
自民党の麻生太郎副総裁は1月15日、福岡県で開かれた講演会で「少子化の最大の原因は晩婚化」との見方を示した。これが物議を醸し、各方面から多大なバッシングを受けている。

そんななか、お隣・韓国では結婚と関連した興味深い統計調査の結果が明らかになった。

国民からも苦言「育児の責任負うの厳しい」
1月10日、韓国統計庁国家統計ポータル(KOSIS)によると、1990年の統計作成開始以降初めて、30代女性の初婚件数が20代女性の初婚件数を追い越したことがわかった。

2021年の年齢別女性初婚は30代が7万6900件(49.1%)と、およそ半分を占める結果となった。
30代以下では20代が7万1263件(45.5%)、40代が6564件(4.2%)、10代が798件(0.5%)と続いた。

これに伴い、女性の出産年齢も平均32歳に上昇した。出産年齢高齢化の要因には子育ての負担増加など分析されている。

実際、韓国の出生児数は2020年に27万2300人、2021年に26万6000人と歴代最低記録を更新し続けている。出生児数平均である合計出産率を見ても、2021年は0.81人とOECD(経済協力開発機構)加盟国38カ国中最下位だった。

この結果を受け、韓国国内では「最近は結婚が早い人のほうがまれだ」「住宅価格が狂ったように上がっている現在、20代で家を持っている人も少ない。そんな状況で子どもを育てる責任を負うのは厳しい」など、自国が抱える経済状況の悪化が原因と分析する声が多く挙がっていた

確かに晩婚化は出生率を低める一因かもしれない。とはいえ、そもそも経済的な厳しさから結婚に踏み切れない人も多いのではないだろうか。日本でも韓国でも政府にはその部分を理解してほしいものだが…。【1月21日 サーチコリア】
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日本も、少子化・晩婚化は韓国同様であり、また、「異次元の少子化対策」なるものには(1)児童手当など経済支援強化、(2)産後ケアや学童保育への支援、(3)子育て関連分野の働き方改革推進などが盛り込まれるものとみられ、主に子育て世帯への支援を中心とする対策という点で韓国と似たような政策方針です。

ということは、少子化が止まらない韓国の状況を見ると、日本の「異次元の少子化対策」なるものの結果もあまり期待できないようにも思えます。

****なぜ、日本より出生率がはるかに下回る韓国と同じ道をたどるのか。岸田総理の「異次元の少子化対策」を不安視する理由****
岸田文雄首相が「異次元の少子化対策」を行うとの発表に声が集まっている。その中心となるのが子育て世帯へのバラマキ。

当然ないよりマシだが、似たような子育て世帯へのバラマキを行って出生率が上がらない国がある。それが隣国、韓国だ。なぜ隣国の失敗と同じ道を選ぶのか。

子育て世帯へのバラマキで出生率は上がるのか?
岸田首相が今月、「異次元の少子化対策」を行うと発言し、大きな議論を呼んでいます。具体的な内容は今後検討され、6月頃に骨太方針2023にてその全貌が見えてくると思われます。

現時点でわかっているのは、異次元の少子化対策は以下の3つが中心となるのではということです。
① 児童手当などの経済支援
② 学童や病児保育を含めた幼児・保育支援の拡充
③ 育児休業強化などの働き方改革

上記3点からわかるとおり、基本的には子育て世帯支援となっています。筆者の意見としては子育て世帯支援は必要と考えていますが、それにより出生率が上がるのか、というと疑問があります。

そう考える理由は2点あり、まず1点目は出生率低下の原因は未婚・晩婚化が大きな理由と考えているから。2点目はお隣の韓国が所得制限なしの給付など子育て世帯支援を行いながらも出生率が上がっていないことから、効果があまり出ないのではないかと考えています。

事実、日本が目指すような子育て世帯支援をすでに行っている韓国の出生率低下は止まっていません。それどころか、2021年の韓国の出生率は0.81となっており、日本を遙かに下回る状況となっています。

2013年から0〜5歳までの保育料は所得に関係なく無償
では、韓国の少子化対策として行われている政策を見てみましょう。まず保育料ですが、2013年3月から所得に関係なく0〜5歳までの保育料は無償となっています。さらに保育園に預けない家庭に対しても補助金を支給しています。(※2022「一般社団法人 平和政策研究所」調べ)

この保育料無償化の意外な結果として、各家庭の教育費支出は倍増しました。理由は、浮いたお金は結局習い事などに回り、家庭の教育費は負担減どころか負担増となったのです。

これは少し考えればシンプルなことです。教育が生み出す人的資本の上乗せとは相対的なものです。周りより優れているから良い大学に入り、より多くの所得を得ることになります。子供は放っておいても育つのは事実ですが、放っておいても多くの所得を稼げるようになるわけではありません。

教育熱心な都市部の人は、自身の経験からそれを理解しているからこそ、子供に対する教育費をたくさん使うのです。つまり所得制限を撤廃し、どの家庭にも給付が行われたとしても多くの家庭がその浮いた資金を教育に使う限り、終わりがありません。

事実、東京の出生率は全国平均より低く、韓国もソウルの出生率は全国平均より低い状態となっています。都市部の場合、浮いたお金は2人目の子供のためではなく、1人目の子供の教育費になる可能性が高いと思われます。

子育て世帯へのバラマキは他にもある
韓国の少子化対策は保育料無償のみではなく、他にも多く実施されています。8歳未満の子供がいる場合に支給される児童手当10万ウォン(日本円で約1万円)に加えて、さらに0〜1歳の期間には乳児手当(2023年から親給与という名称に変更)が支給されます。

