孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

貧困に苦しむサブサハラ サハラ砂漠に「緑の壁」

2010-06-26 13:11:22 | 世相

(“flickr”より By NPJB http://www.flickr.com/photos/npjb/2296043606/)

【依然厳しいサブサハラ各国の状況】
世界の貧困は、総じて言えば、急速に改善しつつあるということのようです。
****国連報告書:「貧困半減」は達成可能*****
国連は23日、貧困人口半減など8項目の目標を設定したミレニアム開発目標(00年採択)に関する報告書を発表した。2015年の期限までに貧困の半減は達成可能だが、金融危機後の不況で改善の速度は鈍り、職に就きながら貧困に苦しむ「ワーキングプア」は増加した。
国連の潘基文(バンキムン)事務総長は報告書で「目標の達成は万人の務めだ」と指摘し、各国にさらなる努力を訴えた。9月の国連総会で、残り5年間の取り組み方針を確認する見通しだ。

報告書によると、1日1.25ドル未満(00年時は1ドル未満に設定)で暮らす「貧困人口」の数は、18億人(90年)から14億人(05年)に減少し、総人口に対する割合も46%から27%に。15年には推定15%、人口で9億2000万人に減る。中国やインドで貧困層が解消されつつあるためで、アフリカのサハラ砂漠以南(サブサハラ)の各国は依然、厳しい状況にある。
08年発生の金融危機後、職がありながらも1日1.25ドル未満で暮らすワーキングプアの割合は発展途上国で26%(08年)から31%(09年)に増加するとみられる。やはり途上国で飢餓に苦しむ人も、経済危機と食料価格高騰のため、総数は1300万人増の8億3000万人となった。
初等教育への就学率は発展途上国全体で89%(08年)に改善したが、サブサハラは76%と低率。男女間の教育機会均等でもサブサハラや南アジアでは格差が依然残っている。【6月24日 毎日】
*****************************

大規模な戦乱がなく、経済活動が活発化すれば、所得水準は向上していくものと思われます。
中国で起きている外資系企業を狙い撃ちにした労働争議による賃金上などは、一例でもあるのでしょう。
もちろん、所得水準向上の過程で、“格差”という厄介な問題も生まれますので、あまり楽観的になるのも禁物ですが。
地域的にみると、上記記事にあるようにアフリカのサハラ砂漠以南(サブサハラ)が依然として厳しい状況にあります。

【サハラ砂漠は拡大? 緑化?】
サブサハラ、特にサハラ砂漠南縁のサヘル地域の現状及び今後を左右するのが“サハラ砂漠”の存在です。
常識的には、世界で進行している砂漠化のなかで、サハラ砂漠も周辺地域を砂に飲み込みながら拡大していると思われています。そして、そのことが周辺地域の農耕・牧畜に打撃を与え、貧困を生みだしているとも。

例えば、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、サハラ砂漠周辺に位置するアフリカ中部・西部では、気候変動の影響により大多数の国で降水量が激減していると言われています。作物は枯れ果て、土壌侵食が進み、各地の農業は甚大な被害を受けており、砂漠化が今後も続くと、アフリカの農地の3分の2が2025年までにサハラの砂に飲み込まれる可能性があると国連では予測しています。

ただ、広範囲・長期間にわたる観測を必要とする気象現象には、いつも異論が存在します。
サハラ南縁部についても、地球温暖化による気候変動によって再び植生が変化しつつあり、緑化の兆候もあるという報告もあるようです。

****サハラ砂漠、気候変動で緑化が進行か****
地球温暖化はアフリカ大陸に砂漠化、干ばつ、そして絶望をもたらすといわれているが、実際の筋書きは大きく異なるのかもしれない。気温上昇によって、同大陸の最も乾燥した地域に住む人々の暮らしが豊かになるという研究結果が出たのだ。
サハラ砂漠とその周辺地域は現在、降雨量の増加で緑化していることが確認されている。これが一時的な傾向でなければ、干ばつで苦しめられてきた地域に農村が復活することも考えられる。
サハラ砂漠は約1万2000年前にも緑豊かなサバンナに変化したことがあるが、研究モデルではそのときの気候が再来し、砂漠が減少するという予測が立てられている。
衛星画像によって、サハラ砂漠南縁部を3860キロにわたって東西に広がるサヘルという半乾燥地域に、緑化の兆しが見られることが確認された。
「Biogeosciences」誌に掲載された新しい研究論文によると、1982年から2002年に撮影された画像から、サヘル全域で緑化が進んでいることが確認できるという。また、チャド中央部やスーダン西部などでも植生が非常に豊かになっている。

ドイツにあるマックス・プランク気象研究所のマルティン・クラウセン氏は、「気温が上がれば大気の保水性も上がり、結果として雨が多くなる。取りざたされている変化は、結局はそういうことなのではないか。主な要因は大気の保水力ということだ」と第三者の立場でコメントしている。 (中略)