導入初年の2022年は月30万ウォンからスタートし、2023年度は月70万ウォン、2024年度は計画通りいけば、月100万ウォンの支給となります。満1歳児は半額支給される予定となっており、親給与は現金支給となっています。

さらに出産時に200万ウォンを支給する制度も2022年に導入され、さらに医療費などに使用できるデビッドカード「国民幸福カード」の限度額も100万ウォンに引き上げ、合計すると300万ウォンの給付となります。

これらの給付額を見れば十分に感じそうなものですが、何度も言うとおり教育費とは相対的に増えていくものです。国が給付をしても使える人は周りより良い教育を与えようとします。

教育から得られるリターンとは不確実ですので、子供の幸せを望む親としてはできる限りの教育を与えてあげたいと思うものでしょう。英語を話せないより話せる方がいいと思うのであれば、お金があれば習わせたいと思うのは普通のことです。

絶対的な満足のいく教育水準など存在しません。大切なことは周りより良い教育を与えることです。だからこそ、どれだけ所得の高い人であっても教育費で大変と言うのです。

子供を望めない所得層を置き去りにする政府
さらに深掘りすると、子育て世帯支援は誰をターゲットにしているのか、という点です。かつて、階級闘争といえば「労働者と資本」でしたが、現在は「都市部エリート層と低所得労働者」の構造もできつつあります。

都市部のハイスペック夫婦は子育て支援の所得制限をなくすことを望んでいますが、一方で子供を産めること自体、贅沢と感じる人たちもいます。格差が広がると対極にいる人が増えるため、見ている世界が異なっていきます。そして、国はどちらをサポートしたいと思っているのかということです。

本当は子供を産みたいと望んでいたが、所得の問題で子供や結婚を諦めた人を想像してみてください。その人からすれば、子供を産める環境にいる人を優遇し、その財源として自分の税金や保険料の一部を利用されるかもしれないということです。これは納得できることなのでしょうか?

住宅ローン控除も同様で、家を買える人間を優遇し、家を買えない人間には何も優遇する制度がないということを気持ちよく思わない人が少なくないということです。

日本は韓国同様、婚外子が少ない社会です。つまり、未婚率を上げない限り出生率は上がらないという指摘は多くの識者がしています。

とはいえ、結婚するかどうかは個人の自由であるという意見がありますので、それよりは万人受けする子育て世帯支援を選ぶ政府の気持ちもわからなくはありません。

異次元の少子化対策をするのはいいですが、韓国のようにならないことを願うばかりです。【2月19日 集英社オンライン】
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仕事と育児の両立が難しい環境、教育費の負担(単に絶対額だけの話ではなく、上記記事のように、とにかく周囲より良い教育を受けさせたいという行動パターン)を改善変更するというのは、「異次元」以上の突っ込んだ「改革」が必要でしょう。そこにメスが入らない限り、いくら子育て支援でバラまいても限界があるということにも。

上記記事でも指定されているように、日本と韓国は出産に関して世界の他の国々と比較したとき「婚外子が少ない」という際立った特徴があります。

「出産=婚姻カップルが行う」というのは、日本の常識ではあっても、世界的には必ずしも常識ではないようになりつつあります。

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日本においては皆婚慣習がなお根強く、婚外子への風当たりも厳しい。このため、非正規労働者など若い貧困層が増えていても、米国とは異なり、結婚する余裕のない者は、男女のカップル形成に至らない、あるいはカップルを形成しても出産しないため、婚外子は少ないままなのだといえる。

もっとも、日本で、皆婚慣習が根強く、婚外子が少ない理由としては、他のアジア諸国と同様に古い家族形態が存続しているためというより、戦後、新しい自由な結婚制度が世界に先駆けて成立したからという見方も成り立つ。

日本国憲法は第24条1項で「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」としている。「合意のみ」とは、年齢や健康上の理由、親や親族の意見・強制、あるいは宗教、教会や地域の慣習による制約などは法律上は認めないという意味であり、そうした制約を前提とした一切の法令上の規定は憲法違反となる。

例えば、フランスのような結婚前の血液検査の義務付けなどはもってのほかだ。(中略)
こうして、日本では、役所への届出だけで婚姻が成立し、離婚も協議離婚が容易に認められるという世界でも最も簡便で自由な結婚制度が生まれた。

こうして、事実婚を選択する大きな理由が日本では欠落することになったことが、極端に低い婚外子比率にむすびついている側面もあろう。

そうした意味では、戦前の家制度等による伝統的結婚制度への反動が強かったため成立した世界で最も自由な結婚制度が、現代では、世界で最も遅れているかに見える極端に低い婚外子比率を生んでいることになろう。すなわち、日本は遅れているのではなく、進みすぎていて、未婚のカップルと婚外子が少なくなっているとも言えるのである。【「社会実情データ図録」】
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上記の「世界で最も自由な結婚制度によって日本では事実婚を選択する大きな理由がなく、その結果、極端に低い婚外子比率を生んでいる」という見方は、なんだか誤魔化されたような詭弁にも聞こえます。ごく常識的に、「日本においては皆婚慣習がなお根強く、婚外子への風当たりも厳しいため極端に低い婚外子比率を生んでいる」という方が実態に近いように思えます。

韓国では「非婚主義」も。
文化体育観光省が昨年12月に発表した世論調査では「結婚は必ずしなければならない」と考える人の割合は17・6%で、1996年の36・7%に比べて大きく減少しています。

結婚自体への価値観が大きく変わりつつあるなかで、出生数を増加させようとすれば、シングルマザーや事実婚カップルの出産・子育て支援という方面にも力を注ぐ必要があるのではないでしょうか。

今の日本の政治では「社会が変わってしまう」ということで忌避されそうですが、積極的に社会を変えるような取り組みでなければ、少子化の流れは止まらないようにも。
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