しかし、気候変動が今後サヘルにどのような影響を与えるかについては、すべての気象学者の意見が一致しているわけではない。一部では降雨量が減少するという研究結果も出ているのである。ハーズマ氏も、「まだ確かなことが言える段階ではない」と認めている。
前出のマックス・プランク気象研究所のクラウセン氏は次のように解説する。「北アフリカはとにかく気候変動の予測が難しい。面積が広大な上、モンスーン雨を引き起こす高高度の風も予測が困難だからだ。発表された気候モデルの半分は湿潤化を示しているが、半分は乾燥化を示している」。【09年8月3日 National Geographic News】
********************************

サハラの砂漠化は進行・拡大しているのか?それとも湿潤化・緑化が進行しているのか?
“一体どっちなんだよ!”と言いたくもなります。
ただ、気象的に緑化傾向が進行しているとしても、人間の側の要因もあります。サハラ地域を含めアフリカでは人口爆発が続いています。食料増産・生活のため、焼畑農業・過放牧・灌木の過度の伐採が行なわれ、結果的に状況が改善しないということも考えられます。

【数世代にわたる息の長い仕事】
砂漠化が進行しているという立場にたてば、その進行を食い止めることが急務となります。
そうした試みのひとつが、「緑の壁」あるいは「緑の長城」と呼ばれる壮大な計画です。

****砂漠化防ぐアフリカの「緑の壁」計画に、100億円超の支援*****
地球環境ファシリティー(GEF)は17日、チャドの首都ヌジャメナでアフリカの砂漠化を食い止めるための「緑の壁プロジェクト(Great Green Wall)」に関する初の首脳会議を開き、計1億1900万ドル(約108億円)を支援すると発表した。
プロジェクトは、西はセネガルから東はジブチまで7100キロ以上に渡って樹を植え、平均して幅15キロほどの森林を作っていくというもので、07年にアフリカ連合(AU)により採択された。砂漠化防止のほかにも、土壌の劣化を防ぎ、サハラ砂漠南縁のサヘル地域の貧困を解消するといった目的もあるという。

会議には、プロジェクトに参加するブルキナファソ、チャド、ジブチ、エリトリア、エチオピア、マリ、モーリタニア、ニジェール、ナイジェリア、セネガル、スーダンの11か国の首脳が出席した。(中略)
地球環境ファシリティーは、今回発表した支援額を、11か国に相応に配分するとした。同組織は地球規模の環境問題に取り組む国際的資金メカニズムで、182か国の政府のほか、国際機関、NGO、民間企業なども参加している。【6月19日 AFP】
**********************************

「緑の壁」の予定全長7100キロのうち、現在までに植林が進んでいるのはセネガル国内だけというのが現状です。
アブドゥラエ・ワッド大統領のもと孤軍奮闘するセネガルの状況、砂漠化進行の問題については、08年11月4日ブログ「砂漠化防止対策  “数百年後”のセネガルの「緑の壁」完成を待つだけではなく・・・」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20081104)でも取り上げたことがあります。
セネガルでは2005年からゴムの木とナツメヤシを植林していますが、そのセネガルの取り組みも“今後数世代にわたる息の長い仕事”という状況です。

“当面は資金面での課題が残るが、今後少なくとも25年間、毎年2万5000ヘクタールを植林していく必要があるという。ゴムの木が成長すると、新たな収入源が生まれるとの期待もあるが、関係当局者は「辛抱が肝心だ」と言う。「543キロにもおよぶ植林は、数世代後にようやく完了するという息の長い仕事なのです」”【08年11月3日 AFP】

【先進国支援】
壮大な「緑の壁」は砂漠拡大・農地の浸食を食い止めるだけでなく、雇用創出の経済効果も、また、大気中の二酸化炭素を吸収する温暖化防止効果も期待できます。

25日、カナダ・ムスコカで開幕した主要8カ国首脳会議(G8サミット)において、途上国の開発支援については、アフリカ、中南米9カ国を交えて議論し、母子保健対策の強化で妊産婦や乳幼児の死亡率低下を図るため、先進各国が総額73億ドル(約6500億円)を拠出する「ムスコカ・イニシアチブ」の採択を決めています。菅首相も今後5年間で5億ドルの新たな支援を実施する方針を表明したとか。

「植林だけでは、サハラ砂漠の拡大を食い止めることはできないだろう」という見方もあるようですが、「それでも、時にはそういった壮大な話が、問題に関心を引きつける上で必要な場合もある」とも。
アフリカの「緑の壁」事業を先進国が資金的・技術的に支援していくというのもひとつの方向かと思われます。


コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 香港  中国政府と民主派最... | トップ | 中国社会の「拝金主義」  ... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (bossbb)
2010-07-13 14:23:05
すごいです!!(^-^)

コメントを投稿

世相」カテゴリの最新記事